トピックス


2010_ヨーロッパの日本人・・香川真司と内田篤人・・(2010年12月9日、木曜日)

ちょっと唐突ですが、進んでいたビジネスプロジェクトが一段落したこともあって、久しぶりに香川真司(まあ彼の場合はドルトムントのチーム戦術が分析対象の主体かな・・)と内田篤人についてコラムをアップすることにしました。

 まず、香川真司。こりゃ・・ホントに、日本サッカー界は(ザッケローニは!?)ボルシア・ドルトムント監督ユルゲン・クロップに感謝しなくちゃいけなくなるかもしれない。

 FSVマインツ時代からそうだったけれど、ユルゲン・クロップもまた、究極の組織サッカーを志向しているのですよ。いつも書いているように、まだまだ世界トップとの「最後の僅差」を乗り越えられていない日本だからこそ、才能に恵まれている(スター!?)選手にこそ、攻守にわたる「汗かきハードワーク」が求められる。そう、香川真司という、日本が誇る才能が、本当の意味でブレイクスルーを達成するために・・。

 そんな組織サッカーだけれど、いろいろな言い方があるよね・・例えば、イビツァ・オシムだったら、人とボールがしっかりと動きつづける走るサッカー・・フォルカー・フィンケだったら、ボール・オリエンテッドなサッカーとか、厚い(常に数的優位を保つような)組織コンビネーションとか・・

 そんな組織サッカーを体現していくための絶対的なベースは、いつも書いているとおり、優れた『守備意識』にあります。

 ユルゲン・クロップ率いるボルシア・ドルトムント。今シーズンの彼らは、勝ち点の記録を塗り替えるほどの素晴らしい成績で「ヘルプスト・マイスター(秋の王者)」に輝きそうだとか。要は、ブンデスリーガの前期を、トップで後期へ折り返すということです。

 そんな素晴らしい「結果」の絶対的ベースが、守備にあり・・なのです。何せ、失点数は、二位チームの約半分なんだからネ。そのバックボーンが、選手全員に「例外なく」浸透している、相手からボールを奪い返す連動アクションへ積極的に参加していく強烈な意志ということです。

 既に、何度も繰り返したことだけれど、守備の基本アクションは、何といっても、チェイス&チェック(相手ボールホルダーへのアプローチ)です。そして、そこで作り出される「守備の起点」をベースに、その周りが、インターセプト(相手トラップの瞬間を狙うアタックも含む!)、遠いサイドの相手に対する忠実マーク、相手のボールの動きの停滞を狙う協力プレス(プレッシング守備!)といった連動したディフェンスプレーを繰り出していくというわけです。

 守備の起点プレーだけれど、それは、相手ボールホルダーへチェイスで寄せていく段階もまた、次の連動アクション(そのイメージ)を誘発するという意味合いで、守備の起点です。

 このニュアンスが難しいのですよ。相手ボールホルダーの動きを「止め」なければ、連動したボール奪取アクションに入ってかず、様子見になってしまう選手のいかに多いことか。そのポイントこそが、その協力プレッシング守備が、ホンモノかどうかの分水嶺になる。

 ボルシア・ドルトムントでは、一人がチェイス&チェックに入った次の瞬間には、インターセプトを狙う者、次のダイレクトパスを受ける相手パスレシーバーへ寄せていく者などなどのアクションが、本当にスムーズに「連動」しているのです。これこそが、トレーニングの為せるワザ(監督のウデを測る指標!!)というわけです。

 そして、そんなアグレッシブな守備(全員でのボール奪取プロセス)を機能させられているからこそ、次の攻撃でも、人数をかけていける。要は、次のディフェンスに対する相互信頼関係が深化しているということです。だからこそ(もちろん全体的な走りの量と質で相手を常に凌駕することで!)必要なところで、効果的に、数的に優位な状況を作り出せる。だからこそ、最高の組織コンビネーションも機能させられる・・というわけです。

 本当に、ユルゲン・クロップは、よい仕事をしている。

 今シーズンの彼は、チームを大幅に若返らせた。要は、様々な意味合いで「心理マネージメント」が難しくなった連中(≒既に、ある程度の地位や富を得てしまった極限モティベーションの難しいベテランやスター連中)を排除し、よりハングリーな若手をどんどん起用していった。

 そのなかに、本当にラッキーなことに、香川真司も含まれていたということです。これは、もう、巡り合わせとしか言いようがない。とにかく、ユルゲン・クロップは、とてもインテリだし、そのパーソナリティーも、チャレンジ精神とフェアネスにあふれた「本当にナイス!」なヤツです。

 香川真司も、そんな「ナイス・パーソナリティー」に引っ張られつづける「若いグループ」の一員として、常にディフェンスのハードワークからゲームに入っている。そして、そんな汗かきハードワークを存分にこなしているという自負があるからこそ、味方からボールを積極的に委ねられるし、それがあるからこそ組織コンビネーションで重要な役割を果たしたり、相手ディフェンスが「薄い」シチュエーションで、自信あふれるドリブル勝負も繰り出していける。

 いまのボルシア・ドルトムントは、様々な意味合いを内包する「善循環」が回りつづけていることで、チームとして発展をつづけている。そして香川真司も、そんなポジティブなベクトルに完璧に乗れていることで、本当の意味で「世界へのブレイクスルー」を果たそうとしている。

 願わくば、このまま香川真司が、そのパーソナリティーをも「ブレイク」させることで(もちろんトゥーリオとまではいかなくても・・あははっ!?)日本代表チームでも確固たるリーダーシップを発揮してくれることを期待しちゃうんですが・・。さて・・

------------------------

 内田篤人については、後で書き足します。

------------------

 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]