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2006_ヨーロッパの日本人・・高原直泰、松井大輔、中村俊輔・・また長いレポートになってしまった・・(2006年10月30日、月曜日)

どうも皆さん、いまは日曜日の深夜。高原直泰、松井大輔、そして中村俊輔について軽くまとめておこうとキーボードに向かいました。

 まず高原直泰。バイエルン・ミュンヘンとのアウェー戦に先発し、なかなかの存在感を発揮しました。ただ残念なことに、チームメイトのヴァソスキーが二枚目イエローで退場になったことで、(チーム戦術的な理由で!)後半22分に交代ということになってしまいました。

 この試合では、左サイドハーフ的なタスク(役割)イメージで立ち上がった高原。積極的にディフェンスに絡むだけではなく、チャンスには積極的にシュートポジションへ入り込み、試合の流れに応じてセンターゾーンや逆の右サイドへ進出したりと、広範囲なプレーイメージを披露しました。

 プレーコンテンツだけれど、まず何といっても、フランス代表の重鎮ヴイリー・サニョール(バイエルンの右サイドバック)とのマッチアップが見所でした。サニョールのオーバーラップを抑制するなど、守備でもしっかりとしたパフォーマンスを披露していたのですよ。後半には、逆の右サイドでプレーしたことで、ドイツ代表の左サイドバックでもあるフィリップ・ラームのオーバーラップに猛然とアタックを仕掛けてボールを奪い返すなんていう派手なシーンも魅せた。なかなかの存在感じゃありませんか。

 またボールをコントロールしたときには、ドリブル勝負を仕掛けるなど、しっかりとリスクへもチャレンジできていた。まあ、相手は世界の強者ディフェンダーだからね、勝負ドリブルで彼らを「完全に」置き去りにできるわけじゃないし、ボールキープにしても限界が見え隠れしていたけれど・・。とはいっても、そこでの積極的な仕掛けマインドが、味方のボールがないところでのアクションを誘発したことは確かな事実。何度か、彼のドリブルをキッカケに、最終勝負の仕掛けフローがスタートしたというシーンもありました。

 そんな積極プレーのなかで、この試合でもっとも特筆だったのが、シュート。前半8分には、ヴァイセンベルガーからの正確なクロスを、完璧なタイミングでスペースへ入り込み(相手マーカーの背後から眼前スペースへ回り込んだ!)ヘッドで捉えたというシーンがありました。残念ながら、彼が放った強烈なヘディングシュートは、世界のオリバー・カーンの正面に飛んでしまったけれど、それは、誰もがフランクフルトの先制ゴールを信じて疑わなかったダイナミックなシュートシーンでした。

 またその後の前半19分にも、シュトライトの「ニアポスト狙いフリーキック」に走り込んで左足で合わせるなど(これまたオリバーカーンの足に阻まれた!)、シュートを打つ感覚では、ホンモノ感を放散しつづけていましたよ。

 もちろん高原は、足の速さや高さ、はたまた競り合いパワーなどでも、世界レベルのストライカーというわけではない。それでも彼が、着実に、本物ゴールゲッターとしての「実効レベル」を高揚させつづけていることは確かな事実です。やはり環境こそが人を育てるのです。

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 さて、松井大輔。

 このところ、彼の左サイドでの「張り付き」にウンザリさせられていた湯浅でしたが、この週末も、それをまたまた見せつけられてしまった。この試合では前半40分で交代させられてしまったのですが、あんな発展性のないプレー姿勢では仕方ないと思っていた湯浅でした。まあ、ケガとか体調不良など、別の要因があったのかもしれないけれどネ。

 聞くところによると、彼は、攻守にわたり、自分の受け持ちゾーンを意識してプレーをやらなければならないと考えているとか。それが(プレーゾーンのバランス!?)フランス流だなんていうニュアンスのことも言っているらしい。たしかに彼は、ジーコ日本代表のときも、左サイドに張り付くばかりで、私のフラストレーションを増幅させてくれたっけ。

 でもそれって、発想の方向性がブレているだろう!? 自分のゾーンとは、基本的なスタートラインにしか過ぎないのですよ。サッカーにおけるチーム戦術的な目標イメージは、攻守にわたって、常に「数的に優位な状況」を作りつづけるということです。それが守備での協力プレスであり、攻撃での「仕掛けの起点の演出」などといった具体的な現象になってグラウンド上に現出する。

