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05_ジーコジャパン(73)・・ガチンコ勝負になったゲームをしっかりと勝ち切ったことには殊のほか重要な意義がある・・(日本vsアンゴラ、1-0)・・(2005年10月16日、水曜日)

「ふざけるなよ・・これじゃ、2003年8月20日に親善マッチで来日したナイジェリアの三軍代表チームと同じじゃないか(当時のナイジェリア戦レポートはこちら)・・本当にアフリカチームを日本に招いたってろくなコトはない・・まあ、アンゴラに決まるまで、不実なアフリカンマネージメントに振り回されて対戦相手が二転三転したしな・・」。

 アンゴラ戦の前半を観はじめてすぐに、まずそんな憤りを抱いていました(先日のウクライナでのコトも含め、ちょっとこのところ憤ることが多い!?)。何せアンゴラは、次元の低い個の勝負を積み重ねるだけといった稚拙きわまりないサッカーですからね。そこに、シンプルにボールを動かすことで組織的な組み立てプレーを機能させようとか、コンビネーションで日本代表ディフェンスブロックのウラスペースを突いていこうなんていう発想は皆無。誰もが分かるタイミングで、ひたすら個の勝負をブツ切りに積み重ねるだけといったアンゴラなのですよ。パスを受けても、決まってスリーテンポは遅いタイミングで、日本守備ブロックの眼前での展開パスを回す。これじゃ、日本の組織プレッシャーにボールを簡単に失ってしまうのも道理じゃありませんか。

 それに対して日本は、高い位置での組織的守備プレッシャーと、そこからの人とボールがよく動く組織サッカーがうまく機能しつづけることで、何度も決定的なシュートシーンを演出するのです。中村やアレックスのクロスに高原や柳沢が飛び込む・・素晴らしい動きのなかでボールを持った中村が思い切ったドリブル勝負からギリギリのシュートを飛ばす・・等々。一体何本のシュートがバーを直撃したことか。それでもゴールが決まらない。明らかに次元の低いサッカーしか展開できないアンゴラに対して、順当なゴールを奪えないというフラストレーション・・。

 最初の20分間は、まさにそんな展開でしたかネ。だからその後のアンゴラが、徐々に持てる実力を思い出すかのように、彼らのサッカー内容が高揚していったのにはちょいと驚かされました。アンゴラのゴンサルベス監督によれば、「前半でも、最後の15分くらいは、しっかりとキープすることで日本のリズムを乱せるということに気づいた・・だから後半は、より攻撃的にプレッシャーを掛け、サイドから仕掛けていくなど、日本の弱点を突いていくように指示した・・そんな意図がうまく機能したと思う・・実は、アンゴラのセンターバックのレギュラー二人が今回来日できなかった・・彼らがいれば、あの決勝ゴールは生まれなかったに違いない・・」ということでした。

 その言葉どおり、後半は互角のゲーム展開になりました。もちろんアンゴラの「個の勝負を主体にした仕掛け」という傾向に変わりはないけれど、その個の勝負が、今度は「ブツ切り」ではなく、素早くシンプルなボールの動きが出てきたことで、しっかりとリンクするようになったのです。まあ、とはいっても、ジーコが言うように、日本の守備ブロックが、最終勝負ゾーンで振り回されたり崩されることはほとんどありませんでしたけれどね(アンゴラが作り出したチャンスのほとんどは中距離シュートだった!)。

 最後は日本にとって難しい勝負になりました。さすがにアフリカ予選を勝ち抜いたチームだと感じさせてくれたアンゴラ。だからこそ、日本の勝利はものすごく貴重なものでした。実力チームとのガチンコ勝負に競り勝ったという体感・・。ガチンコ勝負という展開になったといえば、もちろん先日のウクライナ戦。あのゲームを引き分けで終えることができていれば、それもまた素晴らしいポジティブ体感として選手たちの勝負イメージの強化につながったはずなのに・・。フ〜〜ッ、また思い出してしまった。

