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2011_ヨーロッパの日本人・・才能ね〜〜・・(2011年5月16日、月曜日)

・・実質的なプレーコンテンツが認められてインテルへの完全移籍を果たした(!)長友佑都・・ようやくチャンスに見合ったゴールを量産しはじめた(!)岡崎慎司・・はたまた、どんなポジションでも、水準以上の(大人の)質実剛健プレーで貢献しつづける究極のチームプレイヤー(!)長谷部誠・・

 ・・最終節で復帰を果たし、すかさず華麗なラストパスを通した「天才肌プレーベースのハードワーカー」香川真司・・フッ切れたリスクチャレンジというテーマではまだ課題が見え隠れするものの、順調に発展をつづけている内田篤人・・

 本場の厳しい「環境」という刺激を受けながら、持てる才能と特長を順調に進化&深化させつづけている日本人選手たちがいる。彼らの、疲れを知らない『意志のプレー』に対しては本当にアタマが下がる。また、日本サッカーのアイデンティティー(誇り)としての抜群の存在感に対しても、感謝の念に堪(た)えない。

 そんな、発展をつづける日本人プレイヤーに対し、あり余る才能に溺れて(!?)停滞傾向にある日本人もいる。本田圭佑、家長昭博、それに、まあ・・宮市亮。ここでは、プレーをある程度確認できる選手だけを取りあげます。悪しからず。

 そんな才能たちのプレーには共通する課題があります。それは、攻守にわたる組織プレー(チームに貢献する忠実なハードワーク)。

 守備では・・チェイス&チェック・・次のボール奪取プロセスへの参加の仕方・・マーキングやカバーリング・・などなど。

 攻撃では・・ボールがないところでの動きの量と質・・シンプルなパスプレー・・などなど。

 守備での彼らは、もし偶発的にボールを奪い返せるシチュエーションに入ったときは、例外なく、目の覚めるような素晴らしいアタックでボールを奪いかえしてしまう。それは、まさに才能プレー。でも、そんな才能に恵まれているにもかかわらず、実質的なディフェンスプレーは貧弱そのものなのです。例えばチェイス&チェックといった、周りの(次の)味方にボールを奪い返させる意図をもった全力の「汗かき守備プレー」などはやらないし、やったとしても、まさにお座なり・・とかね。

 例えば、昨日のレッズ対セレッソ戦での、セルヒオ・エスクデロの守備プレー。セルヒオの天賦の能力については疑う余地がない。それでも、攻守にわたる「中途半端なプレー」が、その秘めたるチカラを台無しにしている。

 自分のミスでボールを奪われた後の「追いかけ」にしても、自分しかいない状況での相手のマーキングにしても、まさにお座なりなのです。そんな「ぬるま湯」の守備参加だったら、周りのチームメイトにとっては、かえって迷惑なだけだよ。

 読まれている皆さんは、急にセルヒオ・エスクデロが登場してビックリされたかも。とにかく、それほど、昨日の(レッズ対セレッソ戦での)彼のプレーには落胆させられたのですよ。守備プレーのコンテンツは、評価の対象にもならないくらい「いい加減」だったし、攻撃にしても、身勝手なプレーばかりが目立つことで、結局「実質的な成果はゼロ」っちゅう体たらくだったのです。

 攻撃だけれど、本田圭佑や家長昭博にしても、まあ・・宮市亮にしても、ボールを持ったら、タメや勝負ドリブル、はたまたドリブルからの決定的スルーパスなど、たまには、彼らにしかできない才能プレーを披露する。それでも、全体的なパフォーマンス(実質的なチーム貢献度)という視点では、まさに水準以下としかいいようがない。

 要は、忠実な組織プレーが(それに対する積極的な意志が!?)絶対的に欠落しているということなんだろうね。シンプルな展開パスや、シンプルなパス&ムーブがない・・もちろん、メリハリの効いた(全力スプリントを織り交ぜた!)、忠実なボールがないところでの動きも見られない・・そして、止まり気味で「足許パス」ばかりを要求する・・などなど。

 そんな状態で足許パスをもらっても、相手に狙われているわけだから、すぐに詰められてプレッシャーを掛けられちゃうでしょ。そして彼らは、仕方なく無為な「逃げの」横パスを出す。もちろん、その後も足を止めたまま。

 彼らは、もっと頻繁に、もっと良いカタチでボールに触らなければ(パスを受けなければ)ならないのですよ。そうでなければ、彼らの才能が台無しになってしまうんだよ。

 要は、もっと頻繁に、より相手守備が「薄い」ゾーンで、ある程度フリーで(要はスペースで)ボールを持たなければ、彼らの才能を活かしたプレーを展開できないということです。 その状態に至るには、ドリブルで抜け出してもいいし、ボールがないところでの動き(パスレシーブの動き)をベースにパスを受けてもいい。

 そして、ある程度フリーでボールを持てれば、勝負ドリブルとかラストパス、はたまた、ドリブルからの(相手守備の視線と意識を引きつけた)決定的スペースへの華麗なスルーパス・・なんていう才能プレーだって、より効果的に披露できるはずだよね。

 でも彼らは、動かない。絶対的な運動量があまりにも貧弱だし、そんな、攻守にわたる汗かきプレーに精を出すという発想自体を持ち合わせていない・・なんてコトまで感じてしまう。フ〜〜・・

 このコトは、公に文章を発表しはじめた頃から書きつづけているんだけれど、とにかく、日本では、そんな才能プレイヤーが、(本当は!)持てる才能を最大限に活用するために必要なハードワークの何たるかを「最後まで知らず」に潰れてしまうケースが多すぎると思うわけです。

 フットボールネーションだったら、子供の頃から、ハードワークをしない、ハードワークをやらないような、才能あふれるユースプレイヤーに対しては、常に正しいアドバイスが飛んでくるという環境があるのですよ。

 もちろん、ディエゴ・マラドーナのような「レベルを超越した才能」の場合は別だけれどネ。要は、チームメイトも納得し、その才能で自分も得するために(彼の分まで)ハードワークするくらいの、度を越した才能のことです。

 でも「それ」は例外だし、情報化や国際化によって世界サッカーの全体レベルが格段にアップしているという(どんどん環境が変化しつづけている!)現状では、才能連中も、攻守にわたるハードワークに精を出さなければ生き残れなくなっているのです。

 もっと言えば、才能があるからこそハードワークに精を出す・・それによって自分の市場価値が格段にアップする・・そんな「構図」に対する理解が促進した・・ということかもしれないね。

 とにかく、本田圭佑、家長昭博、まあ・・宮市亮といった日本が誇る才能連中に、天から授かった才能を本当の意味で開花させるために、自分のプレーの内容について本気で考える(再考する)ことを期待しているのは私だけではないに違いありません。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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