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2010_日本代表メンバーとACLについて・・(鹿島アントラーズvs浦項スティーラーズ, 0-1)・・(2010年5月12日、水曜日)

スゴイね〜〜、強いネ〜〜、韓国。東アジアのグループで、決勝トーナメント一回戦で残った4チームすべてが韓国のクラブということになったのだからネ。

 「以前、韓国ではACLを重視してこなかった・・それよりもリーグ戦の方が何倍も大事だと考えられていた・・それが、ここ数年で方向性が変わった・・それは、クラブワールドカップに、アジアの代表として参加できることが、とても大きな意義があると再認識されたからだ・・だから、リーグの日程を調整するなど、協会も柔軟に対応するようになっている・・」

 浦項の、パク・チャンヒョン代行監督が、「韓国クラブは強いですね・・そのバックボーンについてコメントをいただけませんか?」という私の質問に対して、とても真摯に答えてくれた。パク・チャンヒョン代行監督は、アントラーズとゲームについても、こんなコメントを残しています。

 「アントラーズは、とても強いチーム・・そのチームに勝てて、本当にハッピーだ・・もちろん我々もしっかりと準備をした・・アントラーズについては、事前にビデオで学習したわけだが、最初のころは、強みの方がとても目立つ、バランスの取れたチームという印象だった・・そこで、逆転の発想をすることにした・・あれほど強さが際立つということは、逆に、弱点を示唆していないだろうか・・そして、後半に疲労が目立つようになるとというポイントだけではなく、強力なサイド攻撃があることは、逆に、サイドの守備に弱点があるのではないかというポイントを探し出した・・そして実際に、サイドからの仕掛けでチャンスを作り出すことができたと思う・・」

 代行監督とはいえ、なかなかのものじゃないですか。

 この試合は、立ち上がりの時間帯に浦項がゲームを支配して攻め込むといった流れでスタートしました。でも、時間の経過とともにアントラーズも押し返していく。そんなゲーム展開を観ながら、私のアタマのなかは、「これはエキサイティングでダイナミックな攻め合いになるな・・」という血湧き肉おどる予感で満ちあふれていた。

 ところが、そんな一進一退の展開から、徐々にアントラーズがイニシアチブを握りはじめた時間帯の前半29分にコトが起きてしまうのですよ。浦項が、ゲームの流れからしたら「まさに唐突」という決勝ゴールを挙げてしまったのです。

 それは、(パク・チャンヒョン代行監督が言っていたように!?)サイドゾーンを起点にした素晴らしいコンビネーションから、最後は、決定的スペースへ走り抜けたモッタへ決定的スルーパスが通されたことで生まれた。とにかく、浦項がブチかます「パス&ムーブ」では、ボールがないところで走る選手が、例外なく「最後まで走り抜ける」のですよ。そんな忠実な全力フリーランニングに、強烈な意志の迸(ほとばし)りを感じたものです。

 モッタの放ったシュートだけれど、それは、アントラーズのディフェンダーに当たったことでコースが変わり、アントラーズGK曽ヶ端のアタマを越えてゴールへ転がりこんだ。まあ、ラッキーゴールとも言える。それでも、アントラーズに押し込まれながらも、ココゾッ!の勝負所では、ボールがないところでのダイナミックな人の動きとボールの動きをスムーズに連動させてしまうのだから(ホントに素晴らしいコンビネーション!)彼らの勝負強さは本物だ。

 そしてその後は、一点をリードされたアントラーズが、よりエネルギッシュにゲームを支配していくのです。とはいっても、最後のところで浦項の守備ブロックを崩し切れない。シュートは浦項の二倍も打っている。でも、本当の意味でのチャンスは、2-3本というところだった(後半立ち上がりのスーパーコンビネーションからフェリペ・ガブリエルが放ったシュートは本当に決定的だったけれど・・)。

 そこでの「ゲームの構図」は、全体的な流れを明確に支配するアントラーズが相手ディフェンスブロックを崩していく・・というのではなく、逆に攻めあぐねている(浦項の守備ブロックがアントラーズの攻めをしっかりと抑えている!)・・というのが実際のところでした。

 ・・次の、その次までのパスを予測し、忠実に、インターセプトのために動きつづける浦項の選手たち・・強烈な(韓国的な!?)意志のチカラを感じる・・たしかに後半のアントラーズは、よりエネルギッシュに攻め込んでいったけれど、それでも浦項の集中力は、最後まで途切れることはなかった・・粘り強くダイナミックなマーキング・・次のパスを予測し、ボールがないところでのマーキングも含め、忠実なアクションを積み重ねていく浦項ディフェンス・・素晴らしい・・

 このポイントについて、アントラーズのオズワルド・オリヴェイラ監督もシャッポを脱いでいた。その表情や語り口からも・・残念ではあるけれど・・我々の攻撃を抑え切った浦項の意志のチカラもレスペクトしなくちゃね・・なんていうニュアンスが読み取れた。

