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2012_J2_第11節・・今日も、二試合をハシゴ観戦しました・・(2012年4月30日、月曜日)

「アンタは、前に(観戦に)来たときも同じ質問しなかったか?」

 オジー・アルディレスとは、以前のヴェルディ時代から、記者会見で色々とやりあった。もちろん、創造的&想像的なディベート。だから、彼も私のことを覚えているらしい。いや、ホント、彼がヴェルディを率いていたときの記者会見では、血わき肉おどったモノでした・・あははっ・・

 「いや・・前回はサッカーの美しさについて質問したんですよ・・覚えてるでしょ?」

 「あっ・・そうか・・」

 今日は、横浜FCvs町田ゼルビア、ヴェルディvsモンテディオ(山形)の二試合をハシゴ観戦しました。

 移動は、もちろん愛車のオートバイ。でも、道路がとても込んでいたから疲れた。何せ、普段ドライブしていない方々が多かったことで(!?)、後ろも見ずに車線変更したり、フラフラと不安定に走ったり、曲がるときに「膨らんだり」・・フ〜〜・・

 あっと、蛇足・・。ということで、ポイントだけ簡単にまとめます。冒頭の「会話」については、最後に触れますので・・

 まず横浜FCと町田ゼルビアの試合だけれど、まあ、総合力では同格とするのがフェアな評価だろうね。志向する組織サッカーも、とても似通っているしね。

 でも、ゴールという視点じゃ、今日のゼルビアの方がツキに恵まれた。

 前半33分。一発のカウンターから、ゼルビアの平本一樹が左サイドを抜け出した。そして彼は、グラウンダークロスを折り返し、最後は、鈴木崇文の左足が炸裂した・・っちゅう次第。

 また、その11分後には、これまたカウンターの「流れ」から、最後は平本一樹がドリブルで抜け出し、ズドンッ!と決めた。見事な「個」の最終勝負だった。

 二つとも、相手ディフェンスが組織を整える余裕がなかったという意味合いで、カウンターの流れとするのが正解でしょ。でも実は、そのゴールが入る前には、横浜FCも、カウンターからチャンスを作り出していた。とても惜しいシーン。またギリギリのミドルシュートもあった。

 要は、前半は、どちらにゴールが入ってもおかしくないという互角の展開だったということが言いたかった。でもサッカーの神様はゼルビアに微笑んだ。

 ということで、後半の展開(ゲームの構図)は推して知るべし。

 失うモノがなくなった横浜FCが、フッ切れたダイナミック攻撃をブチかまし、対する町田ゼルビアは、しぶとく守ってカウンターを仕掛けていく・・

 ゼルビアは、エースの勝又慶典を投入し(ベンチスタートだったのは多分ケガ!?)チーム全体のカウンターへの意識をアップさせる。こりゃ面白いコトになってきた・・

 でも、そんなゲーム展開のなかで、ゼルビアの方が先に追加ゴールを奪っちゃうんですよ。「あのゴールシーンでは、6から7本のパスが回された・・とても素晴らしいゴールだった」と、オジー・アルディレス監督もご満悦だった。

 その後、たしかに横浜FCも意地で2ゴールを奪ったけれど、結局は、4点目まで叩き込んだ町田ゼルビアが勝利を収めた。点差ほどの圧勝ではなく、神様のイタズラ的な要素の方が強かったというゲーム。まあ、サッカーでよくある勝負の展開だった。

 とにかく、繰り返すけれど(2週間前のベルマーレとのアウェー戦でも言及したように)、横浜FCが良くなっていることは確かな事実だよね。

 特に中盤での組織ディフェンス(その機能の連動性)がアップしている。何といっても、サッカーゲームの心臓は、中盤ディフェンスにあり・・だからね。「そこ」から、全てがスタートするといっても過言じゃない。

 1990年代から、日本代表チーム中盤ディフェンスのリーダーとして長く君臨した山口素弘だから言う訳じゃないけれど、とにかく「そのツボ」はしっかりと押さえられていると思うよ。だからこそ、彼らの「これから」への期待が高まるっちゅうモンだ。

 さて・・ということで、冒頭の、オジーとの会話。私の質問は・・

 「オジーさんが志向するサッカーのキーワードは、何といっても、パス回しですよね・・まあ、ボールの動き・・その最終的な目的はシュートだけれど、そこに至るまでの当面の目標イメージは、どういったモノでしょうか?」

 「そうか・・前回とは質問が違ったのか・・あははっ・・」

 機嫌良く、そんなジョークを飛ばしながら、オジーが、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけ。

 「バルセロナは、誰が見ても良いサッカーだろ・・また、1970年代のブラジル代表やアヤックスも素晴らしかった・・まあ、彼ら以外にも、素晴らしいサッカーを展開したチームはあったけれど、とにかく我々が志向しているのは、良いサッカーをするということなんだ・・そこでのキーワードは、何といっても、常にボールを大事に扱うということだ・・自分たちがボールを保持していれば、相手に危険な状態を作らせないし、それをつづけられれば、大きな自信にもなるからな・・」

