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2010_東アジア選手権・・さて、勝負の韓国戦へ向けたベストメンバー(選手タイプの組み合わせ)が見えてきた・・また「なでしこ」についても、ちょっとだけ・・(日本vsチャイニーズ・タイペイ&香港、女子=3-0、 男子=3-0)・・(2010年2月11日、木曜日)

「わたしは、稲本をワンボランチとしてグラウンドに送り込んだ後のことを言ったので、いまのご質問の趣旨がまさにその通りだったということなんですが・・」

 そのとき、隣にすわる英語ベースのジャーナリスト(いまはホンコン在住かな!?)マイケル・チャーチが、おどけて笑いかけてくるんですよ。つられて、こちらも笑っちゃったけれど、いやいや、笑ってはいられない。そこに、このコラムのポイントがあるんだからネ。

 要は、こういうことです。

 岡田武史監督が、「後半になって(後半の途中から!?)遠藤保仁を前へ上げてから、リズムが良くなってきた・・」というコメントを出したのですが、その変化について、今日のコラムのポイントを明確にするということも含めて、より詳細に質問することにしたのです。

 「いま後半になって遠藤を前へ上げてから全体的な動きがよくなったというニュアンスのことを話されました・・たしかに、そういうこともあるとは思いますが、私は稲本潤一が入ってから、より一層リズムがよくなってきたと思ったのです・・その視点についてコメントをいただけませんか?」

 そんな私の質問に、岡田監督が、冒頭のように応え、隣のマイケルにからかわれたというわけです。でも・・ちょっと待ってちょうだいネ。

 後半だけれど、立ち上がりから、今野泰幸に代わって平山相太が入りました。そのことで、小笠原満男が守備的ハーフ(まあ・・センターハーフ)の位置に下がった。

 この基本的なポジション&役割の変更では、岡田武史監督は、遠藤保仁が、前半と同様に守備的ハーフ(まあ・・遠藤の場合は、本物のボランチと呼んでも差し支えないでしょう!)だというイメージだったんだろうね。でも私の目には・・

 そう・・私は、遠藤ヤットが、後半立ち上がりからどんどん前へ上がっていったという印象が強かったのですよ。実際、そういう流れだったと思うわけです。

 要は、香港が、ボールを奪っても、そんなに素早く攻め上がってこられないことで(上がった遠藤でも、香港の攻撃シチュエーションに対して余裕で戻ってこられる!)、また、後方でのゲームメイカー(リンクマン=組み立てパスのプロヴァイダー=組み立てパスの供給プレイヤー)として小笠原満男が『下がった』こともあって、遠藤ヤットが、後半の立ち上がりから、より攻撃的に前へ上がっていったということです。

 実際、下がった小笠原満男には、最終ラインからの展開パスや、中盤からのバックパスなど、どんどんとボールが回されていた。そこから小笠原満男が、「ビルドアップのための展開パス」を送り出していたというわけです。

 だから私は(岡田武史監督のコメント意図とは異なるように!?)後半立ち上がりから遠藤ヤットが、より前を意識してプレーするようになった・・そして実際に、全体的な動きがよくなっていった・・ただ、そんな「リズムの好転」が本格的な奔流となりはじめたのは、稲本潤一が交代して入ってからだ・・と理解したわけです。もしかしたら、「後半の途中から遠藤を上げた・・」というクダリの「途中に」という部分を聞き逃したのかナ・・

 この稲本潤一の交代出場だけれど、(このところの汗かきのディフェンスプレーも含め)彼の確かなディフェンス力、広範な動き、しっかりとしたボールコントロールとリンクマン(後方からのゲームメイカー)としての素早く正確な組み立てパス、そしてもちろん(日本人には希な)確かなフィジカル能力など、とても効果的だった。

 そんな(特にディフェンス力で信頼が置ける!)稲本潤一が入ってきたからこそ、闘莉王もガンガン上がっていけるようになった。

 ところで、この「闘莉王のオーバーラップ」だけれど、それについては、岡田監督も「条件付き」で容認しているみたいだね。「彼には、ボールを失ったら、ルシオのような鬼の形相で全力で戻ってこい・・と言っている」・・だってサ。アレ!? 鬼の形相・・なんていう表現はなかったっけ!? あははっ・・

 このコラムで展開したディスカッションに含まれる重要なコノテーション(言外に含蓄される意味)は、稲本潤一という選手が放散する「味方のプレーイメージを解放する心理パワー」なのですよ。

 要は、守備で信頼できる稲本潤一が入ったからこそ、後ろ髪を引かれることなく、遠藤ヤットにしても闘莉王にしても積極的に攻め上がっていけた・・だからこそ、攻撃の流れのなかでの「ボールのないところでの忠実な動き」の量と質が、大きく増幅された・・そこでは、パスを出してから足を止めてしまったり、ぬるま湯の動きしかしなかったり、はたまた、オレにボールをよこせと緩慢に寄っていくような=オレが主役だ!という意識にまみれた!?=中途半端なプレーをする選手がいなくなった!?・・だからこそ、組織プレーの内容だけではなく、それをベースにしたチャンスメイクの量と質も、それまでとは比べものにならないほどアップした・・もちろん香港が疲れてきたというともあるだろうけれど、それ以上に、日本のペースアップが素晴らしかった・・と思うわけです。

