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2011_日韓戦_私なりにポイントを抽出し、分析しました(その2)・・(2011年8月13日、土曜日)

さて、昨日のつづき・・

■香川真司・・

 ・・先制ゴールのシーンだけれど、それは、香川真司が「本物」であることを如実に証明した象徴的シーンだった・・

 ・・まず遠藤保仁が、韓国がカウンターをスタートしようとした次の瞬間にボールを奪いかえした・・そのとき、ボールホルダーである遠藤保仁の左横には、本田圭佑と香川真司がポジショニングしていた・・

 ・・両人とも、「ここに(足許)パスをくれ!」と、両手でアピール・・でも、韓国ディフェンダーがそのパスを狙っていることを瞬時にさとった遠藤保仁は、瞬間的に「タメ」る・・そして、その次のシーンが、香川真司と本田圭佑の「違い」を如実に表すことになる・・

 ・・香川真司は、その場所でパスを受けるのが難しいと見るや、すかさず次のタテのスペースへダッシュしたのだ・・それに対して、足許パスばかりをイメージする本田圭佑は、例によってボールウォッチャーという体たらく・・

 ・・そんな激しい動き(=強烈な意志)は、その前のスペースへ走り込み、遠藤保仁からのパスを受けた李忠成にも「見えて」いた・・そう、李忠成は、香川真司が、ボールホルダー(遠藤からのパスレシーバー)である自分に、勝負イメージを伝えようとしたのを感じ取ったのだ・・

 ・・だからこそ李忠成は、ダイレクトでヒールパスを「つなぐ」ことが出来た・・だからこそ香川真司は、韓国ディフェンダーのマークを外すことが出来た・・それこそ、日本代表が志向する組織サッカー哲学が集約されたコンビネーションだった・・

 ・・まあ、その後の(トットンというタイミングの二軸動作も含めた)香川ショーについてはコメントの必要なんてないだろうけれど、先日のブンデスリーガ・スーパーカップでドルトムント監督ユルゲン・クロップが囲み取材でコメントしていた、「シンジは逞しくなった・・」という言葉がそのまま当てはまるような自信にあふれたシュートアクションではありました・・

 ・・香川真司・・ザッケローニにとっては、攻守にわたるキープレイヤーだろうね・・もちろん彼自身も、様々な意味合いを内包する「汗かきディフェンス」に精を出すことの価値をよく心得ている・・チームメイトからのレスペクトと信頼・・だから彼のところに(次の仕掛けがやりやすいタイミングの!)パスが集まる・・そして攻撃のコアとしてのリーダーシップが確立されていく・・などなど・・

 ・・香川真司の場合、誰かさんのように、守備が中途半端じゃない・・

 ・・忠実なチェイス&チェックへ急行するときの全力パワースプリント・・マークすべきときには、味方ディフェンダーを追い越してまで、最後の最後まで責任を果たす・・そして「逞しさ」が増したボール奪取勝負(局面での競り合い)・・

 ・・彼は、チームの誰からも頼りにされる存在になった・・あの相手のマークは、シンジに任せておけば心配ない・・

 ・・そして攻撃でも・・ボールがないところでの動きの量と質が、とてもハイレベルに高揚している・・だからこそ、良いカタチでパスを受けられる・・だからこそ、得意の「相手を一発で外してしまう」巧みなトラップだけではなく、エイヤッ!の勝負ドリブルも効果的に繰り出していける・・

 ・・彼の、そんな勝負プレーは、チーム全体に、心理・精神的なチカラ(自信)を与えられるまでに成長していると感じる・・この日韓戦の前半25分あたりからの「ゲーム展開の逆流プロセス」でも、香川真司の果たした役割は大きかったと思う・・

 ・・まあ彼については、これからも、ブンデスリーガという世界の舞台でのプレー内容に注視していこう・・それにしても、ドイツへ行くたびに鼻が高い(わたしのドイツサッカー界でのポジションにも、とてもポジティブな影響が及んでいると体感しているのです!)・・ナデシコ同様に(もちろん、長谷部誠、岡崎慎司や内田篤人も含めて・・)香川真司にも、とても感謝している筆者なのです・・

■清武弘嗣・・

 ・・攻守にわたって、ビックリするくらいの大活躍だった・・わたしは、彼が魅せつづけた攻守にわたる(ボールがないところでの!)全力スプリントの量と質に感動していた・・

 ・・全力スプリントこそ、自分が成し遂げたいプレーイメージが集約されたアクションだからね・・それだけじゃなく、その全力スプリントを、多くのケースで、効果的な「結果」にもつなげてしまうのだから舌を巻く・・

 ・・守備では、ボール奪取という結果につなげてしまう・・そこでの彼は、もし自分自身が奪い返せなくても、ほとんどのケースで、味方が、より有利にボール奪取勝負に絡めるような「汗かきアクション」を繰り返していた・・

 ・・また攻撃でも、とても魅力的な実効プレーを披露してくれた・・もちろん二つのアシストは素晴らしかったけれど、それだけではなく、「小さなところ」での清武弘嗣の「意志の迸(ほとばし)り」には感動さえ覚えていた・・とにかく彼のエネルギッシュなチャレンジ姿勢は、チームに活力を与えたと思うよ・・

 ・・実は、岡崎慎司がケガで(清武弘嗣と)交替したとき、ちょっと残念に感じていた・・わたしは、岡崎慎司の、攻守にわたる全力チャレンジプレーをもっと堪能したかったのですよ・・特に、シュートレンジでボールを持ったときの、シュートへ積極的に向かっていく姿勢と実効プレー(まあ・・ドリブルシュートに集約されるわけだけれど・・)は彼の成長の証だからネ・・

