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05ナビスコカップ準決勝_その2・・さて、レッズにとって新たなチャレンジへ向かうべきときがきた・・(ジェフ対レッズ、2-2・・ジェフが決勝進出!)・・(2005年10月5日、水曜日)

帰りのクルマのなかで、今日のゲームをこんなふうに反芻していました。・・まずレッズについて・・まあサッカーだから、勝つときもあるし負けるときもあるさ・・結果よりも内容の方が大事なんだ・・数日前に行われたセレッソ戦のサッカーはひどかったらしいけれど(あるジャーナリスト仲間のハナシでは、特にアレックスのプレー姿勢は最低だったから、この試合でのベンチスタートは当然・・とのことでした!)、この試合での全体的なサッカー内容は良かったし、選手たちも最後まで闘う姿勢を全面に押し出していた・・ゲームの流れからすればレッズが決勝に進んでもおかしくない展開だった・・とはいっても、オシムさんのジェフも、実際のゲーム展開プロセスからすれば順当に決勝に進んだと言える・・まあ前半は、(オシムさんの言葉を借りれば・・)選手たちが失点を恐れ過ぎたことでプレーが受け身で消極的になっていたけれど、後半にはしっかりと持ち直し、アントラーズ戦のような立派なサッカーを展開できていた・・それにしてもトゥーリオの退場は痛かった・・それまで彼が誇示していたリーダーシップや制空権からすれば、彼が欠けたことは、一人以上の選手を失ったに等しいとも言えそう・・まあ、そこでのレフェリーの判断については何とも言えないけれど・・等々。

 この試合でのレッズは、スリーバックの前に、ダイヤモンド型に、平川(右サイド)、山田暢久(センター=中盤の底)、長谷部誠(左サイド)、そしてポンテ(二列目センター)の四人を配置し、その前に、永井雄一郎、田中達也、マリッチで構成するスリートップを置くというゲームプランだったとのこと。でも私の目には、平川と山田のダブル守備的ハーフで、両サイドバックが永井と長谷部であるように映っていました。平川が中央ゾーンに入ってくるシーンが目立っていたし、永井にしても、まさに攻撃的なサイドバックというプレーをつづけていましたからね。でも実際には、永井が、ジェフの左サイドからの仕掛けを気にし過ぎていたということらしい。まあ彼は、右サイドということで、昨シーズンのプレーイメージを反芻し過ぎていたのかもしれないね。何せ、ジェフのサイド攻撃は強烈だからね。まあそれでも全体的なサッカーはしっかりと機能していたし、永井も時間を追うごとに積極的に前へ仕掛けていくようになっていきましたよ。そしてレッズ追加ゴールをお膳立てする(アシストを記録!)。

 山田暢久と平川が守備的ハーフコンビとしてうまく機能していたと思っていたのは、何度も彼らが、ジェフお得意の後方からの追い越しフリーランニングを押さえ込んでいたからです。その抑制ディフェンスは素晴らしかったですよ。まさにボールがないところでのクリエイティブな読みディフェンスでした。

 ただ後半は、ジェフが巻き返してきます。0-2とレッズにリードされ、二ゲーム合計で振り出しに戻ったことで、またハーフタイムの更衣室のなかでオシムさんに大声で叱咤されたことで(記者会見でのオシムさんご自身のハナシ)覚醒したのでしょう。そしてタイミング良くコーナーキックから「2-1」となる追い掛けゴールを決めてしまうのです(後半2分!)。自然とペースがアップしていくのも道理じゃありませんか。ところで、このゴールについてのオシムさんのコメントが秀逸でした。「アレは偶然のゴールだったネ・・まあレッズも、前半に同じような(トゥーリオの)偶然ゴールに恵まれたわけだけれどね・・」とジャーナリスト連中を笑わせるオシムさん。すかさず私は、オシムさんが考える「偶然の意味」を聞こうと思ったけれど、隣に座る大住良之さんに先を越されてしまいましたよ。「ジェフの同点ゴールも偶然だったのですか?」