 わたしの具体的な質問には応えず、例によって、自分が言いたいことだけをコメントしたオジー。懐かしい・・あははっ・・

 とにかく、このテーマ(人とボールの想像的&創造的な動き!?)については、これからもオジーと会話していこう・・彼が拒否しなければネ・・あははっ・・

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 さて、次はヴェルディvsモンテディオ・・

 ものすごく興味深い「グラウンド上の現象」があった。

 一つは、2-0という(彼らがイメージした通りの!?)完璧な勝利を収めたモンテディオ山形が展開した、諦めをしらない、最高レベルの粘りを魅せつづける忠実サッカー・・

 彼らの「粘り」ディフェンスは、ホントに素晴らしいの一言だった。とにかく、ヴェルディに、決定的スペースを攻略された(決定的ピンチ)シーンでも、どこからともなく出現したモンテディオ選手が、身体を投げ出して足先でシュートを止めちゃったりするんだよ。

 彼らは、一人の例外もなく、攻守にわたるハードワークを常に「探し」つづけている。そう、究極の「意志のサッカー」。わたしは感動さえ覚えていた。

 試合後、奥野僚右監督が、こんなニュアンスの内容をコメントしていた。曰く・・

 ・・ウチも、劣勢の中でも、こういう勝ち方ができるまで進化している・・ヴェルディの強さをはね返したこの勝利は、自信につながる・・攻められながらも、最後のところで身体を張ってピンチをしのいだ・・まさに全員守備、全員攻撃という我々のコンセプトを体現できた・・選手たちも、『感じるチカラ』を発展させている・・繰り返しになるが、この勝利は、自信になる・・

 とても真面目な雰囲気を放散する奥野さん。様々なキーワードが散りばめられていたけれど、その中でも「感じるチカラ」っちゅう表現は、秀逸だった。攻守にわたる、イメージの連鎖を感じるチカラ・・。フムフム・・シンパシーが湧くね。

 そんなモンテディオに対し、川勝良一率いるヴェルディも、ダイナミックな(豊富な)走りの量と質をベースに、素晴らしい組織サッカーを展開した。

 組織コンビネーションに、「ココゾの個人勝負」を効果的にミックスしていけるからこそ、素晴らしい組織サッカー・・なのです。

 そんなヴェルディは、前述したように、何度も、モンテディオ守備ブロックのウラを突いて(決定的スペースを攻略して)チャンスを作り出した。でも、最後のところで、常に・・ホントにいつも・・モンテディオ選手の「足」が伸びてくる。

 ホント、そんなイメージだった。とにかく、モンテディオ選手たちが魅せつづけた「粘りのハードワーク」は、ホントにレベルを超えていたんですよ。

 そして、たまに繰り出すカウンターから(忠実なサポートの動きがあるからこそ!!)チャンスを作り出しちゃう。

 カウンターというグラウンド上の現象については、例によって(!?)川勝良一と定義や理解のズレがあったようだけれど、とにかく、私にとっては、守備組織が整っていない状況で攻め込まれる・・という状態がカウンターを喰らう状況なのです。

 相手の素早い「タテへの突っかけの流れ」に対し、守備ブロック全体が「戻りながら」対処している状態・・また、人数バランスとポジショニングバランスが完璧に整っていない状態。私は、それを、相手の効果的カウンターを喰らっている状態だと理解する。

 まあ、とはいっても、例えば、戻りながらでも、決定的なスペースをイメージし、そこへ相手のカウンターの流れを「誘導」する・・なんていう意図がうまく機能すれば、効果的なカウンターを喰らうという状態ではないんだよな〜〜・・

 フムフム・・難しいネ・・

 とにかく、モンテディオが、セットプレーからだけじゃなく(前半41分のCK・・モンテディオの萬代宏樹がスリップヘッドで、ヴェルディゴールへ流し込んだ!)、数少ない「カウンターチャンス」の一つをモノにしちゃったんだよ。また、そのゴール以外にも、少なくとも二つ、とても危険なカウンターを仕掛けていったシーンもあったっけ。

 ということで、粘りの守備をベースに作り出したワンチャンスを「忠実に」ゴールに結びつけたモンテディオが、見事な勝利をつかみ取った・・という表現はいかが?

 でもサ、あれほどの素晴らしいサッカーを展開したヴェルディが勝てなかったことには、タラレバになるけれど、残念という印象も残るよね。もちろん「それ」もサッカーだし、モンテディオにしてみれば、まさに「必然の勝利」だったわけだから・・

 最後に、フェアな競争環境の整備・・というテーマ。特に、ヴェルディ・・

 以前、ヴェルディの若きキャプテン、小林祐希をとても高く評価した。でも、1週間前のベルマーレ戦では、パフォーマンスが地に落ちていた。

 その後、ヴェルディの川勝良一監督は、次のアビスパ戦(アウェー)と、この試合で、小林祐希を先発から外した。そしてチームは、二試合つづけて素晴らしいサッカーを展開した(川勝良一監督の弁)。

 わたしはアビスパ戦は観てないけれど、川勝良一監督は、その内容は、今日のゲームに輪を掛けて良かった・・と言っていた。

 アビスパ戦では出番がなかった小林祐希だったけれど、このモンテディオ戦では、最後の15分間だけチャンスを与えられた。そして、攻守にわたって走りまくり、闘いつづけた。そうそう、才能に恵まれているからこそ、進んでハードワークを探す姿勢こそが(=意志のサッカーを展開することこそが!)、本物の(世界にリンクする!)ブレイクスルーにつながるんだよ。フムフム・・

 川勝良一というストロングハンドに率いられたヴェルディ。様々な意味合いで、とても期待できる闘うグルーブになりつつあると感じる。楽しみじゃありませんか・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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