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2007_ヨーロッパの日本人・・CL決勝トーナメント、セルティック対ミラン・・世界トップの壁にぶち当たった中村俊輔・・(2007年2月21日、水曜日)

個人のチカラをベースにしたチーム総合力の差は歴然でした。何せミランは、高い個人のチカラが、攻守にわたって「組織的」にもうまく機能していますからね。ホームにACミランを迎えた中村俊輔のセルティック・グラスゴー。ホームとはいえ、やはり主導権はミランに握られてしまうのですよ。

 この主導権という言葉のバックボーンだけれど、それはボールポゼッション(ボール保持率)のことじゃありません。ボールポゼッションだったら、むしろセルティックの方が良かった!? そこには、シュートを打つという攻撃の目的を達成するために、ドリブル勝負だけではなく、いかに効果的にボールを動かすのかという視点もあるのです。

 要は、いかに上手くスペースを使えているのかという視点。もちろん、GKと最終守備ラインの間に広がる「決定的スペース」をめぐる攻防となったら、今度は「それ」が、いかに上手く相手最終ラインのウラを突いていくのかという表現に変わるわけです。

 最終ラインのウラ・・。セルティック最終ラインは、立ち上がりから何度も決定的スペースを突かれてしまいました。

 フラットなラインを構成するセルティックのウラを突き、ジラルディーノが、スッと抜け出し、そこへカカーから素晴らしいスルーパスが決まる。そのときのセルティック最終ラインは、ジラルディーノ「だけ」抜け出させてオフサイドを取ろうという「ライン・ストップ」を仕掛け、それが失敗したわけだけれど、もう一つのシーンでは、完璧に、ディフェンダーの「意識のウラ」を突かれてしまった。

 中盤の高い位置でボールをキープするミラン選手(多分ピルロ)・・その見事なキープに、守備に入っているセルティック選手たちの意識と視線が吸い寄せられる・・その「意識の空白」を逃さず、逆サイドから、一人のミラン選手(グルクフ)が決定的スペースへ抜け出す・・セルティック最終ラインは、その動きにまったく対応できない(気付いてさえもいなかった!?)・・そしてグルクフに、まったくフリーのヘディングシュートをブチかまされてしまう・・ってな具合。

 このシーンは、まさにミラン的なチャンスメイクでした。個のチカラを最大限に活かした「タメの演出」と、その間隙を突いた(ボールがないところでの)決定的フリーランニング(=忠実な組織プレー)の組み合わせ。ゴールにならなかったのは奇跡でした。もし決まっていれば、まさに「イタリア的な決勝ゴール」ってなことになったんだろうね。まあ、もしゴールが決まっていたら、その後は、セルティックが遮二無二仕掛けてくるだろう攻撃を、余裕をもって受け止め、クールなカウンターから追加ゴールをどんどん決めてしまうってな展開になっていただろうけれど・・。

 とにかくミランは、ココゾという瞬間には、全員が、ボールのないところでアクションを起こすのです。それまでは、徹底した「ポジショニングバランス・サッカー」を展開しながら、最後の瞬間に「爆発」する。まさに、ポジショニングバランスとバランス・ブレイク(最終勝負)の素晴らしいメリハリっちゅうわけです。

 ちょっとミランのことを書きすぎた。とにかく、そんなゲーム展開のなかでは、中村俊輔も、存分にチカラを発揮できるはずがない。またフリーキックでも目立ったチャンスを作り出すことが出来なかった。

 組織コンビネーションで仕掛けていこうとしても、(ボールがないところで)忠実なミランのディフェンスに、「次のパスレシーバー」が潰されてしまう。また単独で仕掛けていこうとしても、すぐにディフェンダーに集中されて潰されてしまう。まあ、何度かは、「かわす」ドリブルで突っ込んでいけたし、最後の時間帯には、ドリブルから(創造的なタメから)決定的な「斜めラストパス」を送り込むなんていう・・。

 まあ、世界トップの壁にぶち当たったという感がある中村俊輔だったけれど、全体的な(ボールがないところでの)運動量は高みで安定しているし、守備参加(守備の起点プレー)もまあまあだった。また、「そんな展開」でも、めげることなく最後まで主体的に(積極的に)プレーしつづけたことは評価できる。

 そんな展開をみながら、中村俊輔がミランでプレーしていたら(他の強豪クラブでプレーしていたら)どうだろう・・組織プレーが安定するなかで、実効あるチャンスメイカーとしての存在感を誇示できただろうか・・なんてことに思いを馳せていました。さて・・。

 




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