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2012_ACL・・ランコ・ポポヴィッチは、ホントに良い仕事をしている・・(FC東京vs北京国安、 3-0)・・(2012年4月17日、火曜日)

先ほど帰宅。もう夜中だからね、短く、簡単にまとめよう。

 FC東京だけれど、ランコ・ポポヴィッチが胸を張るように、ホントに素晴らしいプレーで北京国安を圧倒した。そう、胸がすくほど素晴らしい組織サッカー・・

 とはいっても、個人的なチカラでは、北京だって優るとも劣らない。そのことは、グラウンド上の選手が一番よく「感じて」いる。だから(局面勝負では、やれるゾ!と自信をもっている!?)北京国安は、とにかく積極的に攻め上がってきた(リードされてからは、その勢いは加速しつづけた!)。

 でも、その攻撃プロセスは、やっぱり、局面での「個の勝負のブツ切りサッカー」という傾向は否めなかったね。要は、彼らの攻めでは、選手個々の勝負イメージが重なり合う(シンクロする)ような組織コンビネーションは希だったのですよ。

 たしかにパスは出すよ。でもパス&ムーブは、確実に決定的なカタチへ持ち込めると確信した時にだけ繰り出す。それ以外は、単に「ボールの位置」を移動させるだけっちゅう感じなんだよ。

 何たって、FC東京のセンターバックコンビは、(抜群のスピードで発展している!?)チャン・ヒョンスと森重真人という強力コンビだからね。それに、長谷川アーリアと米本拓司で組む素晴らしい守備的ハーフコンビだけじゃなく、両サイドバック、そして両サイドハーフも含めて、まさに「有機的」に、そして効果的に絡みつづけるんだよ。そりゃ、強いわ。

 そんな強力な守備ブロックが相手だからね、いくら北京国安が、局面での個人勝負を(部分的には!?)有利に展開できるからといって、それでFC東京の守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを攻略できるというもんじゃないよね。

 実際、北京国安の攻めで、決定的なチャンスを作り出せそうなシーンは、ほんの数回ってなところだったからね。

 でも北京国安は、諦めずに攻め上がりつづけた。・・局面勝負じゃ負けていない・・おれ達は、東京に追い付いて、ヤツらを粉砕してやるぞっ!!・・ってな感じ・・

 そんな展開だから、FC東京が、カウンターチャンスを素晴らしいカタチで成就させられたのも道理だった。彼らの(セットプレーからの先制ゴール以外の!)ゴールシーンは、すべてカウンターからだったのですよ。

 でも、もっとも見事なカウンターからのチャンスメイクは、実はゴールにならなかったシーンだったね。そのとき、鳥肌が立った。

 ・・前半36分・・オーバーラップした左サイドバックの太田宏介へ、アーリアからパスが供給される・・それを見事なトラップ&ドリブルで持ち込み、ニアポストゾーンへ鋭いクロスを送り込む太田宏介・・そして、斜めに飛び込んできた渡邉千真が、ダイビングヘッド一閃!・・そのとき誰もがゴールを確信した・・それほど素晴らしい、カウンターからのチャンスメイクだった・・でも、渡邉千真が放ったヘディングシュートは、ほんのわずかに左へ逸れてしまって・・フ〜〜・・

 もちろんカウンターだけじゃなく、FC東京が繰り出した「組み立て」からの攻撃も、とても素晴らしかったよ。

 人とボールが、まさにスムーズに、素早く広く「動き」つづけ、北京国アンディフェンスを翻弄した。でも、そこは、中国スーパーリーグを代表するディフェンスラインだからね。FC東京も、そう簡単には決定的なウラスペースを攻略するところまで行けない。

 言いたかったことは、このゲームでFC東京が作り出した『決定的な』チャンスのほとんどは、カウンターからだったということです。

 その現象は、数日前に味スタで行われた「J」アントラーズ戦の、まさに「デジャヴ」・・。もちろん、この試合では、FC東京がカウンターを決めたわけだけれどネ。

 その「Jリーグマッチ」のレポートについては「このコラム」を参照していただきたいのですが、もしかしたらランコ・ポポヴィッチは、(悔しい惜敗になった!)そのアントラーズ戦のエッセンスを、この北京国安戦に活用したのかもしれないね。

 何せ、米本拓司とアーリア(長谷川)の二人は、とても注意深く「次の」ディフェンスに備えていたし、両サイドバックを押し上げさせる(前へ送り出す!)ような「バランサー」の役割も存分にこなしていたからね。たぶんこの二人は、そんな役回りを意識してプレーしていたと思うわけです。

 もちろん、前戦の(とても良くなっている!)大竹洋平や田邉草民、はたまた石川直宏も、状況に応じてしっかりと守備に戻ることで、米本拓司やアーリアと「タテのポジションチェンジ」をするシーンもあったよ。

 でも基本的には、この守備的ハーフのコンビは、周りの味方のダイナミズムをサポートする役割に徹するシーンの方が多かったと思うのですよ。

 それって、やっぱり、ランコ・ポポヴィッチによる、ゲーム戦術的な「イメージ作り」だった!? どうなんだろうね、ランコ・・

 とにかく、梶山陽平、高橋秀人、羽生直剛、谷澤達也、ルーカスといった主力を温存するなかで(まあ、ケガや出場停止もあったんだろうけれど・・)、こんな立派なサッカーを魅せ、結果も残したのだから、まあ、大成功。

 これで、チーム内の健全な競争環境も、より想像的&創造的に活性化することでしょう。

 ランコ・ポポヴィッチは、ホントに良い仕事をしていると思いますよ。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

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