トピックス


ヨーロッパの日本人・・今週は、中村俊輔と高原直泰・・(2005年5月9日、月曜日)

またまた中田英寿はグラウンドに姿をみせず、小野伸二はケガで連休中。ということで、今週は、中村俊輔と高原直泰について簡単にレポートしておくことにします。まず中村俊輔からですが、彼のプレーについては、前節の途中出場したときのプレー内容も含めてしまいましょう。

 俊輔については、まず感嘆詞から。「スゲ〜〜な、ほんと・・動きの量と質を発展させながら、攻守にわたる実効レベルがどんどんと高揚しつづけている・・とにかく、彼がボールを持ったら、常に仕掛けの起点になっている・・そこには、以前のような、リスクを避ける後ろ向きの安全(逃げ)プレーなど皆無・・」等々。

 でもまずディフェンスから・・。前半11分、相手のカウンターチャンスを敏感に察知し、素晴らしく「早いタイミング」のスタートで、相手のタテパスをカットしてしまう中村俊輔。もちろんそれは、足の遅い中村独特のディフェンス勝負タイミング(勝負の全力ダッシュをスタートする独特のタイミング!)。要は、以前とはまったく次元が違う、正確な読みを主体にした実効あるボール奪取勝負が展開できているということ。そんな素晴らしいディフェンス参加を当たり前のようにこなしてしまう中村。そんな目立たない汗かきプレーこそ、まさに本格感そのものなのですよ。

 また、ボールホルダーを追い回すチェイス&チェックアクションに対する積極的な意志も目立つ。それは次の味方のボール奪取勝負を「支援」する動き。それこそまさにクリエイティブなムダ走りというわけです。もちろん彼自身のボール奪取テクニックも格段の発展を魅せています。例えば、相手ボールホルダーが自分のことを意識しなくなった瞬間に狙いを定めて全力ダッシュでアタックしていったりとかネ。それこそ「ハンターのマインド」。ボールを奪い返すことにも楽しみを見出した中村俊輔ってな具合。それこそ、彼が本物の発展ベクトル上に乗っている証拠です。

 まず守備からゲームに入っていくというイメージ。そんな主体的な姿勢が彼の攻撃プレーを発展させないはずがありません。ボールがないところでの動きのハイレベルな量と質をバックボーンに、ボールタッチ頻度が格段に上がっていると感じます。もちろんそこでは、自分がもらいたい場所とタイミング、そして理想的な体勢でのパスレシーブということになります。そしてボールを持ったら王様・・。素晴らしいボールコントロールから繰り出される仕掛けのパス、周りの状況を読み切った勝負のダイレクトパス、タメからのスルーパス、はたまた突破ドリブル・・等々、常に積極的な仕掛けマインドを前面に押し出すのです。

 中村俊輔がボールをコントロールして正対したとき、相手ディフェンダーがビビッているのが画面を通して伝わってくる。「あの」イタリアの猛者連中が・・。いや、大したものだ・・なんて頼もしく思っていたら、前線でのボール奪取勝負で相手のタックルとまともにブチ当たり右足の内側じん帯を伸ばしてしまって・・。

 片足を引きずりながらも立って歩けていたから、もしかしたら短い期間で再びフィットできるかもしれません。とにかく、すぐに氷でギンギンに冷やすだけではなく、同時に、適当な化学治療も施さなければなりません。「じん帯を伸ばしたとき、その場での治療内容で、治癒の期間が何倍も違ってくる・・」。私の恩師だった、ケルン体育大学運動生理学のリーゼン教授がそんなことを言ったことがあります。その言葉通り、ある者は1瞬間でフィットしたのに、その場での治療が十分でなかった者は、その後3週間も苦しんでいましたからネ。中村俊輔の早い回復を心から願っています。とにかく、持病の腰も含めて、この2-3週間を存分に活用して、とことんフィットしましょう。ヒザ以外は、呼吸系も含めて十分にトレーニングできるでしょうからネ。とにかく頑張れ、中村俊輔!!

