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2010_ACL_決勝・・ソンナム(韓国)が放散しつづけた闘う意志のパワー・・(ソンナムvsゾブ・アハン、3-1)・・(2010年11月13日、土曜日)

まあ、純粋にサッカー内容を基準に比較すれば、ソンナムの順当な勝利とするのがフェアな評価だろうね。

 「サッカーの内容的に・・」といったのは、もちろん、流れのなかで、どのくらい相手守備ブロックの「穴」を突いていけたのか・・相手守備ブロックのウラに広がるスペースを、いかに効果的に攻略できたのか・・ってな視点のこと。そこで、ソンナムに、明らかな一日の(以上の!?)長があったということです。

 とはいっても、ゾブ・アハンも、守備ブロックの素晴らしい機能性(強固なディフェンス)を基盤に、たまに繰り出すカウンター、そしてセットプレーには、高さとか、ギリギリの勝負所でのパワーや勇気、そして(反則ギリギリの競り合いプレーも含めた!?)粘りマインド(強烈な闘う意志!!)とか、その攻撃には、確かにとても危険なファクターが内包されていた。彼らが、アジアチャンピオンズカップ常連の強豪を抑えて決勝まで進出してきたことを、さもありなん・・と感じた。

 でも、総合力という視点では、やはりソンナムに軍配が上がることは衆目の一致するところでしょう。だから、彼らが、アジアの代表としてクラブワールドカップに参加することになって良かったと思う筆者なのです。

 ソンナムが二点をリードしていた状況で、ゾブ・アハンは(彼らに似つかわしくないほどの!?)人数を掛けて攻め上がっていく。それに対して、余裕を持って「次のボール奪取の勝負所」へ追い込み、そこで、まさにイメージ通りにボールを奪い返し、一発必中の「蜂の一刺しカウンター」を仕掛けていくソンナム。

 この時間帯で、ソンナムが作り出した「カウンターベースの決定的チャンス」は、三回ではきかなかった。でも、そのピンチを生き延び、そして「追いかけゴール」まで奪ったゾブ・アハンも立派。

 (ハナシが前後して申し訳ないけれど・・)ゾブ・アハンも、忠実な粘りディフェンスでピンチをしのぎながら、必殺のカウンターも含む粘りの攻撃を仕掛けつづけて一点を返すなど、最後の最後まで強烈な闘う意志を魅せつづけた。サスガにイランを代表するクラブだ。わたしは、何となく、ゾブ・アハンにも、シンパシーまで感じはじめていましたよ。

 とはいっても、やはりソンナムの地力は並ではなかった。彼らは、「2-1」と追いかけられる状況になっても、まったく動じることなく勢いを再生し、ゲームのペースを奪い返してしまうのです。そこでは、韓国サッカー特有の(!?)『絶対的に勝つぞ!!オーラ』がビンビン放散されていた。日本人には欠けているかもしれない『放散オーラ』。レスペクト・・です。

 そのオーラは、もちろん、攻守にわたる「ボールがないところでのプレーの量と質」に如実に現れてくる。ボールとは反対サイドで決定的フリーランニングを敢行する相手を、キッチリとマークしつづける忠実ディフェンス・・長い距離を全力スプリントで上がり、決定的スペースへ抜け出していく、三人目、四人目のオーバーラップ・・などなど。

 そして、まさに自ら掴み取ったと言える「3点目」を陥れたソンナムが放散しつづける『絶対に勝つぞ!オーラ』。その闘う意志には、一点の曇りもない。それこそが韓国の強さの源泉ということでしょう。

 サッカーはホンモノの心理ゲーム。イレギュラーするボールを足で扱うからこそ、何が起きるか分からない・・だからこそ、瞬間的に変化する状況に応じ、強い意志をもってリスクにもチャレンジしていかなければ良いサッカーなど望むべくもない・・だからこそ、最後の最後には、心理・精神的な(意志の)強さこそが問われる・・

 ソンナムが放散しつづけていた『絶対に勝つぞ!オーラ』という『意志のパワー』を、何となく羨ましく感じていたのは私だけではなかったはずです。

 もちろん「J」でも、(相手にリードされている状況で・・)最後の最後まで諦めずに全力で攻めつづけるといったゲームはあります。でも、細部まで観察したら、(特にボールがないところでのプレー内容に!!)最後の半歩まで「足が出る」という意味で物足りないゲームが多いのも確かな事実なのですよ。

 これは、数字などでは証明できない「微妙な感覚的評価」だけれど、私は、そこにこそ、世界との「最後の僅差」が内包されている・・と、確信しているのです。

 だからこそ私は、その視点で、このゲームには、とても重要で深い「学習機会」が内包されていたと感じていたわけです。まあ・・韓国が放散する意志のパワーというテーマは、今に始まったことじゃないけれどネ。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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