 『今の』稲本潤一は、様々な意味合いで、チーム&ゲーム戦術的なオプションを広げてくれる選手として大いに期待を持てるよネ。

 例えば・・彼をワンボランチにして(このところのパフォーマンスからすれば、彼もまたボランチという称号がふさわしい選手だ!)その前に、スーパーな守備意識の「組織プレーカルテット」を並べる・・そう、遠藤ヤット、中村憲剛、中村俊輔、そして長谷部誠・・そして岡崎慎司がワントップを張る・・なんてことも可能だと感じられるしネ。

 相手がオランダやカメルーンだからね、とても現実的なオプションだと思うわけです。フムフム・・

 とにかくこれで、この日曜日に国立競技場で行われる、ホンモノの闘いになるはずの韓国戦に投入するベストメンバーがほぼ見えてきたわけだけれど、そこでの稲本潤一のスピード、上手さ、強さを堪能しましょう。とにかく、最終戦は、香港vs中国戦も含めて、入場料にオツリがくるようなエキサイティングマッチになること請け合いだぜ・・

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 ところで、「なでしこジャパン」。もちろん、寒風をモノともせずに「日本対チャイニーズ・タイペイ」を最初から最後まで観戦したのですが、ここでも、ある決定的な選手交代がありました。

 それは、宮間あやと澤穂希の交替。後半の13分あたりだったでしょうか。そしてそこから、「なでしこ」のサッカーが、格段に活性化していくのですよ。澤穂希が入った一分後には、彼女からのロングパスをキッカケに、岩渕真奈が、彼女の2点目となるゴールを決め、その後もテンポよく攻めつづけるなかで後半40分には3点目のゴールを高瀬愛実が決めた。

 そこで、佐々木則夫監督に、こんな質問をしてみた。「澤穂希が登場してから、ガラリとサッカー内容が良い方向へ変わったと思うが・・」

 それに対して佐々木則夫監督が、こんなニュアンスのことを言っていた。

 「前半は宮間あやでゲームを作りにいき、後半は澤穂希で作りにいった・・相手のスタミナや集中力も評価ベースにしなければならないが、たしかに、澤が入ってからスペースがないなか、相手をサイドに引きつけて逆サイドを突いていくなど、うまく変化を演出できたかもしれない・・」

 わたしは、佐々木監督のコメントを、フムフム・・と納得して聞いていた。でもネ・・

 その記者会見の後(要は、男子のサッカーが始まる前)、例によって、後藤健生さん、講談社の矢野透さん、そしてジャーナリスト大先輩の牛木素吉郎さんと夕食をともにしました。

 牛木素吉郎さんですが、読売新聞の記者を務め上げられ、サッカーマガジンでも「ビバ、サッカー!」というコラムを記録的に長い期間連載していました。また現在でも、ビバ・サッカー研究会を立ち上げ、そこでサッカーの普及に尽力されています(牛木さんについては、フリー百科事典、ウィキペディア(Wikipedia)を参照してください)。私は、牛木さんも設立に尽力した「読売サッカークラブ(現・東京ヴェルディ)」で専属コーチ契約をしていた頃、いろいろとお世話になりました。アタマの上がらない大先輩です。

 その牛木さんから、「あんな質問をしたら、頑張っていた宮間あやの立場がなくなるじゃないか・・」と、言われてしまったのですよ。また後藤健生さんからも、「そうそう・・何せ、中国戦から比べて、7人8人の選手を入れ替えたんだからネ・・そんな新しい選手たちをうまくコントロールすることなんて至難のワザだよね・・それに、前半の台湾は、とても集中した守備が出来ていたしね・・そんな宮間でも、時間が経つうちに、うまく周りをコントロールしてゲームメイクできるようになっていったよ・・」なんて言われてしまう。

 そんなブーイング大合唱に、講談社の矢野透さんも加わります。でも矢野さんの場合は、とてもソフト・・。「湯浅さんの質問について、どうのこうのと言うわけじゃないのですが・・澤が入ったときは、既に台湾はかなり疲れていましたよね・・また後藤さんが言われたように、宮間は、前半でも、徐々にパフォーマンスがアップしていったと感じられたし、とても頑張っていたと思いますよ・・」

 いやいや・・決してわたしは交替でグラウンドを後にした選手が、チームパフォーマンスのマイナス要因だったことを云々しようとしていたわけじゃないのですよ。実際に宮間はマイナス要因などではなく、あの状況では、とても素敵な「プラスパフォーマンス」を魅せたと思っています。ただネ・・澤が入ってから「なでしこ」のパフォーマンスがアップしたことは確かな事実だったと感じていただけなんですよ。いや・・ホントに・・

 私だって、宮間あやの実力はよく知っているつもりですからね。(この三人の方々と同様に)彼女の、攻守にわたる献身的な(汗かき)組織プレーだけじゃなく、フリーキック等も、とても高く評価しているのですよ。でも、たしかに、ブーイングされたように、質問の「間」は、とても悪かったかもしれませんね。澤穂希が交替した前後を比べるのではなく、澤穂希が入ってからのパフォーマンスアップの背景要因だけに特化した質問にすれば良かった・・フムフム・・

 「いや・・その・・たしかに佐々木監督としても、あんなふうに前と後を比較させるような質問だったら、あんなコメントを出すしかなかったですネ・・そうなったら、宮間あやが・・フ〜〜・・」

 どうも、コラム最後のまとまりが、うまくつかなくなりそうな感じ(いつも良いまとまりが出来ているなんて言ってないヨ・・念のため!・・あははっ)。まあ、失敗は成功のもと・・だから。かしこ・・

 




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