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 ここからは、ちょっと個人コメント。まず稲本。この試合では、スリーバックということもあって、中盤の底で、ちょっと「所在なげ」にしていたという印象がありました。中田英寿と中村俊輔が、ガンガン下がって守備参加してくるし、相手の攻撃が組織的ではないことで、ちょっと稲本のディフェンスイメージが空回りしていたと感じたのですよ。私は、中田や中村が、もっと稲本を前へ「送り出して」もよかったと感じていました。でも実際には、攻撃となったら、二人とも上がってしまいますからネ。稲本は後方のポジションに残り、そこを基点に攻撃をバックアップしていくしかないから、どうしても三列目で足を止めるというシーンが目立つようになってしまうというわけです。もちろん、ココゾのシーンでのボール奪取能力は抜群だし、ツボにはまったときの後方からの押し上げエネルギーも特筆モノなのですがネ・・。後半20分過ぎにフォーバックになってから、やっと稲本のプレーに本来のダイナミズムが表現されはじめたと感じたモノです。その時間帯に魅せた爆発的なインターセプトから、右サイドを上がる松井へ送り込んだタテパスのシーンがハイライトでしたネ。パスを受けた松井も決定的なクロスを送り込めましたからね。

 中田英寿と中村俊輔については、皆さんが観られたとおり、いつもの高みで安定したパフォーマンスだったから、特別に書きつづることもないでしょう。それにしても攻守にわたる中田のリーダーシップや、勝負所での中村俊輔の「キレ」は、やはり日本代表の大黒柱ですよね。特に中村に対しては、決勝ゴールの「美しい」お膳立てに対して大拍手の湯浅でした。アッと・・。中村については、守備で一言ありました。前半44分に、中村が右サイドで相手のドリブルにブッちぎられたシーン。あそこは、必ず誰かがバックアップにいかなければならない場面でした。何せ、中村がスピードでブッちぎられるのは火を見るよりも明らかだっただから・・。宮本の指示が足りなかった!? 後でビデオで確認してみましょう。まあ普通だったら、中村は、プロフェッショナルファールで相手の突進を阻止していたところだったんだろうけれどネ・・。

 松井大輔。良かったですよ。ちょっと受け身で消極的だったラトビア戦やウクライナ戦と比べたら、攻守にわたる積極的な仕掛けプレーで際だっていました。やはり彼も、サバイバルに対する危機感でいっぱいだったということでしょうね。パスを呼び込む爆発フリーランニングや、パスを受けてからのリスクチャレンジプレー。また守備でも身体を張ったギリギリの勝負で存在感をみせつけていましたよ。

 ハナシは前後するけれど、やはりこの試合については、後半20分にスリーバックからフォーバックへ移行したことに対するコメントを忘れるわけにはいきません。正直なところ、その移行がスムーズにいったという印象は持てませんでした。最終ラインセンターの人数が一人少なくなることでちょっと不安になった最終ライン・・またフォーバックの生命線である中盤ディフェンスとのコンビネーションも、最初はうまく機能しなかった・・だから最終ラインと中盤ラインの間で空きすぎたスペースを、何度も相手にうまく使われてしまった・・。結局、フォーバック守備ブロックの機能性がうまく落ち着くまでに5-6分は掛かったと思います。やはり、セキュリティーをコンセプトにする守備のチーム戦術から、より攻撃的な守備のチーム戦術への移行は難しいのだろうか・・なんてことに思いを馳せていた湯浅でした。

 このテーマは、W杯本大会でジーコジャパンが担うメインミッションにもつながるものです。要は、内容で世界にアピールするか、とことん勝負にこだわるのか・・というテーマにもつながるということ。もちろん最後は「最良のバランスを突き詰める」ということになるわけだけれど、それでもどこかで吹っ切れた決断をせざるを得ないことも確かな事実。そこでは、「どのように」吹っ切れるのかということがテーマになるというわけです。ちょっと錯綜した議論になりそうだから、このテーマについては、どこかでまとめることにしましょう。それではまた・・

 



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