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05_世界クラブ選手権(トヨタカップ)準決勝・・たしかに世界的な「僅差の縮小傾向」は不可逆的に進行している・・(サンパウロvsアルイテハド、3-2)・・(2005年12月11日、日曜日)

ちょっとビックリしたね。アルイテハドがあそこまでやるとは・・逆に言えば、サンパウロの出来が、特に前半は悪すぎた・・とも言える。歴代のトヨタカップ優勝クラブで、もっとも記憶に残った強いチームの一つがサンパウロでしたからね、ちょっと観戦モティベーションを殺がれてしまったというのが正直なところでした。

 前半のゲーム内容を見ながら、世界とアジアの差が大きく縮まっていることを実感していましたよ。まあそれには、サンパウロが立ち上がりの早い時間帯に先制ゴールを決めたこともありました。あららっ・・このままサンパウロが圧倒しちゃうのかな・・なんて思っていたのですが、あにはからんや、失うモノがなくなったアルイテハドが立派なサッカーで盛り返していくのですよ。吹っ切れたからこその(相手に対する思いこみベースの過度の畏敬による心理的なネガティブ要素から解放されたからこその!)実力発揮!? そして見事なカウンターから同点ゴールまで決めてしまうのです。

 対する前半のサンパウロは、まさにタジタジでしたね。組織的なディフェンスは機能しているのですが、ボールを奪ってからが良くない。まったくといっていいほど、ボールが動かないのですよ。それに、以前のように、個人のチカラをベースに、局面で相手を「いなす」ことなんて出来ないから、どうしても仕掛けが停滞気味。そんなだから、ミエミエのパスをカットされて、ズバッというカウンターを仕掛けられてしまうのも道理です。こんな展開がつづいたら、本当にアルイテハドにやられてしまうかもしれないな・・。本気でそんなことまで思っていた前半だったのです。

 それが後半は、ガラッと様相が変わります。サンパウロが、まさに我々がイメージする(期待する)サンパウロらしいクリエイティブサッカーを展開しはじめたのです。機能的な(読みベースの)組織ディフェンスとも呼べるタイミングの良い協力プレスがうまくハマりつづけ、より高い位置でボールを奪い返しはじめるサンパウロ。そして、そんな効果的な守備を基盤にした次の攻撃でも、ボールがないところでのサポートが厚みを増したことによって、組織的なボールの動きにもダイナミズムが出てくるのですよ。勝ち越しゴールと三点目につながったPKを取った場面では、「まさにブラジル」という素早いコンビネーションが決まりました。ゆっくりした展開から、急激なスピードアップで何人もの選手たちが、同時に、ボールがないところで仕掛けていくコンビネーション。「やっとサンパウロが目覚めたな・・」なんて実感していた湯浅でした。

 それでもアルイテハドの粘り腰は、3-1とリードされてから本領を発揮します。セットプレーから「3-2」となる追い掛けゴールを決めたのです。コーナーキックのボールを、ニアポストにいた選手がスリップヘッドで後方へ流し、それをアジア最優秀選手に選ばれたスーパーセンターバック、モンタシュリがヘッドで押し込んだゴール。そしてその後は、完全にアルイテハドペースになっていきます。とはいっても、押し込んでいる割には、サンパウロ守備ブロックのウラを突いていけているわけじゃない。たしかに惜しい雰囲気の仕掛けフローは何度かあったけれど、どれも「ハッとさせられるようなチャンスメイク」とまではいきませんでした。要は、アルイテハドの攻めは、そのほとんどのプロセスで、サンパウロ守備に読まれていたということです。

 それでも私は、局面でのせめぎ合いでも、時間を追うごとにアルイテハド選手たちの自信レベルが高揚していくとなど、アジアの進歩を体感していました。たぶんアルイテハドの選手たちは、「何だ・・もっとチンチンにやられるかと思ったけれど、ヤツらは大したことない・・互角にわたり合えるじゃないか・・」なんて確信を深めながらプレーしていた!? まあ、とはいっても結局は、サンパウロに余裕をもって逃げ切られてしまったことも確かな事実だったけれどネ(そんなポイントに僅差の本質が見える!?)。とにかく、世界的な国際化と情報化によって、世界全体のレベル差は、加速度的に縮まっていることだけは確かな事実だと実感していた湯浅だったのです。

 さて明日はリバプールが登場です。どんなサッカーを魅せてくれるのか。そこでも、不不可逆的に進行する「世界的な僅差の縮小傾向」を体感できるのか・・。今から楽しみじゃありませんか。




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