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05/06_チャンピオンズリーグ準々決勝の2・・「イタリア」という現象・・「バルセロナ」という価値・・(2006年4月6日)

あ〜あ、素晴らしく創造的なサッカーを誇示していたリヨンが、最後の最後でミランにうっちゃられてしまった・・追い掛けるミランの攻めが寸詰まりになっている「あの試合の流れ」だったら、絶対にリヨンが勝ち進むと確信していたのに・・まあ、「あの流れ」でも最後にゴールを決めてしまうところが、ミランのミランたる所以なんだろうな・・イタリアの勝負強さ?!・・。

 とはいっても、準々決勝では、「勝負強いイタリア」を代表する二つのクラブが姿を消してしまった・・ユーヴェとインテル・・やはり彼らは、「自ら仕掛けて」積極的にゴールを奪いにいかなければならないという状況(発想)に慣れていない?!・・積極的にゴールを奪いにいくためには、相手ディフェンスブロックが揃わず、しっかりと組織作りを整えてしまう「前」に前線に人数をかけていくことが必要(要は、後方での人数&ポジショニングバランスを捨ててまでも攻め上がることが必要!)だし、攻撃の変化を演出するためにタテのポジションチェンジも必要・・でも「イタリア」では、最終勝負を仕掛けるプレイヤーが「決まって」いるし、前の選手を追い抜いていくという発想も徹底していない・・何せ最前線の選手のほとんどが、ゴールを奪うためだけに雇われた「外国人の傭兵スター」だからね・・彼らは、ボールを奪い返した後の「一発勝負」を主にイメージしているし、組み立ての状況でも、常に自分が「もっとも前」にポジショニングしつづける・・最前線のフタ?!・・これでは仕掛けの変化の演出など叶わないし、相手ディフェンスにとっても守りやすいことこの上ない・・なんてネ・・。

 「イタリア」の特徴は、何といっても「勝負優先のセキュリティー」・・彼らは、常に次のディフェンスをイメージしながら、グラウンド上の「人数バランスとポジショニングバランス」を強く意識しつづける・・究極の戦術(規制)サッカー?!・・中盤で展開パスを回しても、決して前方へ上がってかない・・中盤でのパス&ムーブはほとんど見られない・・常に人数とポジショニングのバランスを見ながら対処するイタリア人選手たち・・彼らは、ボールを奪い返した次の瞬間、「まず」最前線への一発勝負ロングパスをイメージする・・もちろん最前線プレイヤーも「それ」を意識している・・だからこそ「一発」が決まる・・それこそが「イタリアのツボ」・・そんな「一発ロング縦パス・カウンター」が決まらなかったら、次に、「セキュリティー主体の組み立て」に入る・・決して、安易に「追い越しフリーランニング」を仕掛けることはない・・そして、相手が「全体的」に下がった状況ではじめて、全体的に押し上げながら仕掛けに入る・・彼らの場合、組み立ては、あくまでも相手の行動を見極めることが大前提・・究極のリアクションサッカー?!・・また全体的に押し上げた状況においても、中央ゾーンでのタテのポジションチェンジは希・・もちろんサイドはオーバーラップしていくけれど・・もちろんそれは、外国人スターが最前線にフタをしているから・・なんてネ・・。

 「イタリア」だけじゃないけれど、とにかくサッカーの内容は、その地域の「生活文化を投影」していると感じますよね。サッカーは社会を映す鏡・・。伝統的な生活文化に根ざしたモノもあるし、さまざまに変容する「流動文化」に影響されることもあるだろうし、それもまた、サッカーという社会的な存在が与えてくれる興味深い学習コンテンツの一つだということです。

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 さて、スーパー・バルセロナ・・。

 限りなくスムーズにリンクしつづけるリスクチャレンジ・マインド・・強者たちのセルフモティベーション能力に支えられた、攻守にわたる積極プレー姿勢が光り輝きつづける・・あくまでも組織プレー(ボールがないところでのアクション)を絶対的な基盤とし、その流れのなかに、チームメイトたちが認める(相互のイメージシンクロコンテンツとして深く浸透している)個人の勝負プレーが、ベストタイミングで組み込まれていく・・等々。そんな形容句アイデアが限りなくわき出してくるじゃありませんか。バルセロナ・・。

 たしかに彼らは、この時点で、世界最高峰の攻撃サッカーを展開しています。そのベースは、もちろん組織的なディフェンス。チェイス&チェックという守備の起点プレー・・その周りで激しく交錯しつづけるインターセプト狙いや協力(集中)プレス狙いという意志エネルギー・・そして、ボールがないところでの忠実な汗かきマーキングという献身エネルギー・・それらの守備ファクターが、これ以上ないというほど有機的にリンクし、次々と、実効あるボール奪取勝負シーンを演出しつづけるのです。

 そんなダイナミックなディフェンスを支える意志は、選手全員に深く浸透している。だからこそエネルギーレベルも高揚する。それこそが相互信頼。まあ・・ネ、ロナウジーニョは「そこそこ」だけれど・・。そんな「高質な守備イメージの有機連鎖」こそが、次の攻撃におけるイメージの高揚を支えている。彼らは、ボールがないところで勝負決まるというメカニズムを深く理解していると感じますよ。シンプルタイミングのパス・・忠実なパス&ムーブの連鎖・・等々。それらの組織プレーが、人とボールが有機的によく動く魅惑サッカーを支えているのですよ。

 いまのバルセロナが提示しているサッカーは、すべての人々にとって魅力的なモノですよね。見る方の予想の逆を取ったり、その上をいくサッカー。観客は、予想を裏切られれば裏切られる程、そのサッカーの虜になります。それも「ナルホド回数」という魅力エッセンスに通じますかネ。バルセロナは、組織プレーでも個人プレーでも、見る者の予想を凌駕し、そして「ナルホド」と感嘆させつづけるっちゅうわけです。もちろん「その絶対的なベース」が、攻守にわたる「忠実な基本プレー」であることは言うまでもありません。ボールがないところで勝負は決まってしまうのですよ。

 ところで、ワントップのエトー。そのディフェンスは、本当に素晴らしいよね。バルセロナの二点目も、彼の爆発ディフェンスがキッカケだったしね。それがあるからこそ、バルセロナの仕掛けに「大いなる変化」が演出される・・っちゅうわけです。

 さて、メッシ、エジミウソン、ジュリといった主力組が復帰しつつあるバルセロナ。今シーズンのチャンピオンズリーグは、内容と結果が、素晴らしく高い次元で「一致」するという希望を抱かせてくれるじゃありませんか。いまのバルセロナは、確実に、世界サッカー地図のなかで大いなる「イメージ価値」を生み出しつづけています。

 



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