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2010_ナビスコ・・内容は素晴らしかったけれど、エスパルスの勝利への執念にやられてしまった!?・・(RvsSP, 0-1)・・(2010年5月30日、日曜日)

え〜〜・・何よ〜〜・・こんな良いサッカーで、それもチャンスの量と質じゃ、明確にエスパルスを凌駕していたのに、ほぼワンチャンスに近かった原の一発ヘッドでやられちゃうなんて(まあ・・その数分前には、ヨンセンのヘッドがバーを直撃したから、ワンチャンスっていうわけじゃなかったけれどネ)・・

 エスパルス長谷川健太監督にゃ悪いけれど、それが本音の印象でしょ。内容と結果の乖離(かいり)。サッカーの神様のイタズラっちゅうことですかね。まあ、仕方ない。

 それにしても、両チームとも「勝たなければならなかった」から、立ち上がりから積極的に仕掛け合う、とてもエキサイティングで面白い「ガチンコ勝負マッチ」になった。そんな、最高レベルの「強烈な意志」をベースに仕掛け合う流れのなかでも、レッズの方が、「本物のチャンス」という視点で、より多く、そしてとても危険なゴールチャンスを作り出していたと思うのですよ。

 たしかにエスパルスも、まあ・・小野伸二という「仕掛けの流れを加速するテコの支点」を中心に、危険な攻撃を繰り出して入ったけれど、でも彼らの場合は、レッズのように、決定的シュートシーンを作り出すというところまでは簡単にいけないのですよ。だから最後は、(もちろんアバウトじゃないけれど・・)中距離シュートで終わってしまうという攻撃の方が目に付いた。

 このコラムの中心的なテーマは、試合がはじまる前から、両チームともに勝たなければならなかったというゲームの位置づけ(意味)です。

 一発勝負のトーナメントマッチとは違うよね。その点について長谷川健太監督は、こんなコトを言っていた。

 「たしかにトーナメントとは違いますが、それでも、相手に一点リードされ、もう行くっきゃないっていう状況とか、同じような流れはリーグ戦でもよくありますよね・・そんな状況じゃ、石橋を叩いてわたっていたら何も得られない・・小さな守備のミスなんて気にせず・・また細かな戦術的ルールなんて放り出して、極限のリスクチャレンジを仕掛けつづけるしかないじゃありませんか・・その意味でも・・たしかにチャンスの量と質ではレッズに上回られていたけれど(=長谷川さんは、私の質問にアグリーしていた!!)それでも選手たちは、最後の最後までギリギリの勝負を挑みつづけてくれた・・その意味でも、この勝利は、我々が勝ち取ったモノ(we deserve it !!)だと胸を張って言えると思っていますよ・・(最後の発言部分は、記者会見での長谷川健太監督の表情を、勝手にわたしが読み取った演出表現でした・・あははっ)」

 「ノーガードの打ち合い・・」なんていう表現があるけれど、まさに、それに近いゲーム展開になったということです。でも・・まあ・・互いにガンガン「攻め上がった」両チームではあったけれど、チャンスメイク(ゴールを奪い取れる可能性)の量と質だけじゃなく、次のディフェンスの内容でも、やはりレッズの方に一日の長があったかな・・っちゅうのが、私の全体的な印象なのでした。

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 ところで、エスパルスの小野伸二。やはり上手い。まず何といっても、トラップがスーパー。これは・・もう・・天賦の才としか言いようがない。そして素晴らしいボールコントロールとパス(展開)能力や、チャンスメイク能力。ボールを相手に奪われないという視点でも、チームメイトが、彼に対して全幅の信頼を寄せていると感じる。

 たしかに、インターセプトなどの「直接的なボール奪取勝負」ではなく、味方にボールを奪い返させるような「汗かきのチェイス&チェック」や、攻撃でも、ボールがないところでの動きの量と質など、攻守にわたる組織プレーでは、まだまだマイナス要素の方が目立つ。でも、「小野伸二を中心にするというイメージ」でチームが統一されていたら、それは、それで、とても効果的なチーム戦術になる。そう・・アントラーズの小笠原満男のように。