 それに対するオシムさんの返事のなかで一番面白かったのは、「まあ、後からは何とでも言えるからね・・」というクダリでした。サッカーは、偶然と必然が微妙に交錯するボールゲーム。何せ、足で、イレギュラーするボールを扱うんですからね。だからこそコーチのテーマは、偶然ファクターを、いかに効果的に「必然ファクター」へと変容させていくのかということに集約されるわけです。そのプロセスこそが重要な意味を持ちます。そして、そのプロセスに自信と確信があるからこそ(まあ・・オシムさんだからこそという視点もあるけれど・・)、「ありゃ、偶然ゴールだったよ・・」なんていう半分冗談の発言もできちゃうわけです。でも実際は、あそこにボールが飛んだことと、「そのピンポイント」にトゥーリオや阿部勇樹が入り込んでいたことは、まさに(トレーニングで培った)必然だったはず。とはいっても、もちろんその中にも様々な偶然ファクターが内包されていたわけで、だからこそオシムさんは、「後で変なふうに自慢をするのは好きではない・・もっと事実を確実に把握しなければならない・・それこそが発展につながる・・理想マイナス現状イコール実効ある課題・・なのだ」と言っていたと思われるわけです。

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 そんな偶然と必然が交錯するボールゲームだからこそ、結果よりも、全体的なサッカー内容の方が大事だと思っている湯浅なのです。さてレッズ。いまの彼らのパフォーマンスは決して高みで安定しているわけではありません。中盤ディフェンスの機能性が、ちょっと減退気味だと感じます。以前のような前からのプレッシングがうまく効いていないと感じるのです。それは鈴木啓太や長谷部誠だけの責任ではありません。要は、今までになかったレベルの才能を有するチャンスメイカーが加入してきたことも、その背景にあると思っている湯浅なのですよ。ポンテ・・。

 彼の攻撃での才能には疑う余地がありません。これまでに何度も最高のパフォーマンスを魅せてくれました。でもやはり、現代サッカーではそれだけでは足りない。これまでのレッズでは、そのポジションを、山瀬功治や山田暢久、長谷部やアレックスたちが努めてきました。少なくとも彼らは、前線からの忠実なチェイス&チェックアクションといった汗かきプレーも含め、しっかりと守備に参加していました。でもポンテは、その部分で足りないところもあるのです。もちろん彼には、守備での仕事を補って余りある仕掛けコンテンツがあります。でも、だからといって、守備がおざなりでは・・。

 レーバークーゼン時代の彼は、攻守にわたるアクティブなプレーでチーム内のポジションを確固たるものにしました。でもレッズでは、どうも「オレは、仕掛けにだけ専念していればいいや・・」という姿勢が見え隠れすると感じるのです。これでは、ギド・ブッフヴァルト監督が志向するダイナミックなプレッシングサッカーからは遠のいてしまう。私は、どんなことがあろうと、ギド・ブッフヴァルトが、最後の最後までアタッキング(攻撃的なプレッシング)サッカーへ向けてチームをドライブしつづけてくれると信じています。でもそのためには、どうしても、ポンテの守備でのアクティビティーをより活性化していかなければなりません。

 そのことは、ポンテにとっても必ず良い結果をもたらすはずです。今の彼は、相手に研究されて効果的に抑え込まれてしまうといったネガティブ内容の試合が増えています。それも、攻守にわたるボールがないところでのアクションの量と質が足りないからに他なりません。特に守備・・。ディフェンスこそが、優れた守備意識こそが、サッカーの絶対的なベースなのですよ。

 私は、ポンテには、守備も含め、レッズ中盤における本物のリーダーになって欲しい、そして日本サッカーの歴史にその名が刻まれるようになって欲しいと思っているのです。彼には、誰もが認める素晴らしい才能があるのです。

 リーグではトップから離されてしまった・・またこの試合でナビスコカップからも敗退してしまった・・だからこそこれからは、原点に立ち戻り、全員守備・全員攻撃のプレッシングサッカーを本当の意味で甦らせることに全精力を傾注して欲しい・・それこそが、レッズ立ち直りの唯一の道・・それに対する全員の意志が重なり合えば、確実に結果もついてくるはず・・。さて、レッズにとって新たなチャレンジへ向かうべきときがきた。そして私にとってそれは、新たな学習機会というわけです。楽しみじゃありませんか。

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 さて私は、明日からヨーロッパ出張へ出かけます。目的はもちろん日本代表。ドイツをベースに、ラトビアとウクライナへ飛びます。またゲームのない中日やその後は、友人たちとサッカー談義をしたり、ハンブルクやケルンでブンデスリーガを観戦したりと、サッカー三昧になるはず。こちらも楽しみです。帰国は21日あたりになる予定。では・・

 



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