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2006_ワールドカップ日記・・オーストラリアが展開する「ソリッド・サッカー」の実効レベルはホントに高いよね・・(2006年5月26日、金曜日)

オーストラリアが展開するソリッドなサッカー。さて、この「堅さ」をどのように表現したモノか・・。ここでは、昨日メルボルンで行われたオーストラリア対ギリシャのテストマッチを観た感想を書きつづることにします。

 ソリッドなサッカー・・。まあ、例によってまずディフェンスから入ることにしましょう。ワントップを張るビドゥーカを除き、まさに全員が、次のボール奪取プロセス(要は、守備)に、全力で参加していきます。まさに主体的な忠実ディフェンス。そんな積極的なプレー姿勢を基盤に、グラウンド全面にわたって、常に数的に優位な状況を作り出してしまうオーストラリアなのです。もちろんその背景には、ボールをこねくり回した末に横パスをつなぐなど、ギリシャの攻撃があまりにも「遅い」ということもあるけれどね(バケーションを控えた彼らだから特に遅い!?)。

 それにしても、チームに深く浸透した守備意識の高さじゃありませんか。忠実でダイナミックなチェイス&チェックを絶対的な基盤に、互いのポジショニングバランスの維持を意識しながら、チャンスを見計らった「集散」を繰り返すオーストラリア守備陣・・ってな具合。それは、守備の起点をベースに、協力プレッシングと次のポジションバランスを素早く効果的に繰り返す・・なんていうふうにも表現できますかね。そして「1対1」でも無類の強さを魅せつづける強者たち。要は、個のチカラが、組織的な守備コンビネーションのなかで存分に活かされている・・ということです。これもまたヒディンクのウデに因るということなんだろうね。

 ヒディンクと言えば、徹底したスカウティングで有名です。要は、準備の達人。相手の強みと弱みを徹底的に分析し、丸裸にしてから選手たちに「分かりやすく」説明する。そこでは、もちろんクレバーに編集された「映像ツール」を効率的に活用します。ヨーロッパの現場で、彼のことを「編集ビデオを駆使するイメージトレーニングの天才」なんて呼ぶのもうなづける。

 例えば、相手チームの仕掛けのキッカケが、ある選手のドリブル突破だとします。そんなドリブラーに対してヒディンクは、その(ドリブラーの)タイプと癖を徹底的に分かりやすく「映像化」し、選手たちに、何度も、何度も、繰り返し見せつづけるのですよ。また、後方のある選手がボールをもったときに最前線が動き出すという「イメージシンクロプレー」も徹底的に分析しちゃう。そんな映像を繰り返し見せられたら、いつか、「もう大丈夫・・この相手、このやり方には絶対にやられない・・」という確信が深まっていくはずです。イメージトレーニングの天才、ヒディンク・・か・・。

 そんな堅牢な守備に対して、オーストラリアの攻撃だけれど、それもまた、オーソドックスという意味で「ソリッド」だよね。技術的には大したことはないけれど、それでも、しっかりと止め、しっかりと正確に蹴ることができるし、トラップ&コントロール&パスのタイミングやリズムを選手たち全員がシェアしているから、ボールがないところでのパスレシーブの動きにも勢いが乗ろうというものじゃありませんか。

 活発なボールがないところでのパスレシーブの動きをベースに、しっかりとシンプルなリズムでボールを動かす・・そのシンプル攻撃は、身体の大きさやスピード、そして持久力といったフィジカル能力の高さに支えられている・・決して「上手いこと」をしようなどとは考えない・・しっかりとサイドのスペースも活用して広く攻める・・そして最後は、あくまでもシンプルにクロスを送り込んだり、ビドゥーカのポストプレーで二列目、三列目が決定的スペースへ飛び出していったり、中距離シュートを放ったり、はたまた(しっかりとイメージがシンクロした!)バックパスから、ダイレクトで、ドカン!とキャノンシュートをブチかましたり・・。

 とにかくオーストラリアの攻撃は、シンプルであるからこそ非常に危険だと感じましたよ。それも、キューエル、アロイージ、ケーヒルといった攻撃の主力が欠場していたにもかかわらずの危険度の高さだからネ・・。

 



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