 ・・でも、清武弘嗣のプレーは、岡崎慎司を補って余りある(ちょっと言い過ぎ!?)ものだったから驚かされた・・本当に、とても良いプレーを展開した・・これからの彼の成長が楽しみで仕方なくなった・・

■本田圭佑・・

 ・・たしかに天賦の才に恵まれた選手・・でも、いまの彼のプレーぶり(意図と意志、イメージの内容)では、その才能が泣く・・

 ・・ヨーロッパでは、何人かのプロスカウト連中とも情報(意見)交換した(彼らもまたプロコーチなのですよ)・・彼らのなかには、本田圭佑を知っている(興味をもっている)者もいた・・でも、外国人としては物足りないという意見が大勢だった・・

 ・・とにかく、全体的な運動量がまだまだ少ない・・意志の発露としての、攻守にわたる、ボールがないところでの全力スプリントがない・・パス&ムーブがほとんどない・・足許パスを「待つ」というのが基本的なプレー姿勢ということか・・それじゃあ・・

 ・・とはいっても、しっかりとボールをキープしたり、シンプルにパスを展開するプレー自体は、チームの組織プレーに好影響を与えていると思う・・ただ「その後」がいただけない・・とにかく彼の場合、パスを出した後、ほとんどのケースで動きを止め、再び彼に足許パスが「戻されてくる」のを待つというプレーがほとんどなのですよ・・これじゃね・・

 ・・彼のことを知っている外国人コーチが、こんなことを言っていた・・

 ・・たしかにボールコントロールは素晴らしいし、キープ力もある・・また、シュート力も十分だしパスも上手い・・でも、攻守にわたって汗かきをせず(絶対的な運動量が少なく)、攻撃でも鈍い動きしかしないスタンディングプレーじゃ、自ら攻撃の流れを作り出すことは難しい・・あんなプレー姿勢だったら、やっぱりドリブル勝負で、少なくとも相手1人や2人を抜き去るくらいでなければ使えない・・」等など・・フムフム・・

 ・・シュートシーンでも、自分が打つというイメージ「しか」持っていない・・だから、パスが来そうなスポットに入り込み、そこで「待つ」というのが常套(じょうとう)プレー・・スペースへ全力で走り込みながら決定的パスを要求する(=相手を引きつけることで味方に大きなシュートチャンスを与える!)などといった組織プレー的な発想は、本当に希・・

 ・・また守備でも、忠実なチェイス&チェックなど、守備の起点を演出するための「汗かきプレー」はあまり見られない(常に、トンコトンコというリズムのジョギング!)・・ここでも、自分がボールを奪い返せる場合にのみ全力アクションを起こすというのが基本的なイメージらしい・・とはいっても、実際にボール奪取の競り合に入ったときは、とても強い・・フムフム・・フ〜〜・・

 ・・どうだろうね〜・・ワールドカップ予選において、最後の最後で、強い相手とのギリギリの勝負という状況になったとき、ザッケローニは、本当に、本田圭佑の才能を(そのプラス効果に期待し)信頼してグラウンドに送り出せるのだろうか・・

 ・・とにかく本田圭佑の場合は、(最近ドイツへ移籍した天才肌の日本選手や家長昭博も含めて!?)才能面でのプラスと組織プレー面でのマイナスの両方を、常に天秤に掛けなければならないという難しいマネージメント作業を強いられるわけだね・・歴史的に見れば、そんなケースは星の数ほどあるわけだけれどネ・・フムフム・・

■その他にも「最後の15分間」とか、「大人のダブルボランチ」とか、色々とテーマはあります。まあ、これからも何度もビデオを見直すことになるでしょ。それこそが、強い相手とテストマッチを行うことの、もっとも重要な意義なのですよ。

ということで、今日は、こんなところですかネ。

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 ちょっと話題は変わりますが・・。

 このところ、わたしが愛用しているウエストバッグやバックパックについて質問してくる方々が増えています。ということで、それを軽くご紹介することにしました。

 ブランドは、METAS(メタス)といいます。

 以前「サザビー」という有名ブランドのチーフデザイナーを務めていたわたしの友人が、10年前に独立して作り上げたプライベートブランド。その、痒(かゆ)いところにも楽に手が届くっちゅう感じの、実用的なアイデアが満載されたビジネスツールが、とても気に入ってます。

 METAS(メタス) が扱っているのは、わたしが愛用するウエストバッグやバックパックだけじゃなく、ショルダーバッグやハンドバッグ、はたまたボストンバッグやブリーフケース等もあります。

 全体的なデザインはオーソドックス(どこか懐かしいスタンダード・・というのがコンセプトらしい)だけれど、高質な材料の選択や、その素敵な組み合わせだけじゃなく、細かな気配りアイデアにも感嘆させられるスグレモノです。使い込めば込むほど(長寿もコンセプトの一環!?)、愛着がわいてくる。そして、安物とは違い、古くなればなるほど、素敵なチャック金具やおしゃれな裏地といった「細かなデザイン」が光り輝いてくる。

 ちょっと誉めすぎ!? まあ私は、メタスの哲学と、それを具現化したバッグ類を、とても気に入っているのですよ。

 様々なタイプのバッグを日々のアクションに活用している方々こそが、その細かな気配りアイデアを高く評価するに違いないと確信する筆者なのでした。ちょっと「押し」過ぎ!? あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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