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ジーコジャパン(59)・・バーレーン戦以上に本来のチカラの差が明確に現れた・・その背景は?・・(北朝鮮vs日本、0-2)・・(2005年6月8日、水曜日)

地力の差が、そのままグラウンド上のプレーに投影された・・といった勝負マッチでした。サッカーですからね、はじまる前は、北朝鮮のレベルを超えたバトルパワーに期待していたのですよ。それがあってはじめて日本にとっての素晴らしい学習機会になる・・ってネ。でもフタを開けてみたら・・。

 要は、高温多湿というハードな気候的な条件と非常に悪いグラウンド状態、そして日本代表の安定したクレバーサッカー(もちろん堅牢な守備ブロックのことですよ!)によって、北朝鮮のスピリチュアルエネルギーが完全に抑え込まれてしまったということです。とにかく北朝鮮は、終始、日本とまったく同じプレーペースに「コントロールされて」いたのです。北朝鮮としては、ガンガンとアタックを仕掛けていきたいのだろうけれど、ボール奪取勝負を仕掛けようにも、スッスッとシンプルにボールを動かしてしまう日本選手たちのクレバーな組織パスプレーに、完全に機先を制され、気付いたら足が止まった心理的な悪魔のサイクルに捕らえられてしまったというわけです。そんなスローペースだったら、複合コンビネーションの量と質(イメージ的な発想レベル)で差をつけられている北朝鮮がチャンスを演出できるはずがない・・。

 また日本も、この気候条件とグランド状態だから、そんなにガンガン仕掛けていけるわけがないけれど、それでも、落ち着いたボールキープ(安定したボールポゼッション)からの「ココゾ!のペースアップ」には、確かな格の違いを感じさせてくれました。要は、互いの勝負イメージが正確にシンクロした複合コンビネーションが何度も見られたということです。でも、そんな勝負所でも、なかなかタテのポジションチェンジが出てこないから、そうそう簡単に北朝鮮ディフェンスブロックのウラのスペースを突いていけなかったのも確かな事実でしたが・・。ちょっと矛盾しているように感じるけれど、要は、北朝鮮と比べれば、仕掛けコンテンツには大きな差があるけれど、それでも、その可能性を最大限に活かせていたかという視点では不満が残るということです。

 前半の立ち上がりに加地が魅せたドリブル突破(ドリブルによるウラ突き)と、後半の立ち上がりに稲本が魅せた右サイドへの飛び出し(パスによるウラ突き)くらいでしたかネ、完璧なカタチで北朝鮮守備ブロックを崩しきったのは。あっと・・、もちろん後半に飛び出した、小笠原のドリブル&タメ&パスから、左サイドで完璧フリーな状態でそのパスを受けた柳沢のコンビネーションは素晴らしかったし(素晴らしいシュートだったけれど相手GKの正面へ飛んでしまった)、大黒の二点目が決まったシーンでの田中からのスルーパスシーンもエキサイティングでしたけれどネ。まあ、本大会へのチケットを奪い取るという、この試合での最大かつ唯一のミッションを考えれば、内容的でも満足すべきなのかもしれないけれどネ・・。

 このゲームの総評は、グラウンド状態や気候条件などに後押しされた日本が、実力の差を存分に見せつけたということになるのでしょうね。それにしても、日本の守備ブロックは安定している。それこそが、昨年からの日本代表発展を支えるキーファクターでした。守備ブロックが安定しているからこそ、ポゼッションの内容も、逃げの横パスという後ろ向きなものから、次の爆発を明確にイメージした「前向きな仕掛け準備」という進化ベクトルに乗せられていると感じるのですよ。

 全体的な論評は、そんなところかな・・。ここからは個々の選手に対する評価を簡単にまとめましょう。この試合でのMVPは、何といっても福西でしょう。守備ブロックの機能性をハイレベルにマネージしながら、攻撃でもしっかりとゲームをメイクしていました。必要ならばプロフェッショナルファールもいとわない頼れる守備的ハーフ。彼がいれば、中田ヒデや小野といった連中も、より解放されたマインドで仕掛けていける・・。何か、マケレレとジダンの信頼関係を見ているような・・。

 それに対して小笠原と柳沢。才能は誰しもが認めるところだけれど、彼らはその天賦の才を十分に活かし切っていない。数日前のバーレーン戦では、中田英寿(闘うマインドの権化&シンプルプレーの天才!)と中村俊輔がいたから、彼らもガンガンいくしかなかった(ナカナカコンビにマネージされるカタチでの自己主張!)。だから優れたダイナミックプレーが出来た。でもこの試合では、どうも十分に「自ら仕事を探せている」とは言えないと感じられた。もっとリスクにチャレンジしなければ・・。彼らのプレーでは、ここはリスクを負って勝負するしかない!という場面でも、安全パスを回すなんていうネガティブな「アリバイマインド」のプレー姿勢がまだまだ目に付いていました。それに対して後半から登場した大黒の目立つこと。彼は常に仕掛けていきました。何度失敗してもチャレンジマインドの減退することがない・・だからこそ観ている方も大いなる期待を抱くことができるし、彼自身も発展をつづけられる・・。(注:小笠原と柳沢に対する表現が、バーレーン戦での良いパフォーマンスを背景に、安易な勢いで不適切なものにしてしまったため、事後的に一部書き換えました)

 そして稲本。どうも、意図(プレーイメージ)と実際のアクションがうまく噛み合っていないと感じました。ボール奪取勝負を仕掛けていくアタックマインドは健在だけれど、うまくツボにはまらない。だから、実際に彼が高い位置でボールを奪い返して即カウンターを仕掛けていくという彼が得意なシーンを演出できない。まあ、あの気候&グラウンド条件だから(全体的なプレーペースが緩いから)仕方ないけれど、結局、攻守にわたって実効あるプレーは数えるほどということになってしまった。とにかく稲本については、今回のコンフェデレーションズカップに期待しましょう。そこで、日本代表での試合勘を取り戻し、以前のような、自分主体のチャレンジプレーを、より高い頻度で「ツボにはめられる」ように、高いチャレンジマインドで大会に臨んで欲しいと思っている湯浅なのです。何せ、あれだけのタレントですからネ。

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 とにかく日本代表が、世界でもっとも早くドイツW杯行きのチケットを奪い取ったことに対し、そのプロセスにおける結果(勝利)プライオリティーのサッカー内容も含めて、ジーコジャパンに対して大いなる敬意を表していた湯浅だったのです。

 さて、これからジーコは、「組織プレーと個人プレーが高質にバランスした、美しくて強い理想サッカー」を目指す方向へと舵を切っていくはずです。これまでの唯一のミッションは地域予選の突破・・そしてここからは・・。

 世界では、アルゼンチン、チェコ、オランダが、上記の視点でもっともバランスの取れたチームだと思うのですが、ジーコジャパンが、どれだけ彼らのレベルに迫れるか注目しないわけにはいきません。何といってもW杯におけるジーコジャパンのミッションは、世界シーンでの日本サッカーの存在感アップですからネ。

 次は、ドイツからのレポートということになります。さてこれで、こちらも解放されたマインドで、とことんコンフェデレーションズカップを楽しめるゾ! おめでとう、そして有り難う、ジーコジャパン!!

 



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