トピックス


2010_日本代表_・・立ち上がりの(組織プレーの)勢いを維持できなかったリーダー不在の日本代表・・(日本vsグアテマラ, 2-1)・・(2010年9月7日、火曜日)

どうだろ〜ね〜・・、グアテマラとの地力の差を、しっかりと「結果」に反映させられなかったというポイントも含め、課題が見え隠れしていた・・という総評にならざるを得ないよね。ゲームの立ち上がりは、本当に素晴らしい流れだったのに・・

 立ち上がりに魅せたダイナミックなサッカーだけれど、その現象の第一のバックボーンは、何といってもグアテマラが、チームとしてまったく機能していなかったということでしょ。特に守備にまとまりがなかったよね。中盤でのボール奪取勝負プロセスで、ことごとく負けていただけじゃなく、ボールがないところで動く日本選手をしっかりと捕まえられない・・タテのポジションチェンジに対応し切れず、ウラの決定的スペースを攻略されてしまう・・などなど。

 もちろん「その現象」のバックボーンには、日本代表の組織プレーがうまく機能していたという要素「も」あります。中盤の底コンビの橋本英郎と細貝萌が、中盤ディフェンスと組み立てプロセスを安定させ、香川真司と乾貴士のポジションチェンジがうまく機能し、だからこそ、左サイドの長友佑都が、何度も、決定的なサイドからの崩しを演出した・・。

 でもサ、グアテマラの守備が安定しだしてからは、それまでダイナミックに機能していた日本代表の「全体的な動き」が徐々にダウンしはじめてしまうのですよ。

 そう・・、守備でのチェイス&チェックという汗かきプレーだけではなく、攻撃では、ボールがないところでの「動き」の量と質がどんどんと減退していった。守備的ハーフのコンビはいい感じでプレーしているけれど、やっぱり前線の四人の「動きの量と質」がダウンしていったということだね。

 前戦からのチェイス&チェックにしても、攻撃でのボールがないところの動きにしても、彼らのイメージは、自分がボールを奪い返せる・・自分が、タテのスペースでパスを受けられる・・といった、自分自身が、決定的な仕事をできるような状況に「しか」動かないのですよ。

 優れたサッカーは、クリエイティブなムダ走りを積み重ねていくことで「しか」演出できないわけだからね。バルセロナやスペイン代表の、守備や、攻撃でのボールがないところの(汗かきの!)動きを観察すれば一目瞭然でしょ。

 ボールがないところで動くのは、自分がスペースを活用するため(そこでパスを受けて攻撃の基点になるため!)だけじゃなく、別の味方にスペースを作り出したり、三人目、四人目のフリーランナーとして、相手守備ブロックを攪乱するためということもあるんですよ。

 とにかく、優れたサッカーでは、攻守にわたる「汗かきプレー」とか「リスクチャレンジ」が絶対的なバックボーンなんだな。「それ」がなければ、決してサッカーのレベルを深化&進化させられない。

 そして、この日の日本代表のプレーからは、徐々に、その、もっとも大事なバックボーンが消失していった。もちろん、たまには、単発的に「有機連鎖」することもあったけれど・・ネ。

 要は、個人による局面打開プレーには明確に「限界」がある日本代表の場合、それを補う(究極の!?)組織プレーを機能させるための絶対的なバックボーンが不可欠だということです。

 バルサにしてもスペイン代表にしても、はたまた、今回のワールドカップで存在感を発揮したドイツ代表にしても、あれだけ上手い連中が、攻守にわたって、全力の汗かきプレーを繰り広げる。要は、目標イメージが明確で、選手が、そこに到達するために必要なプレーの「本質」をしっかりと理解しているということだろうね。「それ」が、チーム内の、明確な不文律として機能している・・だからこそ、「汗かき」に対する「意志」を、常に高みで安定させられる。フムフム・・

 この日の日本チーには、リーダーがいなかった。だから、「人間の本質的な弱さ」の方が、彼らの「意志」を凌駕してしまった(人間的な弱さに負けた!?)。

 リーダー・・。ここまでの文脈じゃ、技術や戦術理解のレベルに優れ、チームメイトに有無を言わせないくらいに「攻守にわたる汗かきブレー」にも全力を尽くす選手。だから、チームメイトから敬意を抱かれる。だから、チームメイトたちを鼓舞し、攻守にわたる汗かきプレーを(それに対する意志を)高揚させられる。この日のチームには、そんなリーダーがいなかった。

 わたしは、香川真司がイニシアチブを握ることに対して、淡い期待を抱いていた。でも結局は・・。彼は、もっと、ドルトムントでの強烈なポジション争いや、(これまた強烈なパーソナリティーである!)ユルゲン・クロップ監督からの「強烈な刺激」を受けて逞しくならなきゃいけない。

 いまは、周りのダイナミックなサッカーの流れに「うまく乗って」いるけれど、自らの意志を前面に押し出していかなければ(もちろんチームプレーを絶対的なベースにした個人勝負のことですよ!)いつかは壁にぶつかってしまうでしょ。

 そう・・意志こそが大事。意志さえあれば、おのずと道は見えてくる・・のです。

 ということで、この試合も、牛若丸(中村憲剛)で締めるしかなくなった。最後の10分間で彼が演出した「ポジティブ変化」には、それだけのインパクトがあったからね。

 第一戦でも彼がチームの絶対的なコアとして抜群の存在感を発揮した。そして、彼が交替出場した最後の10分間でも、同じ現象になった。まあ・・大したものだ。

 この試合については、こんなところですかね。

------------------

 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]