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2006_ワールドカップ日記・・若手とともに本物のブレイクスルーを果たしつつあるドイツ代表(ドイツ対スウェーデン、2-0)・・(2006年6月24日、土曜日)

いいね、ドイツ。これまで何度も触れた、ドイツ全土から沸き上がってくるスピリチュアルエネルギーをバックに、どんどんと発展していると感じますよ。その発展レベルは、既に「ブレイクスルー」の領域に入った!? さて・・。

 イレギュラーするボールを足で扱うという不確実な要素が満載されたサッカー。状況が瞬間的に変化しつづける。そこでは、個人が、責任をもって対応しなければならない。だからこそ、本物の心理ゲームといえるわけだけれど、今のドイツ代表は、そのメカニズムを強力にバックアップする心理・精神的エネルギーを受けているというわけです。

 その心理・精神的なエネルギーのバックボーン。それが国民のバックアップがあることは言うまでもありません。この試合でも、スタンド一杯のドイツ人サポーターが放散するエネルギーはレベルを超えたものでした。記者席で観戦していた私も、何度も鳥肌が立つ感覚をおぼえた程でした。

 それを象徴する町中での現象が、(これまた既に何度も紹介した)クルマや家の窓に掲げられているドイツ国旗。「こんなことは生まれてはじめてだよ。俺たちは第二次世界大戦での暗い過去を持っているからな、国家主義的な雰囲気には敏感なんだよ。とはいっても、そこはワールドカップだからな、そんな自主規制が完全に無くなったのかもしれない。ドイツに敏感な連中も、ことサッカーについては、誰も文句を言わないというわけさ」。先日も登場してもらった友人の商工会議所ディレクター、ラルフ・ダウメーターが、そんなことを言っていました。

 そして、強力なスピリチュアルエネルギーがドイツの隅々から沸き上がり、それがドイツ代表チームに集約されていくのです。選手たちの気合いも天文学的なレベルまで高揚するのも道理じゃありませんか。

 今、ドイツ代表は覚醒したと思います。そして、勝負マッチを重ねるごとに急速に進化しはじめている。自分たちには上手いことはできない・・やることを決めて、それに徹底する・・そして最後は闘う意志こそが勝負を決める・・ってな具合。そして、課題だった守備も、ゾーンからマンマークへ移行する「ブレイク」のタイミングを早めることで安定させ、ダイナミックなプレッシング守備とクロス攻撃という徹底サッカーでイメージが統一されていくのですよ。

 決勝トーナメント一回戦でスウェーデンに完勝したドイツ代表。彼らの、トーナメントを通じた発展の背景には、クリンズマン監督が積極的に若手選手をチームに取り込んでいることもあるに違いありません。だからこそ、調子の波に乗ったときには爆発的なエネルギーを生み出せる。彼らは、高揚しつづけるチームとともに、本物の「ブレイクスルー」を果たすのかもしれない・・。そんな期待感が高まってきます。その期待の先に、1970年代の、美しく勝負強かったドイツの復権があることは言うまでもありませんよね。

 さて、徹底サッカー。その絶対的なベースが、高い守備意識にあることは言うまでもありません。攻撃的なプレッシングサッカー。それを実現するための大前提というわけです。そしてなるべく高い位置でボールを奪い返し、「徹底」オフェンスを繰り出していくのですよ。選手全員が共有している仕掛けイメージを基盤にしてね。

 基本的には、サイドからの仕掛けから最後はクロスという攻撃イメージに、中距離シュートとセットプレーも加わります。でもこの試合では、クローゼへの「クサビ」の仕掛けタテパスが目立ちに目立っていた。クローゼは、そのタテパスを、相手の強力なマークプレッシャーをものともせずに正確にコントロールしたり、胸やヘッドで正確なダイレクトのバックパスを送ったり。とにかく、この試合でのドイツ代表は、そんな新しい(!?)イメージを加えたと感じました。もちろん前からやっていたことだけれど、クローゼの調子が上向いていることで、その仕掛けパターンを、より強力に推し進めたということです。

 もちろんサイドへ開くクローゼへのタテパスも多い。とにかくクローゼは、ドイツの仕掛けで完璧な「スピアヘッド(槍の先)」に成長しましたよね。この日ドイツが挙げた2つのゴールにしても、そのゴールは両方ともポドルスキーだったけれど、それを演出したのはクローゼでしたからね。彼が、試合のMVPを獲得したのも当然の流れでした。

 ゴールをリプレイしたら、こんな感じになりますかネ。まず前半4分の一点目。最後方でボールを持ったフリングスからの(イメージがシンクロした)ロングボールが、最前線に張るクローゼへ飛ぶ・・しっかりと相手を抑えてポドルスキーへ「落とす」クローゼ・・ポドルスキーが、バラックへバックパスを送り、そこから再び(タテへ走り抜けようとする)クローゼへの素晴らしいスルーパスが通る・・そのまま抜けだしてシュートを放つが、最後はGKと交錯してしまうクローゼ・・そのこぼれ球をポドルスキーがシュート・・ってな具合。

 ここでの最後のバラックからの決定的なスルーパスだけれど。グループリーグ最後のエクアドル戦の二点目も同じようなパターンだったね。クローゼとバラックの間には、スルーパスと決定的フリーランニングの「あうんの呼吸」があるということです。あっと・・これも、徹底パターンの一つですかネ。

 また前半12分の二点目シーン。左サイドでボールを持ったポドルスキーが、クローゼへ強烈な勢いのパスを出す・・上手くコントロールしたクローゼが、左へドリブルで進み三人のスウェーデン選手を引きつける・・その間に、ポドルスキーが回り込んで、クローゼが作り出したスペース走り抜け、そこへクローゼから、バックパス気味の(置くような)ラストパスが出た・・そして、ポドルスキーのダイレクトシュート一発!・・ってな具合。必殺仕事人、クローゼ・・ってな具合。

 それ以外にも、この試合では、強烈な中距離シュートも目立ちに目立っていた。バラック、シュヴァインシュタイガー、フリングス・・等々。でもやっぱりバラックの中距離シュートは、レベルを超えている。パンチ力!? そうだね、振りが小さく鋭いから、相手守備もタイミングを合わせにくいだろうし、とにかく、シュートが強烈なんですよ。放り込み気味のクロスも含め、そんな武器があるドイツだから、仕掛けで「詰まる」ことはありません。仕掛けがつまり気味のなったら、ハイボールを放り込んだり、中距離シュートをガンガン飛ばしたりと、楽に仕掛けの変化を演出できるからね。それもまた、選手たちの仕掛けイメージがシンクロしているからこそ繰り出せるというわけです。

 ドイツ代表が発展をつづけていることを象徴する若手のヒーローは、クローゼ、シュヴァインシュタイガー、ポドルスキー、ラームと日替わりです(まあクローゼは既に28歳だけれどネ)。彼らは、このまま「本物ののブレイクスルー」を果たすに違いない・・そしてそのエネルギーが、チーム全体の「ブレイクスルー」も達成させてしまうかもしれない。楽しみで仕方ありません。
 



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