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06_ヨーロッパの日本人・・チーム内で確固たるポジションを築くための実効プレーの積み重ねというテーマ・・中田英寿・・(2006年3月6日、月曜日)

遅ればせながら中田英寿についてもショートレポートを・・。

 メンバーが揃い、本当の意味でのポジション(存在感)争いが激化するボルトン。そんな厳しい環境は中田英寿の望むところでしょう。アフリカ選手権がおこなわれていた「競争の間隙」をうまく活用し、着実に以前のフォームに近づきつつあった中田。日本代表とボスニア・ヘルツェゴビナとのフレンドリーマッチでも、例によって、攻守にわたるパワフルな実効パフォーマンスで中盤をリードしていました。

 そして、期待が高まっていたアウェーでのニューキャッスル戦。ところが事前の情報で中田の先発がないということを知ったのですよ。ちょっとガッカリ。ということで、自動的に、どちらにするか(どちらを先に観戦するか)迷っていた高原直泰が先発したブンデスリーガ(バイエルン・ミュンヘン対ハンブルガーSV)にチャンネルを合わせることになったという次第。でもその途中に、中田が、オコチャのケガによって交代出場した(前半17分)との情報が入ってきた。でも、高原直泰も良いパフォーマンスを魅せているから観戦を中断するわけにはいかない。ということで、中田のレポートが本日にずれ込んでしまったといわけです。

 日本代表のボスニア・ヘルツェゴビナ戦とニューキャッスル戦。この両ゲームは、ある視点で、観察コンテンツに共通項がありました。自チームの調子がいま一つというなかでの中田英寿のプレー内容・・。

 ニューキャッスル戦でのプレーについてですが、あまり派手に目立つことはなかったし(前半24分の、ヤヌコプロスからのパスを受けてファーポストスペースへの決定的なクロスを決めた仕掛けプレーは際立っていたけれど・・)、後半30分に交代してしまったけれど、全体的なパフォーマンスは悪くありませんでしたよ。もちろん、日本代表では、彼にボールが集まるし、ディフェンスでの「イメージの有機連鎖プロセス」も彼がリードできることで自然と中田の存在は目立つわけだから単純に比較できないけれどネ。

 それに対してボルトンでは、守備にしても攻撃にしても、まだまだ「使われる」というシチュエーションの方が断然多い。それでも彼は、そんなボールがないところでの「シンプル」な汗かきプレーを、黙々と、そして効果的にこなしつづけながら、猛禽類のマインドで「見せ場チャンス」を探りつづけるのですよ。徹底的な鬼神のチームプレーをバックボーンにした「ココゾ!」のリスクチャレンジ狙い・・ってか。彼自身、フットボールネーションでの強者たちとの競争では、そんな積み重ねだけが次のステップアップの基盤になる(チーム内ポジションの強化ベースになる・・そして攻守にわたって、彼がコアになった流れが増えてくる!)と、自身の体感から深く理解しているということなんだろうね。何せ彼は「マラドーナ」じゃないからネ。彼自身も、そのメカニズムをしっかりと理解しているということです。

 例えばディフェンス。最初のチェック&チェイスアクション(守備の起点アクション)を忠実につづけるだけではなく、ボールがないところで「予測マーク」をベースに、相手の次のパスレシーバー(そのポイント)でのボール奪取勝負をもねばり強く狙いつづける中田英寿なのですよ。それこそが、前述した「ココゾ!」のリスクチャレンジのチャンスを狙うファウンデーションプレーというわけです。それは、高い位置でボールを奪い返した後の鋭い仕掛けをリードするというイメージ・・。またもちろん、そんな忠実なディフェンスプレーが、味方の「ボール奪取狙い」のターゲットを絞り込みやすくする効果的なチームプレーであるのも言うまでもないことです。

 そして攻撃。遠いゾーンへの勝負パスを強烈に意識しながら、まずシンプルな組み立てプレーに徹する・・前が空いたら、すかさず仕掛けドリブルで突っかけていったり、スバッという仕掛けのタテパスを最前線へ供給する・・機が熟せば、自らがコアになったコンビネーションを仕掛けていったり、キープやドリブルからのラストスルーパスを狙ったりする・・。そんなプレーイメージには、十分過ぎるほどのコノテーション(言外に含蓄される意味)が詰め込まれている。ただ、うまく完遂できず、現象としてのミスになることも「まだ」多い。そして後半30分には、「3-1」となる追い掛けゴールが決まったことで、たたみ掛けるためのフォワード投入という監督の決断によって交代退場ということになってしまうのですよ。

 ちょっと残念だったけれど、とにかく私にとって今のボルトンでの中田英寿は、まさにに興味深いプロセスにあります。たぶん彼自身にとってもネ・・。最後に、ナンバー新年号(644号)で中田英寿について「論考」した内容の骨子を短くご紹介します。

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 ・・良いフットボーラーについて語る上で欠かせないキーワードは「守備意識」・・それは、相手からボールを奪い返すために主体的に描きつづけるイメージの量と質とも表現できる・・勝負は、ボールがないところでのスペースの攻防によって決まる・・まさにそのポイントにおいて、中田英寿の真価が発揮される・・

 ・・まだまだ日本代表では「意識の空白」が目立つ・・中田英寿の「もっと意識を高めなければならない・・」というニュアンスの言葉に込められた意味は、精神論にとどまるものではなく、最後には自由にプレーせざるを得ないサッカーというスポーツの根幹にかかわる提言なのだ・・意識とは、ピッチの上で目に見えるものとして積極的かつ自由に表現すべきことだ・・

 ・・責任感あふれるポジティブな自己主張がぶつかり合うディベート環境が整備されていけば、そこで醸し出される緊張感の高まりに伴って、チーム全体が、闘うグループとして成長していくはずだ・・そして選手一人ひとりが、自分の主張パワーを強化するために、攻守にわたる汗かきプレーやリスクチャレンジにも全力で取り組むようになる・・それこそが、日本代表が進化するための「マインド善循環」なのである・・そして、その善循環をアクティベートする中田英寿がいる・・(了)




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