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2007_ヨーロッパの日本人・・継続こそパワーなり・・高原直泰・・(2007年5月6日、日曜日)

ドカンッ! そんな音が響きわたるような爆発ダッシュ。高原直泰の決定的フリーランニングには、本格感が満載でした。

 ブンデスリーガ第32節(この試合も含めて残り3試合)、アイントラハト・フランクフルト対アレマニア・アーヘン戦。両チームとも「降格リーグ」真っ只中ということで、そこで展開された肉を切らせて骨を断つという闘いにも、最高レベルの緊張感があふれていました。

 特に、リーグ前期にアーヘンと戦った試合でハットトリックを達成した高原直泰。彼に対するマークは殊の外厳しかった。ただ高原は、そんなハードなマンマークをものともしない勢いに満ちた爆発ダッシュを繰り返すのですよ。

 そこでのキーワードは、何といっても「スペース感覚」。

 後方スペースへ戻りながらタテパスをキープし、相手ゴールへ向かう次のリスキーな展開へチャレンジしていくポストプレー・・仕掛けの起点をイメージしたタテのスペースへの飛び出し(仕掛けパスのレシーブ!)・・シュートポジションへ入り込む決定的なスペース取り・・等々。とにかく、常にスペースでパスを受ける(スペースを活用する)というイメージでプレーしつづける高原直泰なのですよ。

 決して最前線に「張り付く」のではなく、縦横無尽に動き回るなかで、しっかりとボールにタッチし(味方も高原を信頼しているからタテパスを付ける!)、シンプルに展開したり、勝負ドリブルで仕掛けていったり。まあ、シュートまで行くようなドリブル勝負では、最後はパワーとスピードで優る相手ディフェンダーに潰されてしまうケースが多いけれど、ピンポイント(決定的スペース)でのパスレシーブ勝負では、かなり良いカタチで(クロスボールなどの)勝負パスを受けられるようになっている。スペース感覚が発展しつづけているということでしょうかね。

 左サイドでタテパスを受け、しっかりとキープしながらタメを演出する高原・・その外側をシュトライトが抜け出していく・・すかさず、シュトライトがイメージするタテのスペースへ仕掛けパスを出し、自身は、脇目もふらずに相手ゴール前へ一直線!・・もちろんディフェンダーは執拗にマークするけれど、身体全体を駆使してスペース取りのせめぎ合いを展開する高原・・そして最後は、ニアへ飛び出すという一瞬のフェイントで相手を惑わし、スッとファーポストのスペースへ抜け出し、まったくフリーでシュートポジションへ入っていく・・。そんなボールがないところでの勝負シーンが続出でした。頼もしい限りです。

 要は、最終勝負シーンでは、勝負パスや勝負クロスに対する「待ち」ではなく、常にスペースをイメージしているということです。だから、最終勝負の直前のタイミングでは、止まって状況を判断し(最終勝負イメージを脳裏に描写し)、そして最後の瞬間に「爆発」する。

 もちろん、止まった状態の高原に送られてきたパスをシュートするという場面もあるけれど、多くは、常に勝負スペースをイメージしながら動きつづけ、そして最後の瞬間も、その(動きの)流れのなかでシュートまでいく。

 もちろん、勝負のスペース・アクションのほとんどはムダ走りに終わるけれど、そこに確かな意図と強烈な意志があるからこそ、それは「クリエイティブなムダ走り」なのです。だからこそ、何度ムダに終わっても、そのスペースへの動きが減退することはない。だからこそ、ゴールを生み出すことが出来る。

 この試合で挙げたゴール。シュトライトのフリーキックがバーに当たって跳ね返ってくるところ(スペース!)にピタリと走り込んでヘディングで決めた。まさに、優れたスペース感覚からの「賜物ゴール」でした。

 いまの高原のプレーには、そんな心理的な善循環が回りつづけている感じます。要は、継続こそパワーなり・・。高原直泰は、その普遍的な概念を、ストライカーとして自分のものにしつつあると思うのです。

 




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