 とはいっても、この二人を効果的に使うためには、チーム全体を、彼らを「中心に」組み立てなければならないのも確かなこと。だから、「世界」が相手となったら、そりゃ・・無理だ。まあ・・残念ではあるけれど・・。彼らのような「天才」に、攻守にわたって、しっかりと「汗かき」をさせなければ日本サッカーの未来はないわけだからね。やっぱり、誰か、外国の「レジェンド強面」を連れてこなければダメだね。

 さて次はレッズ。この試合では、エジやポンテ、柏木陽介、はたまた、攻守にわたる中盤のジェネレーター(発電器)細貝萌など、レッズ選手たちも、例外なく、本当に素晴らしいプレーを展開していた。でもここでは、またまた、セルヒオを取りあげたい。何といっても、彼の才能は、「ブレイクスルーさせなければ犯罪!!」というスーパーなレベルにあるわけだからね。

 全体としては良かったと思いますよ。でも、攻守にわたる「クリエイティブなムダ走り」が、まだまだ足りない。この試合は、テレ玉の社内プロフェッショナルの方と観ていたのだけれど、セルヒオの「部分的なスーパープレー」に歓声を上げながら、ボールがないところでの貧弱で怠慢なプレー内容に「ブーイング」も飛ばしていた。そこで彼がわたしに、こんなことを言った。

 「湯浅さん・・セルヒオには、個人的に教え込まなければいけないと思いますよ・・時間を取って、懇切丁寧に説明しながら・・」

 それを受けて、こんなコトが口をついていた。「それって・・うまく編集したビデオを観ながら、彼のプレー内容を分析し、彼を説得するのが効果的だよね・・例えば、どうして、その場面で、パスを出した後に足を止めちゃうんだよ〜〜・・とか、そこじゃ、もっと忠実にチェイス&チェックを仕掛けなけりゃダメなんだよっ!とか・・あの場面で、どうして最後までマークしつづけなかったんだっ!・・また攻撃では、いまフリーランニングで前のスペースへ飛び出したら、オマエが得意のドリブル勝負を、とても有利なカタチで仕掛けていけたじゃないかっ!!・・そうすりゃ、オマエはヒーローだぜ・・オマエには、特別な才能がある・・それを開花させる努力をしなけりゃ、ホントにこのまま終わっちゃうゾ・・などなど」

 とにかく、セルヒオが、本当の意味で「ブレイクスルー」した姿を観てみたいと思っているのは、私だけじゃないはずです。

 あっと・・田中達也。記者会見で、フォルカー・フィンケが、彼の腿に相手のスパイクが入って「穴」が開いたような状態だ・・たぶん幾針か縫わなければならないだろう・・と言っていた。要は、とても大きな外傷を負ったということらしい。そこで、確認のために聞いた。「それは・・外傷だけで、関節のケガではないということですか?」「そういうことだ・・」

 そこで、(田中達也にはホントに悪いけれど・・)ちょっとホッとした。外傷だけならば、回復には最初から目処が立つからね。もし「関節系のケガ」だったら、状況によって数ヶ月や一年を要するモノだってあるわけだから・・。

 さてこれで、ナビスコカップでのレッズの勝ち残りの可能性は、とても小さなモノになった。前節での、ホーム山形戦の敗戦が(フォルカー・フィンケも言っていたように)とても痛かったし、たくさんの反省ポイントがあったようだ(わたしは、残念ながら観られなかった・・)。

 次節(レッズはお休み)の結果で、レッズのグループリーグ敗退が決まってしまうかもしれない!? え〜〜と・・エスパルス対ジュビロ戦が、どのような結果になっても(どちらかが勝っても引き分けでも)、また二位と三位のマリノスと山形が、両チームともに勝利を収めても、ほんの僅かだけれど、まだレッズに勝ち残りチャンスが残っているということらしい。フムフム・・

 わたしは、所用のため、南アには、6月13日に飛びます(開幕戦から三試合は観られない!)。そしてカメルーン戦当日の14日の早朝に、ヨハネスブルク空港に到着し、そこで予約しておいたレンタカーをピックアップして、ブルームフォンテーンへの500キロを走破するつもり。ということで、6月9日のナビスコ最終節は観戦できる。さて、どうなることやら・・。

 ということで、今夜は、日本対イングランド戦。それに備えて、このコラムは、このあたりで・・

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。岡田ジャパンの楽しみ方・・という視点でも面白いかもしれません・・たぶん。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。

 




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