 とにかく、浦項プレイヤーが魅せつづけた(感動的な!)強烈な闘う意志に、心からの拍手を贈りましょう。

 そういえば、先週観戦したJ2の「ヴェルディ対鳥栖」戦の会見で、鳥栖の松本育夫監督が、こんなことを言っていたっけ。

 「いま、J1とJ2を合わせて、40人以上の韓国人選手がプレーしている・・そして、そのほとんどが、チームの中心的な存在として活躍している・・その事実が意味するところは、とても重要だ・・我々日本人は、韓国人選手の意識の高さ、意志の強さから多くのものを学ばなければならない・・」

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 ここからは、岡田ジャパンの最終メンバーについて、私のポイントを簡単に整理しておくことにします。

 川口能活を除き、まあまあ「アグリーッ!」といった陣容でした。あっと・・田中達也には本メンバーに入ってもらいたかったけれど、「ドリブラー」について岡田武史は、これまでの実績を踏まえて玉田圭司を選択したっちゅうことなんだろうね。

 ところで、川口能活。事実として、アトランタオリンピックのブラジル戦や、中国で行われたアジアカップ(ジーコ・ジャパン当時)など、川口能活が「神様になった」ゲームは数多い。その意味では、選ばれた多くの代表選手にとっても、まさに「伝説のプレイヤー」でしょ。そんな川口が、それも第三キーパーとして帯同するんだからネ。

 策士の岡田武史は、川口に(頭を下げて!?)頼み込んだに違いない。例えば、練習で、率先してボールや用具を運ぶような「縁の下の力持ち仕事」をこなすとか・・例えば、出陣する選手たちに(考え抜かれた!)気持ちの入った言葉を投げかけるとか・・等々。そんな川口能活を見た、感じた、選手たちが奮い立たないはずない。川口能活の、メンバー決定を受けた記者会見コメントも、大したものだった。

 チームの精神的支柱・・。彼が選ばれたことに関して、そんな表現がつかわれているらしいけれど、要は、人間心理のダークサイドも含めた「様々な心理的刺激ツール」として機能することが期待されるということだね。2006年ドイツワールドカップでの、オリバー・カーンのように・・かな!?

 ということで、コア・メンバーについてだけれど、もう何度も書いているように(先週に行われた独演会でも無理矢理コメントさせられた・・あははっ・・)わたしが描いている基本的な先発布陣とバックアップ要員の機能コンテンツは、こんな感じです。

 長友、闘莉王、中澤、内田のフォーバックの前に、アンカー(前気味リベロ)として稲本が入る・・その前に、攻守にわたるダイナミック・カルテットとして、両ナカムラ、遠藤ヤット、そして長谷部が入る・・ワントップは、最前線の汗かき、岡?・・。

 もちろん、相手最終ライン背後の決定的スペースへ飛び出していくのは誰でもいい。ということで、稲本の前に入る「最高の守備意識を備えた!!」五人は、ポジションチェンジを繰り返す「ゼロトップのダイナミック・クインテット」っちゅうイメージですかネ。

 それをベースに、試合展開や状況の変化に応じて選手を入れ替えたり交替させたりする。例えば、ポストプレイヤーの(ヘディングも出来る)矢野貴章を入れたり、絶対に点をとらなければならない状況に陥ったら、本田圭介や森本を入れたり・・などなど。

 守備でも中盤でも、安定した(計算できる)パフォーマンスの「ユーティリティー・コンビ」、阿部勇樹と今野泰幸は、闘莉王や中澤がケガなどで潰れた場合のバックアップだけではなく、中盤でも様々な機能を果たしてくれるはず。とはいっても、彼らは「器用貧乏」などではなく、本格的なバックアップとして、誰もが頼もしく感じる「縁の下力持ちプレイヤー」なのです。

 サイドバックのバックアップは、駒野がいる、もちろん今野も阿部もオーケー。攻撃的なミッドフィールダーとして、異なったプレータイプが必要になったときには、玉田圭司がいる、松井大輔がいる。

 こう考えると、代替の効かないプレイヤーは、稲本潤一ということになるかもしれない。もちろん中村俊輔や遠藤ヤットも「そのレベル」の選手だけれどネ。あっと・・それと、左サイドの長友佑都も、実は代替の効かない選手かもしれない。これからは、日本代表の「ロベカル」って呼んじゃおう。

 何か・・、私が期待したほとんどのメンバーが選ばれたことで、大変多くの方々の期待にもかかわらず(私のHPへのアクセス状態にはものすごい勢いがありました)まったくコメントする気が起きなかったという体たらくでした。スミマセン・・

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓しました。4月14日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定したらしい。フムフム・・。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。岡田ジャパンの楽しみ方・・という視点でも面白いかもしれません・・たぶん。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 




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