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2011_J_XEROX・・今シーズンも、この2チームを中心にリーグが動くことになりそうな感じ・・(AvsGR, 1-1, PKでGR勝利)・・(2011年2月26日、土曜日)

さて・・。まあ、まずゲームの「実質的な内容」から入りましょうかね。

 内容的には、完璧に、アントラーズに一日の長があった・・守備においても、攻撃についても・・というのが、わたしの見立てです。

 この評価について異論を唱える方は多くないはず。たしかにグランパスは、セットプレーから、例によって、「トゥーリオのレベルを超えたアタマ」を活用したチャンスを何本か作り出した。また流れのなかからも、惜しい中距離シュートを放つようなチャンスらしいカタチも作り出した。

 でも、全体的な(流れのなかから作り出した)確率の高いチャンスの「量と質」という視点では、完全にアントラーズに軍配が上がる。要は、アントラーズの方が、しっかりと(グランパス守備ブロックの裏に広がる)決定的スペースを活用できていたということです。

 ・・右サイドの野沢拓也が(新井場徹のサポートを受けながら)ドリブルで突っ掛けていく・・その仕掛けアクションに、グランパス守備の意識と視線が釘付け(タメの演出)・・そして次の瞬間、逆サイドで全くフリーになっていた大迫勇也に、切れ味鋭いサイドチェンジ(ラスト)パスが飛ぶ・・

 ・・また次のシーンでは、相手を引きつけた(タメを演出した)野沢拓也が、ヴァイタルエリアでフリーになっていた大迫勇也に「置くような」優しいパスが回す・・そこから大迫勇也が、爆発的な勝負ドリブルで決定的シュートまで持ち込んでいく・・などなど・・

 アントラーズは、そんな、グランパス守備ブロックを「振り回してしまう」ような仕掛けプロセスを何度も繰り出していった。

 それに対してグランパスの攻撃。たしかに、玉田圭司、小川佳純、藤本淳吾、金崎夢生といった才気あふれるミッドフィールダー連中は、組織プレーでも個人勝負プレーでも、とても魅力的な仕掛けプレーを魅せてはいた。

 とはいっても「それ」が、アントラーズ守備ブロックの「コントロール・イメージ」の範囲内だったの「も」確かなことだった。

 決定的スペースへ抜け出そうとする相手パスレシーバーを(動きを読むことで!)確実にマークしたり、相手が仕掛ける突破ドリブルシーンでも素早くカバーリング網を築いてしまったり。アントラーズ守備は、とても優れた機能性を発揮していた。だからグランパスも、決定的スペースでフリーになるようなパスレシーバーが出てくるシーンや、誰かが、決定的スペースを突破ドリブルで攻略してしまうようなシーンを作り出すことは叶わなかった。

 ところで、グランパス中盤に欠かせないスーパー・センターハーフ(中盤の底・・ボランチ&バランサー・・ゲームメイカーといったマルチタスクを高質にこなす!)ダニルソン。ピクシーも認めているように、やはり彼の「穴」は、とても大きかった。

 このゲームでは、中村直志をアンカーに、才能ある中盤カルテット(四人組)を配置したけれど(前述したように)うまく機能しなかった。たぶん彼らは、自分たちの背後に、「ダニルソン」という後ろ盾がいなかったことで不安になり、ちょっと下がり気味にプレーし過ぎたということだったのかもしれないね。

 それでも(ピクシーが認めていたように)中盤のディフェンス機能は不安定だった。だから途中から、金崎夢生に代えて吉村圭司を投入した。まあ、アレックスも投入されたけれど、守備でのダイナミズム(要は、ボールを奪い返しにいく積極アクションを繰り返すことで、次の攻撃の力強さをアップさせていくというメカニズムの基盤エネルギー!)を高揚させるにはほど遠かったね。

 ところで、オズワルド・オリヴェイラ監督。彼に、こんな質問を投げかけてみた。

 「カルロンですが・・多分マルキーニョスの代替をイメージしているとは思うのですが・・彼とマルキーニョスでは、まったくタイプが違いますよね・・彼のチームへのインテグレーション(組み込み)の構想は、どういったものなのでしょうか・・?」

 ちょっと考えたオズワルド・オリヴェイラ監督が、こんなニュアンスのコメントをくれた。

 ・・そこには、相手に応じて「攻撃のやり方」を柔軟に変化させるというオプションが増えたという発想もある・・たしかにマルキーニョスは一時代を築いた素晴らしいサッカー選手だった・・でもいまは、新しいチームを作る段階にある・・

 またオズワルド・オリヴェイラ監督は、こんなニュアンスのことも言っていた。

 ・・これからは、個のチカラではなく、攻守わたって、より組織的なメカニズムを重視するサッカーを志向しようと考えている・・

 フムフム・・。これは、とても興味深いコメントだったね。わたしは単純に、マルキーニョスが攻守にわたって魅せつづけた「個の爆発プレー」が懐かしかっただけなんだけれど・・特に、最前線からの爆発チェイス&チェックもね・・あははっ・・

 その「組織プレー」だけれど、わたしの目には、アントラーズは十分組織的だと映っているのですが、オズワルドさんが言う「組織的なテイストを強める」というテーマの本当のニュアンスが知りたくなったね。まあ、そのうち見えてくるでしょ・・。楽しみにしていましょう。

 オズワルドさんのコメントでは、「我々には、シュートチャンスをしっかりとゴールに結びつけるという課題もある・・」という言葉も目立っていた。もちろん、昨シーズンの「多すぎた引き分けゲーム」のことをイメージした発言です。そうそう、確かに、勝負強いアントラーズにしては、あまりにもシュートミスが多すぎたよね。

 その視点でも、アントラーズの変化に注目しましょう。この試合については、こんなところですかね。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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