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05ナビスコカップ準々決勝第一戦・・ジェフが魅せた高質なトータルサッカーに舌鼓を打ち、同じジェフがみせた勝負どころでの集中切れに舌打ちしていた湯浅です・・(ジェフ対ジュビロ、3-2)・・(2005年8月6日、土曜日)

いやホント、目を見張りましたよ・・久しぶりのオシム市原。彼らが展開する「トータルサッカーを志向するベクトル上に乗ったダイナミックサッカー」に、脳内が洗浄されるような感覚におそわれたものです。久しぶりの爽やかな感動でした。何せ、3週間前にはオートバイのトラブルで、ジェフのサッカーを見逃してしまいましたからね。

 とにかく、ジェフの攻撃には、シンプルな展開&仕掛けリズムがチーム全体に深く浸透していると感じます。だからこそボールがないところでの動きも加速しつづける。彼らは、「このタイミングで走り出せば、自分のボールなしの動きが、必ず何らかのカタチでチームの攻撃に貢献する・・」という深い確信をもっているのです。ホント、素晴らしい。そんな「確信のイメージ構造」が重要なのです。もちろん、もう一つレベルアップすれば、途中で「個のエスプリプレー」がミックスされ、そこでボールの動きが停滞したとしても全体的な仕掛けの流れに乱れが生じることがないという高質サッカーになるでしょう。そう・・良いときのレアル・マドリーのようにネ。

 ジェフの先制ゴールは前半6分。右でボールを持った結城からのサイドチェンジパスが、逆サイドにいたマリオ・ハースにピタリと合う・・それをハースが決定的スペースへ向けてヘディングで「折り返す」・・そのボールは、正確に、ジュビロ最終ラインとGKの間に広がる決定的スペースを横切るトラバース・ラストパスになる・・そして右サイドからその決定的スペースへ走り込んだ羽生が右足一閃!・・ってな具合。その先制ゴールを見ながら、ホントにサッカーって単純なボールゲームだよな・・なんて感じていましたよ。

 とにかく、味方がフリーだったり有効なスペースを見つけたら、間髪を入れずに「そこを活用」する・・というイメージ。そのときには絶対に躊躇しない。そんなリスクチャレンジマインドがチーム内でシェフされていれば、いくら失敗したとしても、チーム内では、必ずポジティブなマインドが回りつづけるはずなのです。

 逆にジュビロでは、そんな、人とボールの動きを司る「リズムのタガ」が外れ、一人ひとりが、疑心暗鬼にかかっていると感じましたよ。だから縦へのリスクチャレンジパスが少ない・・足許への横パスが多い・・。

 ジェフが魅せた素晴らしいコンビネーション。前半11分には、ハースが中心になって演出された仕掛けの流れのなかで、4人のジェフ選手たちが決定的スペースを狙いつづけて「抜け出し」、最後は決定的シュートまで(バー直撃のシュート!)いった。またつづく13分には、右サイドでハースと林がパスを回している次の瞬間、逆サイドの羽生が反応して決定的スペースへ全力ダッシュし、そこへ決定的パスが送り込まれるというビッグチャンスを作り出した。とにかく観ていて興奮させられる「トータルサッカー」でしたよ。

 そんな素晴らしいサッカーだったからこそ、前半と後半の「最後の時間帯」での集中切れがちょいと残念でした。オシムさんも、ハーフタイムでその集中切れに対してカツを入れていたようです。要は、この両方の時間帯では、2点リードしたことで、「まあ、必死に食らいついていかなくても大丈夫だろう・・」という安易なマーキング姿勢が出てきたということです。

 ハーフタイムでのオシムさんは、こんなことを選手たちに語りかけたそうです。「最後の10分間はマークがしっかりと付けていなかった・・うぬぼれたプレーが出はじめて失点につながった・・最後まで集中を切らせてはならない・・もう一点取りにいくためには、危険なプレーにもチャレンジしなければならない・・危険なところへもパスを出していかなければチャンスは作り出せない・・つなぐためだけのパスになっている・・最後にもう一度・・大事なのは集中することだ!・・」。

 それが功を奏した後半。素晴らしく集中したディフェンスでジュビロの攻めをはね返し、何度か決定的なカウンターを決めかけました。でも決め切れない。特に後半35分あたりのカウンターは100パーセントチャンスでした。工藤が持ち込んでジュビロ守備を引きつけ、最後の瞬間に、まったくフリーになっていた右サイドの要田へラストパスを回します。まったくフリーでグラウンダーシュートを放つ要田。でもそれが、ジュビロGKの身体に当たってしまって・・。そのシーンを観ながら、こんなことを考えていました。「そう・・これが決定力というテーマの典型的な例示シーンだな・・要田は、シュートを決めるという現象の本質的な背景ファクターをまだまだ理解&体感していない・・そこでは、最後の瞬間に自分が蹴ったボールがゴールへ吸いこまれるイメージを描写できたり、最後の瞬間に落ち着いて息を吐き出せたり、最後の瞬間に一瞬スッと全身のチカラを抜いてリラックス出来たりという心理・精神的な余裕が決定的な意味を持つ・・」なんてね。やはり、この決定力というテーマについては、「The 対談」で取り上げたいですね。往年の名ストライカーと語り合うなかで、より万人に理解されやすい「表現」を開発できるかもしれませんからね。

 あっと・・ジェフ後半の集中プレーというテーマに戻りましょう。そんな決定機を逃しつづけたジェフでしたが、後半39分、やっと追加ゴールを決めました。羽生が放ったシュートがこぼれるところを要田が「ゴッツァンゴール」を決めた。とにかく、そのゴールまでは、オシムさんのハーフタイム指示をベースにした、まさにパーフェクトな展開でしたよ。ところが・・

 「2点リードしたから、これで大丈夫・・」という油断だったんですかネ。その「3-1」となる突き放しゴールが決まった直後の後半43分に、ジュビロの菊地に、中央を割って入られるドリブルから豪快な中距離シュートを決められた(これで「3-2」になった)だけではなく、終了直前には、同点にされてもおかしくない決定的ヘディングシュートを浴びてしまうのですよ。ジュビロ28番の船谷がボールを拾って素早いタイミングでクロスを上げる・・それがストヤノフのアタマを越え、後方に走り込んできた成岡にピタリと合う・・決定的なフリーヘディングシュート!・・それがGKの正面に飛んだから一命をとりとめたモノの、まさに絶体絶命のピンチだった・・さて・・。

 まあ、ジェフ選手たちにとって前半と後半の最後の時間帯に起こったことは、良い学習機会になったということです。もちろん、それをイメージトレーニング素材として効果的に再利用すればのハナシですが・・ね。

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 明日にでも、ビデオで録画しておいた「エスパルス対レッズ」を分析するつもりです。それでは今日はこんなところで・・。

 



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