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2006_再び高原と「U19」・・徐々に本来のイメージに戻りつつある高原直泰・・そして、粘り勝ちの「U19」・・(2006年11月10日、金曜日)

いいね〜、高原直泰。数日前のレポートで課題だと指摘した「個の勝負プレー」が、この試合では見違えるほど大きく高揚しましたよ。

 前後の鋭いパスレシーブアクションで相手マークとの間合いを作り出し、スパッとタテパスを素早く正確にトラップして振り返る。そして、間髪を入れずに次の仕掛けアクションに入っていく。シンプルなパス&ムーブでコンビネーションを主導したり、自信あふれるキープで「タメ」を演出したり、はたまた待ち構える相手ディフェンダーへ向けて、スッスッと勝負ドリブルを仕掛けていったり。

 この試合では、そんなボール絡みのプレーが目立っていたのですよ。要は、シンプルな組織パスだけではなく、より自信をもって、仕掛けのキープ(タメの演出)や勝負ドリブルにもチャレンジできていたということです。それは、ボール絡みのプレーにおける「選択肢」の拡大を意味します。

 右サイドでパスを受け、タイトにマークする相手をスクリーニングで「いなし」、そのまま回り込んで置き去りにしてしまう。そして次に当たりにきた相手も、切れ味鋭いフェイントで逆モーションを突き、スムーズに抜き去ってしまう。そんな勝負アクションには、トップストライカーとしての本格感があふれていました。

 ストライカー、高原直泰。そうそう、この試合でもゴールを決めたよね。それも、二試合つづけての決勝ゴール。この試合では、コーナーキックから、味方のヘッドで流されたボールに飛びついてズバッと決めました。見事なダイビングヘッドでした。

 この「見事な」という形容には、高原が、相手のウラスペースへ動きつづけることで最後はフリーになった決定的フリーランニングも含まれます。高原は、確実に勝負ポイントをイメージできていた・・だからこそ、マークする相手を回り込むように、相手の「眼前スペース」へ飛び出した・・これもまた、ストライカーとしての本格感・・。まあ、その直前に得た二つのゴールチャンスを決められなかったのは大いなる反省材料だけれどね。そんな惜しいシーンこそ、何度もビデオで見返してイメージ的な学習機会として活用しなければならないのですよ。

 ボールがないところでのプレーがダイナミックだからこそ、良いカタチでボールを持って振り向けるということだよね。間合いが空けば、最高の「体勢とスピード」で、相手に仕掛けていけるからね。また、相手がボール奪取アタックを仕掛けてくるようなケースも、器用な高原にとっては得意なカタチ。スッとフェイントを入れたり、鋭いカットで相手アタックをかわし、そのままの勢いで突進していくのです。

 個の勝負、シュートへの入り方(シュート絡みプレーの量と質)、守備コンテンツや、攻守にわたるボールがないところでの動きの量と質なども含め、どんどん良くなっていると感じます。頼もしいじゃありませんか。高原に対する期待が、徐々に本来のレベルへと回復しつつあるということだね。

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 本当によく勝った、U19日本代表。サッカー内容では(また、チャンスの量と質という結果でも)明らかな「差」を見せつけられたという意味も含め、まさに、粘り勝ちでした。

 わたしは、韓国との「差」の本質は、限りなく心理的な部分に集約されると思っています。身体要素、技術要素、戦術要素では決して引けを取っているわけではない。それでも、多くの局面勝負で韓国選手に押されていたというのは確かな事実でした。韓国選手の闘う意志の方が優っていた・・だから韓国選手たちの局面での突進パワーを抑制し切れなかった・・また攻撃でも、韓国ディフェンダーの気合いに押され、吹っ切れた勝負がままならなかった・・。

 韓国選手たちは、もちろん組織パスプレーも巧みだけれど、それをベースに、個の勝負でも、強烈な「自己主張」を前面に押し出してきます。そのバックボーンに、彼らの生活文化があることは明白な事実だと思うのです。日常生活での自己主張のぶつかり合いという心理環境・・。

 韓国オフェンス陣が怒濤の勢いで仕掛けてくるドリブル勝負、積極的なシュート姿勢、攻撃の流れに乗った後方からの押し上げ(長い距離のオーバーラップ=パスを要求する自己主張)など。日本は、その勢いにタジタジでした。だから、ボールを持つ相手との間合いを空けすぎたり(消極的なチェイス姿勢)、チェックへの勢いが足りなかったり・・。そのように、「前段階ディフェンス」が十分ではないから、最終的なボール奪取勝負スポットでのマークが甘くなってしまうのも道理。

 また攻撃でも、安易なダイレクトパスをつなごうとして簡単にボールを失ったり、マークしてくる相手の背後からのプレッシャーに対して簡単にバランスを崩してしまったり(もっと身体全体を使って相手をドツかなきゃ甘く見られる!)。振り向いて、少し間合いがあったら、優れた個人勝負ができるし、素早いコンビネーションもスタートできるのだけれど、「そこ」までいくことがままならないのです。日本選手の本来的なチカラからすれば、自信をもって相手をスクリーニングでブッ飛ばせるはず。「それ」にチャレンジしなければ、やはり、あのように心理的に押し込まれ、心理的なドツボにはまってボールを簡単に失ってしまうのも道理ということです。

 わたしは、日本選手が内包する「総合的な能力」は決して韓国に劣っているわけではないと確信しています。いや、技術的、戦術的には凌駕する部分も多いまで思っているのです。でもそれを、グラウンド上で100パーセント「表現」できていない。もっと、もっと、個の部分(≒リスクチャレンジ・マインド)を伸ばしてやらなければ(何かから解放してやらなければ)いけない・・なんてことを思っていた湯浅でした。

 たしかに、この試合でのサッカー内容には大きな課題が見え隠れしていました。それでも、一人が退場になったにもかかわらず、少ないチャンスをモノにしてPKまでたどり着き、そして勝ち切ったという事実は重いし、そのことには、大変な「価値」がある。この試合で選手たちが体感した「厳しさ」の内容を、しっかりと見つめ直すことこそが、次のステップの扉を開けるのです。理想の姿マイナス現状イコール課題なのです。

 




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