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2011_ヨーロッパの日本人・・岡崎慎司・・(2011年2月25日、金曜日)

フ〜〜・・「また」負けちゃった・・岡崎慎司が移籍したVfBシュツットガルト。

 VfBシュツットガルトには、ちょっとした思い入れがあります。友人のドイツ名将、クリストフ・ダウムが率いて1991-1992年シーズンにリーグ優勝した頃(クリストフは、ウド・ラテックに次いで、歴代二位の若きリーグ優勝監督になった!)、何度もシュツットガルトに通い、チームの成長と優勝の軌跡を体感したのです。その頃は、クラブにも街自体の雰囲気にも、活気が溢れていたものです。でも今は・・

 このUEL戦(ホームでのベンフィカ戦)でのシュツットガルトのサッカー内容も、まだまだ消極的&受け身に過ぎた。自信がないんだろうね。要は、心理的なバックボーンが崩れかけている・・っちゅうことかもしれない。

 リーグ戦(ブンデスリーガ)でも、攻守の最終勝負所で、どうしても「足が引けちゃって」いると感じる。サッカーは、いつも書いている通り、究極の心理ゲームだからね。そこでは、意志の内容こそがモノを言う。その意志のエネルギーが、ちょっと中途半端だと感じられる。

 例えば、すべてのスタートラインである守備。

 彼らのプレーでまず感じられたのは、チェイス&チェックに「勢いと巧みさ」がないということ。相手のベンフィカは、テクニックが巧みなラテン系チーム。だから、安易なプレッシャーに「行き過ぎた」ら、その逆を取られて置き去りにされてしまうのがオチ。だから、ガムシャラに(安易に)ボールを奪いに行き「過ぎ」たらダメ。

 でも逆に、チェイス&チェックの勢いが、相手に「余裕」を持たれてしまうような雰囲気だった元も子もない。

 たしかにシュツットガルトは、ロジカルな動きから協力プレスを仕掛けようとはしているけれど、チェイス&チェックという「初動」が中途半端だから、ベンフィカの組み立てを追い込めず、中途半端にプレスを掛けにいって逆を取られちゃう・・なんていうシーンが続出した。

 だからこそ、爆発的な「勢い」が内在したチェイス&チェックを仕掛けていくなかで、相手との「間合い」を巧みに調整し、局面プレーに「心理的なプレッシャー」を掛けていくのですよ。その「メリハリ」に、巧みさが見えてこない。だから相手が、自信をもってリスクにチャレンジしてくるし、シュツットガルト守備も、その勢いを抑制できない。

 またシュツットガルトは、攻撃でもしっかりとボールを支配できず(勝たなければならないホームゲームだから、どうしても前に重心が掛かってしまうという状況であるにもかかわらず!!)、自信なさげな組み立てから中途半端なカタチでボールを失ってしまうシーンがつづく。これでは、個の才能で彼らの上をいくベンフィカに危険な(ショート)カウンターをブチかまされてしまうのも道理だよね。フ〜〜・・

 第一戦の、特に、逆転された後半のゲーム展開のなかで、シュツットガルト選手たちは、ベンフィカの「巧さ」を体感し、ちょっと注意深くなり過ぎていた!?(自信を失うことで、攻守にわたって消極的で受け身のプレー姿勢になってしまった・・!?) まあ、そういう面もあっただろうね。

 だからこそ、岡崎慎司が魅せつづけた、攻守にわたる「意志の爆発プレー」が、誰の目にも頼もしく映ったに違いないと思うわけです。

 まあ確かに、前述した「勢いと巧みさのメリハリ」という視点では、まだまだの部分もあるけれど、それでも、失敗などどこ吹く風・・ってな勢いで、攻守にわたって忠実な汗かきアクションを繰り出しつづける岡崎慎司のプレーには、チームを鼓舞する刺激エネルギーが充満していると感じたものです。

 岡崎慎司が魅せつづける、攻守にわたって「常に限界まで仕事を探しつづけるプレー姿勢」を体感しながら、まだ時間は掛かるだろうけれど、岡崎慎司という存在が、チームの闘う雰囲気(意志のパワー)を高揚させていく(攻守にわたるリスクチャレンジ姿勢をアップさせていく)に違いないと確信したものです。

 またそこには、岡崎慎司が絡む仕掛けプロセスについて別な期待もある。チームの雰囲気が、そんなポジティブな流れに乗れば、岡崎慎司の真骨頂である「三人目、四人目としての決定的フリーランニング」にも、しっかりとパスが出るようになる・・!?

 これまで岡崎慎司が目立った勝負プレーは、『粘りの』ドリブルシュートばかりだったけれど、彼は、それ以外にも強みを持っている。そう、味方(パスレシーバー)との勝負イメージが上手くシンクロした組織コンビネーション・・そして、そんな一発コンビネーションを引き出す「誘因プレー」・・

 彼は、トレーニングやミーティングで、監督やチームメイトにアピールするべきだと思うよ。

 「もしオマエがこのカタチでボールを持ったら・・イヤ、そのカタチでパスを受けそうになったら、絶対にオレは決定的スペースへ全力スプリントで抜け出すから・・とにかく、眼をつぶってでもいいからラスト・スルーパスや中距離ラストパスを(ダイレクトで!!)出してくれよっ!!」

 とにかく、落ちるところまで落ちたVfBシュツットガルトだからこそ、岡崎慎司の意志のエネルギーに対する期待が高まる。攻守にわたって仕掛けつづける、全力の意志の爆発プレーを観るにつけ、そんなワクワク感に舌鼓を打つ筆者なのでした。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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