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2007_ACL(アジア・チャンプリーグ)・・ある感慨(環境こそが人を育てる!)・・そして、プロ同士のビジネスパートナーシップ・・(フロンターレvs全南ドラゴンズ、3-0)・・(2007年4月25日、水曜日)

フロンターレが、内容的にも順当に勝利を収めたというゲーム。短く、二つだけテーマを抽出しました。まず、わたしの感慨・・。

 こんなことを書くと時代錯誤もはなはだしいとバカにされるかもしれないけれど、もう50年近くサッカーと関わっている身なので(サッカーは小学生のときからはじめたのです!)、お許しアレ。というのも、フロンターレの・・というよりは、日本人選手の立派なプレー振りに、深い感動を覚えていたのですよ。

 実力的にはフロンターレが圧倒して当然だし、まさにそのようなゲーム展開になったわけだけれど、どうも、脳内の引出に深くにしまい込まれていた「昔の感覚」が蘇(よみがえ)ってくることで、感慨深くグラウンド上の現象を見つめていたのです。

 久しぶりの「韓国」との対戦だからね。ゲームを観ているなかで、つい15年〜20年くらい前までの感覚がよみがえってくるのですよ。要は、当時の日本チームのほとんどが、サッカー的な実力は互角(以上!?)なのに、韓国選手の強烈なアグレッシブプレーにビビッてしまうことで心理的な悪魔のサイクルにはまりこんでしまうという「ゲームの構図」が脳裏をよぎるということです。

 ただ、このゲームで展開されているのは、「それ」とはまったく対照的な現象。局面のプレーで、まったく臆することのない日本人選手の競り合いを観ながら、ものすごく頼もしく感じ入ったというわけです。時代錯誤で、ホント、スミマセン。

 韓国だけではなく、中東のチームに対しても、日本は完全にコンプレックスから解放され、しっかりと実力を発揮できるようになっています。今回のドイツワールドカップへ向けた予選でも、まさに実力どおりのサッカーを展開し、個人プレーばかりを前面に押し出す中東チームを内容で凌駕していた。

 もちろん「J」がスタートしたお陰です。環境こそが人を育てる・・のです。

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 次のテーマは、中村憲剛と、監督と選手のビジネスパートナーシップ。

 試合後の記者会見で、関塚監督に質問しました。「中村憲剛ですが、わたしの印象では、このところ、中盤の底でゲームメイクをする方にイメージのウエイトを置いていると感じるのですが、(もしわたしの印象が間違いではない場合)それは関塚さんの指示なのですか・・それとも・・」。

 ニヤッと微笑んだ関塚さん。しっかりと私と視線を合わせながら答えてくれました。「中村には、自分で判断してくれと言っている・・たしかに、中盤の底でボールを配球するというイメージでプレーすることも多いと思う・・そして、底をベースに、出ていかなければならないところは、しっかりと飛び出している・・よいプレーをしていると思う・・」。その言葉に、憲剛に対する信頼感があふれ出ていましたよ。

 たしかにその通り。憲剛は良いプレーをしている。

 まず守備。中盤の底で、チェイス&チェックはもちろんのこと、必要とあれば、前線へ飛び出していく相手の二列目を、最後までマークしつづけたりする。また、インターセプトや相手トラップの瞬間を狙うボール奪取勝負でも無類の強さを発揮する。小兵なのに、あれだけ効果的なボール奪取勝負を展開できるのだから驚きじゃありませんか。要は、身体の使い方が上手いということ。そのために、彼も一生懸命に工夫を積み重ねたに違いありません。レスペクト!!

 そして攻撃。ボールのデヴァイダー(分配役=ボールの動きのコア)として効果的に機能するだけではなく、関塚さんが言うように、出ていかなければならないところは、しっかりと飛び出していくのですよ。そして、最終勝負の起点になったり、自らシュートを打ったりする。

 前半25分。中村からの絶妙のスルーパスが、左サイドバックの村上に通り、そこから戻り気味のクロスがジュニーニョ(マギヌン!?)に合ったプレー。その直後には、ジュニーニョとのコンビネーションで展開し、最後はジュニーニョへのスルーパスを決めただけではなく、そこからの折り返しを、完璧フリーでシュートする(わずかに右ポストを外れた!)。

 後半では、12分には、フリーキックを蹴ると見せ掛けて抜け出し、ジュニーニョからのタテパスを受けてシュートまでいったし、その後は、25分(チョンへのタテパス)、27分(ボール奪取から、マギヌンへの一発タテパス)と立てつづけにカウンターを演出してしまう。それも、自らボールを奪い返して・・。いいね、ホントに・・。

 ところで、「中村には自分で判断せよと言っている・・」という関塚さんの言葉。それには、非常に深い意義があると思います。要は、関塚さんが、中村憲剛という、グラウンド上での「プロとしてのビジネスパートナー」を作り上げたということです。選手を信頼し(彼らに、監督から信頼されていると体感させられることも大事な能力!)、ビジネスバートナーとして認められる。それもまた、プロコーチとしての大事な資質でありキャパシティーの高さの証明なのです。

 




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