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2006_ヨーロッパの日本人・・中村俊輔・・イビツァ・オシムという「機会」・・(2006年8月28日、月曜日)

中村俊輔が、第五節のハイバーニアン戦で、攻守わたる運動量が豊富な気合いの入った自己主張プレーを魅せてくれました。クロスボールへ全力で飛び込んだり、サイドを押し上げる相手を最後の最後まで追いかけ必殺のタックルを見舞ったり(ボールは見事にタッチへ!)。それだけではなく、全力ダッシュで20-30メートル戻り相手のマークの入るなんていう守備まで魅せてくれる。

 攻撃でも、ボールなしの動きが活性化していることで(より良い体勢でパスを受けられることで!)、ボールを持ったときの「魔法」も冴えまくっていた。それも、素早いタイミングのシンプルパス(そしてパス&ムーブ!)と、ボール絡みの勝負プレーの使い分けにメリハリがあるから実効レベルも高い。

 ボール絡みでは、たしかに相手をスピードで抜き去る(相手を置き去りにする)なんていう爆発的なドリブルは無理だけれど、鋭い変幻自在のフェイントを駆使してマーク相手を振り回し、質の高い勝負パスを供給したり、自らシュートにチャレンジしたり。もちろん、セットプレーだけじゃなく、最終勝負シーンで演出する「タメ」もインターナショナルクラス。

 そんな中村のプレーを観ていて、やはりオシム日本代表への組み込みをイメージしないわけにはいかない湯浅なのですよ。オシムさんは、中村を使うためには、攻守の汗かきを増やさなければならなくなると思っているだろうし、もちろん中村俊輔自身も、そんなオシムさんの考えを知っているはずです。

 だからこそ中村俊輔は、強烈なアピールをはじめた。「オレはしっかりと汗かき守備も出来ますよ・・少なくとも、チェイス&チェックを忠実にこなせば守備の起点にはなれますよ・・攻撃でも、パスレシーブの動きもしっかりと実行できるし、ボールを持っても、決して仕掛けの流れをスピードダウンしたりしませんよ・・でも、良いカタチでボールを持てば、勝負パスやシュートなど、タメからの効果的な個人勝負を仕掛けていけますよ・・スピードだけではなく、落ち着いた状況からの仕掛けも繰り出していければ、攻撃にも変化をつけられるでしょ・・それが効果的だったら、チームメイトも認めて、それをうまく活用しようとするでしょ(中村の勝負イメージに合わせたボールなしの動きを繰り出していくでしょ)・・この試合でのプレーを観てくれれば、オレのプレーが組織プレーを阻害しないことは認めてくれますよネ・・」などなど。

 もちろん中村俊輔自身は、オシムさんへのアピールだけじゃなく、間近に迫ったチャンピオンズリーグ本戦をもイメージしているんだろうけれどネ。さて・・

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 とにかく、個の才能たちが、攻守にわたって(特にボールがないところで)しっかりと走りはじめることは、日本サッカーの将来にとって決定的に重要な意味があるのですよ。個の才能といっても、日本の場合は、インターナショナルのフィールドで「決定的な仕事」をこなせるレベルにあるわけじゃないからネ。だからこそ、攻守にわたって優れた組織プレーを機能させるために、しっかりと走らなければならないのです。

 日本サッカーでは、クリエイティブな無駄走りを積み重ねていくこと(=主体的に考えつづけること)の重要な意義を、ユース世代から深く共有する必要があります。そんな環境さえ整えば、才能に恵まれた若い選手たちが「本当の意味」で走りはじめることで、サッカーの進化スピードも格段に高まっていくはずです。だからこそ、イビツァ・オシムという世界の名将が日本代表の監督に就任し、様々な重要なメッセージを発信することの価値は計り知れないほど大きいのです。

 上手い選手たちが、攻守にわたり、ボールがないところでのクリエイティブな無駄走りを積み重ねていく。その忠実な走りこそがポジティブな自己主張だという共通認識が徹底している「サッカー環境」。まあ、志向するイメージとしてはアルゼンチンですかネ。




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