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2006_ヨーロッパの日本人・・良いゲームを展開した中田英寿(久しぶりに結果も付いてきた)・・また、高原直泰と中村俊輔についても少しだけ・・(2006年4月24日、月曜日)

つい数日前のレポートで、「久しぶりの中田・・相変わらず高質な、意志の量と質を魅せつづけている・・でもそれが、うまくゲームの流れとかみ合わない・・最前線への放り込みが多いボルトン・・彼のアタマの上を行き交うボール・・それでも、中田の調子自体は悪くない・・」なんていうことを書いたけれど、その中田英寿が二試合つづけて先発メンバーに名を連ね、アシストを決めるなど活躍した・・らしい。

 昨夜から今日の早朝にかけて所用で外出していたから、今朝になってそのことを知りました。もちろん録画はしておいたから、早々に「実際の現象コノテーション」を確認しようとビデオを観はじめたわけですが、すぐに、この試合での中田は、攻守にわたって、たしかに上手くボールに絡めている(そしてボール絡みでも実効あるプレーが展開できている=結果を残せている)と感じた次第。例によっての、ボールがないところでのアクションの高質な「量と質」。それをベースに、タイミングの良いボールキープや、状況を正確に把握しているからこそ大きな展開(サイドチェンジや最前線へのスペースパス)、はたまた鋭いタテパスを織り交ぜたコンビネーションを繰り出していく。なかなかの存在感でした。

 そんな存在感の背景ファクターだけれど、彼がポジションを少し「上げ気味」したからなのか・・後方からのロングボールをイメージしてポジショニングできていたからなのか・・中盤の底に、ボールをしっかりと動かすイメージを持ったイヴァン・カンポが入ったからなのか(まさに、ボールと状況のディヴァイダー=divider)・・それとも、単純に、この試合でのチャールトンの調子が悪く、中盤でのゲーム支配がうまく機能したからなのか(高い位置でのボール奪取が機能しているからこそ、中田英寿が得意の仕掛けコンビネーションも増える)・・なんてことにアタマを巡らせていた湯浅でした。

 まあ、この試合で中田英寿が積み重ねたグッドパフォーマンスのバックボーンは、「それらファクター」の総体ということかな・・。とにかく、久しぶりに中田が、「自身の仕掛けイメージ」をしっかりとグラウンド上に投影できていたことに、ホッと胸をなで下ろしていた湯浅でした。これからは、強い相手に押し込まれた状況でも、ロングボールを最前線へ放り込むという攻撃の流れのなかに、しっかりとした中盤での組み立て「も」ミックスしていくプロセスのイメージリーダーとして存在感をアップさせて欲しいと願っています。

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 さて、厳しい状況で登場した(0-1で、アウェーのレーバークーゼンにリードされていた後半16分に交代出場した)高原直泰。たしかに「表面的な見え方」はアピールに乏しかったけれど、一つひとつのプレーには、質実剛健のコンテンツが詰め込まれていましたよ。

 味方からの鋭いタテパスを、カチッという音がするくらい素早く正確にコントロールし、そのボールを、例の「二軸動作」でスッ・スッと運んで(軸足を入れ替えずに、同じ足で二つめ、三つ目のボールタッチをすることで相手のアタックタイミングを外してボールをスペースへ運んでしまうプレー!)、シュートを放ったり、逆のファーポストスペースへ決定的クロスを送り込んだり、はたまたそのままドリブルでペナルティーエリアへ進入してシュートまで行こうとしたり(途中でアイウトンに邪魔された!)・・。

 まあ、途中出場ということで、とにかく同点に追いつくことが高原に与えられた最大のミッションだったから、あのように最前線に張り付くのも仕方なかったのだろうけれど、わたしは、もっと「前後の激しい動き」を入れた方が、より効果的にスペースを使えるはず(より良いカタチでボールに触れるはず)だと感じていました。相手のレーバークーゼンが、完璧にカウンター狙いで、下がって守備ブロックを厚くしていたわけだからネ。少し下がり、よりフリーな状態でボールをもったところから仕掛けの流れをスタートするという発想「も」、変化という視点で有効だったに違いないと考えていたわけです。ここでも、「急がば回れ」という知恵が効力を発揮するっちゅうことですかネ。

 とにかく、高原直泰「も」、決して調子が悪いというわけではないことだけは確かな事実です。とはいっても、スペース感覚とか、ギリギリの競り合い感覚とか、ドリブル勝負の感覚とかいった実戦での感性は、徐々にその「輪郭」がボケてくるはず。だからこそイメージトレーニングを欠かちゃいけない。様々な目的に応じてクレバーに編集されたビデオに繰り返し「入り込む」ことで感性を研ぎ澄ますという地道な努力こそが、成功への唯一の道なのです。

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 さて最後は、後半16分に、ロイ・キーンと交代して出場した中村俊輔。(まあ、入ってから10分程度だったけれど・・)相変わらずの魔法使いぶりを披露してくれちゃいましたよ。彼が入ったことによって、セルティックの人とボールの動きが大幅に活性化したし、彼を中心にしたセルティックの仕掛け内容も格段に危険なものへと変容していったのです。攻守にわたるボールがないところでの汗かきプレーもしっかりと意識しているからこその実効パフォーマンス。彼の場合は、「魔法とシンプルプレー(汗かき)の高質なバランス」という表現だって当てはまるかもしれないね。

 彼のプレーを綴ったメモは、こんな感じかな・・。

 セルティックのチームメイトたちは、常に中村を捜している・・だからこそ中村は、パスを受けても、まずシンプルにボールを動かすというイメージでプレーできる・・そして「ワンのシンプルパス」を出した後の忠実なパス&ムーブ・・そんな動きがあるからこそ、動いたところに、正確なリターンパスが戻されてくる・・

 ・・この、緩やかなワンツーのコンビプレーについて、この試合のテレビ解説を担当していた川本治さんが、「このシンプルなボールの動きがいいんですよ・・これでリズムが出ますからね・・」と言っていた・・まさに、その通り!・・サッカーの内容を決めるリソースは、その全てがイメージ・・そのイメージの、チーム内での共有レベル(有機的な連鎖のレベル)を高揚させることで、よりスムーズに人とボールが動きはじめる・・逆に、少しでも、様々な意味を内包する「ボールの動き」が停滞したら、それが選手たちの脳内イメージ描写のアクティビティーをもネガティブに浸食し、とたんに組織的な動きが減退してしまう・・グラウンド上の現象は、その全てが、選手たちが主体的に描写するイメージの連鎖(効果的なリンク)の結果だから・・もちろんマラドーナの場合は違うけれど・・

 ・・あっと、またまた蛇足が・・。とにかく、中村俊輔もまた、様々な意味を内包する「フォーム」を高い次元で維持しているということです。




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