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2006_天皇杯4回戦・・悪魔のストーリーを蹴散らすようなダイナミックサッカーを魅せたレッズ・・(レッズvs静岡FC、5-0)・・(2006年11月4日、土曜日)

・・ゲームは緩慢なテンポで立ち上がった・・見るからに様子見の両チーム・・国内カップゲームの四回戦・・プロ一部リーグでトップを走る実力チームと、これからプロリーグ入りを目指す四部リーグチームとの対戦だ・・四部リーグチームは、もちろん若手主体の編成である・・

 ・・ギリギリの競り合いシーンは希というカッタるいゲーム展開・・でも、やはりそこはプロのトップチーム・・一部プロチームの方が、個人の勝負をベースに何度かチャンスを作りかける・・ただ、周りの「ボールなし」の動きが連動しないから、どうしても最終勝負では潰されてしまう・・ただ、チャンスメイクは簡単だという「雰囲気」に、一部プロチーム選手たちの表情には、明らかにイージーなマインドが浮かびはじめている・・まあ、この程度のプレーで、いつかはゴールを挙げて楽勝さ・・

 ・・ただ逆に、そんな緩慢な展開がつづくなかで四部チームのプレーが徐々に活性化していくことになる・・相手は気が抜けている!・・俺たちにも出来るゾ!・・そんな自信が沸き上がってくるように、攻守にわたる一つひとつのプレーの実効レベルがどんとんと高揚していくのである・・

 ・・そんな積極プレーを支える強固な意志は、もちろんディフェンスプレーに如実に投影されてくる・・チェイス&チェック、インターセプトやトラップの瞬間を狙ったアタック、協力プレス、そしてボールがないところでの忠実マーキング・・それらの守備ファクターが、まさに有機的にリンクしつづけることで、「弱小チーム」のパワーが大きく盛り上がっていく・・

 ・・それに対し、無為な個人勝負ばかりを繰り返す「実力チーム」のサッカーは、みるみるうちに矮小化していくのである・・そしてゲームは、表面的なボールキープ率とは関係なく、「弱小チーム」が実質的な流れを牛耳るという展開へと変異していく・・そんな展開のなかで、自信が確信へと発展しつづける「弱小チーム」・・足許パスを積み重ねるばかりで全くフリーでボールを持つことが出来ず、見るからにフラストレーションをためていく「実力チーム」・・そして彼らは、心理的な悪魔のサイクルにはまり込んでいくのである・・ピタリと足が止まってしまう「実力チーム」・・彼らのなかからは、そんな悪魔のサイクルを断ち切るだけのリーダーシップも出てこない・・

 ・・そして運命のときが訪れる・・「弱小チーム」が、セットプレーから先制ゴールを挙げたのだ・・その直後から、少しはプレーが積極的になった「実力チーム」だったけれど、まったく噛み合わなくなった「仕掛けイメージ」を元に戻すことができない・・そして再び、ゴリ押しのドリブル勝負ばかりでチャンスを潰していくのである・・リーダーシップの不在・・そして時間だけが過ぎていく・・ってか〜〜!?

 あははっ! 皆さんもご存じのとおり、そんな「ストーリー」は、サッカーでは日常茶飯事ですよね。それでも、そこで蠢く(うごめく)ネガティブな心理メカニズムというワナを十分に体感していない「実力チーム」の場合、そのワナにはまってしまう公算が大きいのですよ。

 レッズに対して、そんなことを心配していたのかって? まあ・・ね、サッカーだから、何でも起こり得るっちゅうのは確かな事実だから。でも実際には、そんな心配は完全なる杞憂に終わったわけだけれどね。レッズは、ゲーム立ち上がりから、立派な「個人事業主の意志」を魅せつづけましたよ。まあその背景には、世界の体感を積み重ねたギド・ブッフヴァルトのウデもあったんだろうけれどね。

 「格下といわれるチームと対戦するときは、集中してゲームに臨むことが大事。そのベースは、自分たちの(最良の)サッカーを全力でやり通すという意志だ」。記者会見でのギド・ブッフヴァルト監督の弁です。まさにその通り。ベストパフォーマンスのサッカーを展開しようとする強烈な意志。それではじめて、両チームの間に厳然と存在する「本来的な実力差」が顕在化するというわけです。

 もちろんレッズにとってこの試合は、ギリギリの勝負がつづく「J」をイメージした重要な調整ゲームという意味合いもあります。「サッカーでは、リズムが大事なんだ」。そう、ギド・ブッフヴァルトが言っていました。

 もちろんそれは、次の厳しい(リーグの)ゲームに臨む上で大前提となる「チーム戦術的なプレーリズム」のこと。ちょっとでも、攻守にわたるダイナミックプレーのイメージに陰りが出てきたら、その「心理ビールス」は、瞬く間にチーム全体に浸透し、取り返しのつかないところまでいってしまいます。だからこそ、「自分たちの最高のリズム」を維持することが大事なのですよ。

 私は、ギド・ブッフヴァルト監督が言った「リズム」という現象のなかに、山田暢久、長谷部誠、そして鈴木啓太で構成する「ダイナミック・トライアングル」も含まれると思っています。攻撃での、ダイナミックで効果的な縦横無尽のポジションチェンジ・・それでも、次のディフェンスが薄くなったりバランスが崩れたりすることはない・・それこそが、『高い守備意識を絶対的なバックボーンとした』ポリヴァレント・・!?

 この三人のなかでは、それぞれの守備意識に対する絶対的な信頼があるんだろうね。もちろん「それ」のもっとも重要な根拠は、ボールがないところでの守備の実効レベルだったり、チェイス&チェックの量と質だったりするわけですよ。「汗かき実効レベル」とでも表現できるかネ。とにかく、このダイナミック・トライアングルは、いまのレッズサッカーを支える、もっもと重要な支柱なのです。

 このダイナミック・トライアングルに、どのように両サイドとトップの二人(ツートップか、ワントップとシャドーか・・等々)が絡んでくるのか・・。それが、ゲーム戦術の基盤になるということだろうね。

 それにしてもこの試合でのレッズは、気を緩めずに最後まで闘いつづけた。立派なものだ。さて明日は、三ツ沢へ、「マリノス対愛媛FC」の勝負マッチを観戦にいくつもり。冒頭のエキサイティングストーリー要素も含め、とことん楽しむつもりでっせ。




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