 注釈:その後、中村俊輔が「何もせず」にそのままベンチでゲームを観戦しつづけ、ある程度の時間が経過してからアイシングした・・また化学療法もなかった(?!)・・なんて報道を目にしました。レッジーナのマネージメントは素人か!! 一体、何を考えているんだ!!! そんな憤りエネルギーが壁を突き破ってしまいましたよ。たしかにテレビ画面では、中村がベンチでアイシングしている映像は見ていない・・。そんな信じられないことを聞いて(まあ本当のところは分からないけれど・・)、とにかく深〜〜くため息をついていた湯浅だったのです。

---------------------

 さて、このゲームでは先発メンバーに名を連ねた高原直泰。今節は、ホームでメンヘングラッドバッハとの対戦。とにかくものすごくキビシイ闘いになるに違いない・・。何せ相手にとっては、降格ギリギリのところにいるということで、サバイバル戦ですからネ。降格候補クラブと上位クラブとの対戦では、ロジカルな実力よりも心理的なスピリチュアルパワーの方がモノを言うのですよ。案の定、先日のローシュトック対ベルリン、メンヘングラッドバッハ対シュツットガルトでは、「降格リーグ」を戦っているローシュトックとメンヘングラッドバッハが勝利をおさめました。ホンモノの心理ゲームであるサッカーの面目躍如といったところじゃありませんか。

 そんな前提で観はじめたゲーム。たしかにメンヘングラッドバッハの勢いはレベルを超えていたけれど、ホームを戦うハンブルクもまた、次年度のヨーロッパ戦(UEFAカップ)の出場権を懸けているから気合が乗っている。ということで、この試合では、ロジックな実力の差が、ゲームコンテンツの差となってグラウンド上に現れていました。要は、ハンブルクがゲームを支配するという展開です。

 そのなかで高原は、素晴らしい立ち上がりを魅せます。自身が抜け出してシュートを打ったり、ムペンザやバルバレスとのワンツーを決めたり・・。またシンプルで確実な中継プレーも良いし、ココゾの場面では、汗かきの守備でもしっかりと機能します。以前、そんな彼のことを「本格感」というキーワードで表現しましたが、とにかく彼の場合は、進化していること自体が大きな意味をもっているのですよ。天から与えられた才能を、常に100パーセント以上発揮する・・。まあ、そういうことです。でも、時間が経つにつれて、グラウンド上での存在感が薄れていってしまう・・。

 その原因は、メンヘングラッドバッハの強化守備ブロックが素晴らしい機能性を魅せていることに尽きます。周りの味方が抑えられているから、個のチカラで限界がある高原だけが効果的な勝負を仕掛けていけるはずがない・・。やはり高原は、周りとの組織コンビネーションがうまく機能するなかで(コンビネーションの流れのなかで)チカラを発揮するタイプのストライカーだということです。だからこそ、スピードのムペンザ、テクニックとチャンスメイクセンスのバルバレスと、うまく三角形を作れるというわけです。でもこの試合では、そのコンビネーションの流れが、メンヘングラッドバッハ守備ブロックによって堰き止められてしまった・・。とにかく、忠実で激しいマンマークをつづけたメンヘングラッドバッハ守備ブロックの集中度には舌を巻いていた湯浅でした。

 それにしても、メンヘングラッドバッハのゴールキーパーは素晴らしい。アメリカ代表のケラー。彼は、シドニーオリンピックで日本代表と戦ったときのアメリカ・オリンピック代表のゴールキーパーでもありました。そのときも、何度も鬼神のセービングを魅せつづけ、我々のため息をさそったものです。

 そして結局ゲームは、0-0で終了。ハンブルクにとっては(ゲーム終了間際には何度も100パーセントのチャンスを作り出した!)、痛い引き分けということになりました。もちろん逆にメンヘングラッドバッハにとっては、貴重な、本当に貴重な「勝ち点1」です。強者たちのギリギリの攻防。見方さえしっかりと持てば、それなりに見所十分の勝負マッチではありました。

 途中で交代した高原直泰。相手の強化守備ブロックを「開く」ような激しいボールなしの動きを魅せてくれたら言うことなかったのだけれど・・。もっともっと最前線でのボールなしの動きを活発にくり返すことで(パスを呼び込む動きを活性化することで)、ハンブルクの組織コンビネーションも活性化させられたはずだと思うのですよ。そんな、人とボールが活発に動きつづける流れのなかでこそ高原は存在感をアップさせられる・・。最前線での素早く効果的な「動き出しのしつこい繰り返し」など、かつてのチームメイト、中山ゴンのチーム貢献プレーこそが、いま高原に求められているプレーイメージなのかもしれない・・。

 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]