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ヨーロッパの日本人・・完全に全快基調に乗っている中田英寿・・途中出場でも、なかなかの実効パフォーマンスを魅せた中村俊輔・・(2005年2月14日、月曜日)

さて、先発の中田英寿。相手は、彼の古巣であり、いまはフィオレンチーナの「降格ライバル」にもなっているパルマ。中田の基本的なポジショニング(タスク)イメージは上がり目ミッドフィールドで、攻守にわたってかなり高い自由度を与えられています。問題・・というか、復調ベクトルに乗っている今の中田の課題は、その自由度を、どのくらい実効あるカタチで活用できているのかというポイントです。要は、攻守にわたって、どのくらい効果的に「自ら仕事を探し出せているのか」ということです。

 もちろん私は、その「仕事」は絶対にディフェンスからスタートすべきだと常日頃主張しているわけです。相手からボールを奪い返すプロセスにおける貢献度こそが、味方の信頼レベルと、自らの(チームの目的に実質的に貢献できているという)自信レベルを引き上げ、それが次の攻めにおけるダイナミズム(活力)を高揚させる。そのことは、特に、ボールがないところでのパスレシーブの動きとか、仕掛けコンビネーションのコアとして機能しようとする意志・イメージとか、攻撃最終段階での「タメや勝負ドリブル」に象徴される、個人勝負プレーを仕掛けていこうとする意志とか・・そんなところに現れてくるというわけです。

 そんな視点で中田のプレーコンテンツは、絶頂期から比べれば、まだ慎重さとか注意深さの方が目立つけれど、全体としては上り調子ということかな・・。ちょっと奥歯にモノがはさまったような表現で申し訳ないけれど、それ以上うまく表現できない。何せ、中田ヒデに対する期待レベルはものすごく高いですからネ。

 守備については、チェイス&チェックアクションにしても、次のパスレシーバーに対する狙いにしても、1対1のボール奪取勝負にしても、ボールなしのマーキングにしても、実効レベルが十分満足できるところにあるとは言えません。ディフェンスの勝負所に絡みつづけようとする積極的な意志(イメージ)は明確に見て取れるから、ディフェンスの実効レベルについては、まあ、それを引き上げる感覚的な鋭さだけがまだ十分にリカバーされていないという表現に落ち着きますかネ。意志・イメージは明確に見えるけれど、どうも勝負所に絡んでいくタイミングを失していることで、うまく実効レベルを引き上げられないというシーンが目立つ・・。

 でも次の攻撃での実効レベルは、時間の経過とともにどんどん高まっていったと感じました。ゲームのなかでの発展プロセスに応じてボールも集まってくるようになったし、前半ではまだ低かった「シンプル展開プレー」でのチャレンジ度も、後半にかけてどんどん高揚していきましたしね。チャレンジ度とは、ボール絡みプレー(シンプル展開パス、タメからの勝負パス、スペースをつなぐドリブル、勝負ドリブル等など)が、どのくらい次の最終勝負のベースシチュエーションを演出できているかということです。しっかり観察していれば、勝負のタテパス、勝負ドリブル、タメからのスルーパス等などに対するチャレンジマインドの度合いは明確に感じられるものですよ。もちろんそれらは、「今のは、建て直しのための安全展開パスだよ・・」なんていう逃げ口上が聞こえてきそうな「単なる逃げの横パス」とは根本的な意味・意義が違うということです。

 中田のボール絡みプレーからは、どんどんと、そんな「実効チャレンジ度」がアップしていると感じていました。後半では、サイドチェンジパスも含めてリスキーな仕掛けパスのオンパレードだったし、自らもシュートポジションへ押し上げていくなど、彼自身の自信と確信レベルの高揚を肌で感じることができましたからね。

 確かにまだまだではあるけれど、それでも完全に復活基調に乗っていることだけは明確に認識できたことでハッピーだった湯浅でした。これまでに何度も中田の復活ドラマを学習機会として活用してきたし、そこからポジティブなエネルギーをもらったから、日本代表での復活ドラマも含めて今回も・・なんていう期待が高まっていた湯浅でした。