 要は、シュートを打つという攻撃の目的と、ボールを奪い返すという守備の目的を達成するために、勝負所ではチーム戦術的な(担当ゾーンという!?)基本タスクから「自らを」積極的に解放し、リスクへチャレンジしてかなければならないということです(バランスの取れた相互ポジショニングと勝負所でのダイナミックな集散の前向きなバランス感覚!)。

 そして「勝負」が終わったら(また、必要であれば)全力で基本のポジショニングバランスゾーンへ戻るのですよ。松井のチームメイトたちは、実際に、そのように柔軟な勝負プレーを繰り広げているじゃありませんか。私には、彼「だけ」が、チーム戦術イメージに振り回されていると感じられて仕方ありません。

 要は「もっと走れ!」「もっとリスクへチャレンジしろ!」「松井は、それが出来るだけの才能に恵まれているじゃないか!」ということが言いたかった湯浅でした。変に凝り固まった「戦術イメージ」は、選手の可能性を矮小化させてしまう・・。まあ、松井自身は、いまの自分のプレーコンテンツに満足せず、もっと良いプレーを目指したいと思っているハズだけれどね。

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 さて最後は、キルマーノックとのアウェーゲームを戦った中村俊輔。結果は、セルティックの「1-2」という逆転勝利でした。

 中村俊輔のパフォーマンスだけれど、同点弾となったスーパーフリーキックは別にして、全体的には「たまにはこんなゲームもあるさ・・」といった、そこそこの内容だったですかね。とはいっても、ホームのキルマーノックが、ガンガンと前から守備に出てきていた前半では、まったくといっていいほど良いところがなかった。これは、テーマとして面白い。

 要は、相手の守備の勢いがレベルを超えていることで、セルティックの攻撃がまったくと言っていいほど機能しなかったということです。

 もちろん相手は、ゲーム&チャンスメイカーの中村俊輔に集中プレスを掛けてくるけれど、この試合での中村は、そんな相手の勢いを上手く「いなせ」ない。何せ、味方のプレーが低調ということもあって、うまくスペースでパスを受けられず、どうしても足許パスを無理な体勢で受けることになってしまうし、そこから打開していくにしても、味方が寄ってきてくれないことにはどうしようもない(素早いコンビネーションを使えない!)。そんな状況じゃ、どんな天才でも効果的なプレーは無理だよね。

 だからこそ、面白いテーマ。中村俊輔は、この前半でのフラストレーションを、いかにして解消すべきだったのか。正解は一つ。もっとガンガン積極的に動き回って守備にも参加すべきだった・・。

 味方を鼓舞し、キルマーノックに輪を掛けた勢いでプレッシングディフェンスを仕掛けていくという流れの先頭に立つべきだったのですよ。そんな、ダイナミックな守備への参加は、次の攻撃において、よりボール奪取ポイントの近くでボールに触れるというだけではなく、よりフリーでボールを持てるということをも意味するからね。

 要は、全体的に足が止まり気味のセルティックが覚醒するためには、守備を活性化させるしかなかったということです。そこで中村俊輔が、必死にボールを追いかけ、必死のタックルを仕掛けまくったらどうなるか。そんな彼のプレーに触発されないチームメイトはいないでしょ。そして俊輔は、守備に(より積極的に)参加することで相手の「ボール奪取勝負のターゲット」から外れ、次の攻撃でより自由にプレーすることができるようになる。

 まあ、後半になってキルマーノックの守備パワーが減退したことで(相手のマークが緩くなったことで)中村俊輔も本来のパフォーマンスを出せるようになったけれど、私は、中村俊輔には、前半の厳しい状況を、主体的なチャレンジで乗り越えて欲しかったわけです。それでこそ素晴らしいポジティブ体感を積むことが出来るからね。

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 追伸:インド、バンガロールで行われている「U19アジアユース」については、二試合目からレポートできそうです。残念ながら私は「BS朝日」には入っていないのですよ。というわけで、今日おこなわれた初戦(北朝鮮戦)は、ほんの短い抜粋だけしか見られなかった。でもそのプレーコンテンツを見る限りでは、全員が、攻守にわたって積極的に(主体的に)闘っていたと感じることができました。攻守わたる、ボールがないところでのアクションの量と質の高揚感は、テレビの短い抜粋でも、明確に感じ取ることが出来たということです。ということは、実際の闘う意志パワーには、もっと迫力があったということなんだろうね。二試合目のタジキスタン戦が楽しみです。




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