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 さて、後半14分から途中出場した中村俊輔。

 移動の疲れ? 相手がミランということでの守備的ゲーム戦術? でもこの試合はホームだし、中村の守備での実効レベルを考えたら・・、なんてことも考えていたけれど、中村とチームの大きな発展を支えつづけているマッツァーリ監督の決定だから、ここは心から尊重しなければいけません。

 今シーズンになってからの中村のプレー姿勢やチーム全体のサッカーコンテンツをみていれば、監督の優れたウデが目に見えてくるというわけです。特にチーム全体のサッカーコンテンツの発展には目を見はらさせれる。全員での組織ディフェンスレベルの発展だけではなく、攻撃でも、組織プレーを強烈にイメージしたシンプルプレーと、ボールのないところでの忠実&クリエイティブなムダ走りの積み重ねなど、レッジーナが展開する高質サッカーには、監督のウデが明確に見えてくる現象がてんこ盛りなのです。

 そんなだから、レッジーナの好調さは当然の成りゆきというわけです。相手がミランであろうと、心理・精神的に押されることなく、存分に実力を発揮し尽くすレッジーナ。その自信と確信レベルの高さこそ、監督さんのウデの証明なのです。でも前半39分に、不運なオウンゴールでリードを奪われてしまったレッジーナ。ということで、(メストのケガもあって?!)後半14分に中村俊輔が登場したというわけです。

 でもサ、登場して最初の10分間、交代したメストと同じ右サイドに入った中村は、そのポジションに張り付いてしまった・・。それは、ベンチからの指示が行き届いていなかったから?! まあそれでも、攻守にわたって、ある程度の忠実プレーはできていたけれど、やはり彼の基本ポジション(基本タスク)は前気味ハーフだよね。そして、やっと後半25分を過ぎたあたりから、モザルトやパレデス、テデスコたちによるカバーリングが機能しはじめたことで、中村俊輔本来のプレーコンテンツが輝きはじめたというわけです。

 前線でタメを演出したり、ガツガツとボールを奪いにくるガットゥーゾのアタックを、軽くフェイントをかけてかわしたり、前線でスッとフリーになってタテパスを受け、間髪を入れずに決定的スペースへのスルーパスを決めたり(中村を信頼する仲間が、しっかりと決定的フリーランニングを仕掛けていた!)、もちろん例によっての大きく曲がるフリーキックでチャンスを演出したり、後方からの正確なロング勝負パスで仕掛けのキッカケを演出したり等など、抜群の存在感を誇示していましたよ。

 まあたしかにこの試合での中村は、ボール奪取イメージが(いつも以上に!)希薄ということで、強烈な意志を込めた守備での全力ダッシュ姿勢が見えにくかったり、ボール奪取勝負シーンにうまく絡めなかったりといったディフェンスでの課題が見え隠れしていたし、攻撃でも、ボールがないところでのパスレシーブの動きに勢いが乗らなかったり(強烈な意志が込められた全力フリーランニングが出てこない)など、ちょっとフラストレーションがたまる場面もあったけれどネ・・。

 とにかく、「オレは途中出場でうまくチームに貢献できるタイプじゃないから・・」なんていうネガティブなことを言うのではなく、どんな状況でも攻守にわたって自ら仕事を探しつづけることで、常に(出場した次の瞬間には)存在感を最高レベルにまで引き上げられるような強い意志を持たなければなりません。要は、これからの彼にとっての本当のテーマは、リーダーシップと呼ばれるモノなのですよ。もうそろそろ、「それ」をターゲットイシューにしてもいい頃でしょう。

 それにしてもミランは勝負所をよくわきまえている。一点リードされ、相手がガンガン押し上げてきている状況って、ヤツらのオハコだよネ。この試合でも、そんな状況から、何度か、ゴールにならない方がおかしいという決定的カウンターを見舞っていた。まあヤツらのホーム(サンシーロ)だったら、あと2-3点ブチ込んで大勝・・ってなことになっていたかもしれない。

 



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