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天皇杯決勝・・親愛なるオジー・・You deserved it!・・(ヴェルディ対ジュビロ、2-1)・・(2005年1月1日、土曜日)

「いまヴェルディの若手が(解放された)活躍ができているのは、林健太郎と小林慶行という才能あるベテランが、守備と、前線へのボールの供給に徹しているからだと思うのですが・・」。

 例によって試合後の監督会見でオジー・アルディレスに質問をぶつけてみました。実のことをいうと、それは二つ目の質問。一つ目は、「オジーさんが言う経験とは?」というもの。それに対しては、「例えばイエローカードの数・・ジュビロは、しっかりと抑制できていた・・それに対して我々は不用意なイエローを受けすぎた・・経験とはたくさんのゲームをこなすこと・・それを通して、勝負所でのプレーコンテンツに対する感覚を鍛える・・ジュビロは、1点を追わなければならない状況でも、ロングボールを使わずに、しっかりと後方から組み立てていた(実際は、下がった名波が、つねにフリーで効果的な球出し役として機能していた!)・・ジュビロはあらゆる攻めのカタチを作り出してた・・追い込まれた状況でもあのような効果的で危険な攻めを組み立てられることも経験が為せるワザ・・などなど」と、真摯に答えてくれました。そして(もちろん他の方から質問がなかったから)つづけて冒頭の質問をしたというわけです。

 でもネ・・私が質問のためにマイクを持つのを見たオジーが、ため息をついて背もたれに大きく寄りかかっちゃって・・。だから私の質問の第一声は、「そんなにため息をつかないでくださいよ・・」でした、あははっ。まあちょっとネ・・昨シーズンは、厳しい質問をした時期もありましたからネ・・。そして、ちょっと微笑んで座り直したオジーが、「そう・・今シーズンの林と小林慶行の活躍は素晴らしかった・・特に林健太郎はチームの支柱といえる・・彼がいたからこそ、若手は様々なことに気を遣わずにプレーできた(発展のキッカケを掴めた)・・」と答えてくれました。

 実は、その質問で本当に聞きたかったことは、「世代交代を効果的に推進していくためには、まだ使えるベテランの能力を、いかに若手のプレーマインドが阻害されないカタチで最大限に発揮させるのかというテーマがもっとも重要なポイントになると思うのだが・・」というものでした。リーグ戦(セカンドステージ第11節)でジュビロに惜敗した後に質問したときは、「ベテランは若手の発展の邪魔をするものだけれど、オジーさんはそれをどのようにマネージしているのか・・」と直接的に聞いたのですが、そのときの答えは、完全に内容をはぐらかされた無関係のものでした。だから今度はちょっと目先を変えようとしたのだけれど、やはり今回も、このテーマに関する実質的なヒントはなしということになってしまった・・。通訳の羽生直行さんは完璧なスーパー・トランスレイターだから、訳に問題があったとは思えない。もちろん直接的には答えられないのは分かるけれど、マネージメントのヒントくらいはくれてもいいのに・・なんて、ちょっと落胆したものでした。

 これでヴェルディは、ノドから手が出るほど欲しかったタイトルをもぎ取りました。要は、オジーが言う「経験」を、これ以上ないという実効あるカタチで積み重ねることができたということです。自信と確信レベルの高揚・・。来シーズンのヴェルディは、確実にリーグの台風の目になることでしょう。ベテランの「縁の下の力持ち的プレー」を支えにした若手のパフオーマンスアップをコアにしてネ。つまり、この「世代交代のコツ(実質的コンテンツ)」というテーマについては、来シーズンいつでも聞けるチャンスがあるということです。来シーズンのヴェルディは、新たな学習機会を提供してくれそうです。

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 試合ですが、ラジオ文化放送の解説をしていたから、メモが取れる状況ではありませんでした。ということで、ここでは、ゲームの流れを大まかに把握するだけにします。悪しからず・・。

 立ち上がりのジュビロは、前から仕掛けていくという意志を前面に押し出していた・・これはポーズだったのか、チーム内での意志の統一手段だったのか、すぐにヴェルディが盛り返し、リーグ戦でのゲーム展開のように、今度は彼らがゲームを牛耳りはじめてしまう・・今のヴェルディは、以前のように、ポールポゼッションを高めることが目的のような「歪んだサッカーイメージ」ではなく、とにかくシュートを打つという攻撃の目的を達成しようと全力で仕掛けつづける活きの良いサッカーを魅せてくれる・・そんなプレー姿勢だから、平本や飯尾が立てつづけに決定機を迎えるのも道理・・そこでは、左サイドの相馬の吹っ切れたドリブル勝負が特筆もの・・対する河村も負けてはいない・・この二人が展開する見所150パーセントという勝負は、試合終了までつづいていた・・

 ・・そんな、やられっぱなしという雰囲気が漂っていたジュビロも、徐々に押し返していくけれど、いかんせん仕掛けのテンポをアップさせられない・・ジュビロは、以前のような、ボールがないところでの激しい動きをベースにした創造的で危険なボールの動きを演出できない・・だから、ボールはキープしているけれど、どうしてもシュートシーンを演出するところまでいけない・・そんなジュビロだったけれど、コーナーキックやフリーキックなどのセットプレーでの危険度はサスガ・・そこで中心になる「あうんパートナー」は、言わずと知れた名波と福西・・この二人が演出するニアポスト勝負などは見所満点・・

 そんな展開のなか、今度はヴェルディが、危険なカウンターを繰り出しはじめる・・そんな相手の反抗に、ちょっと前への勢いを殺がれてしまうジュビロ・・ヴェルディはなかなかしたたかな試合はこびを魅せているけれど、前半の30分あたりまで、何度か作り出したチャンスもモノにできず時間だけが過ぎていく・・オジーは感じていたに違いない・・「やはり経験レベルが違う・・このままだとやられてしまう・・」・・でも次の瞬間、やっとヴェルディが「ブレイクスルー」のキッカケを掴むことになる・・セットプレーからの飯尾の先制ゴール・・

 ・・やはりゴールに優る刺激はない・・この失点で、ジュビロ選手たちの意識に火がつき、彼らのサッカーが何倍も活性化してくる・・そして、ジュビロ絶頂期に魅せた「人とボールがよく動くクリエイティブサッカー」の香りが強くなっていく・・前とは違う、危険度の高いポゼッションサッカーを魅せはじめるジュビロ・・さてこれからだな・・なんて思っていた前半44分、攻守をつなぐ「カナメ・コーディネーター」小林慶行が二枚目のイエローで退場になってしまう・・チームになくてはならないところまで高まっていた小林慶行のパフォーマンスを失ったヴェルディ・・さて・・

 ・・当然後半は、ジュビロの前への勢いが倍加してくる・・それをしっかりと受け止めるヴェルディ・・うまく守備ブロックが前後にバランスしている・・だからこそ、高い位置でボールを奪い返せるチャンスも多く作り出せている・・後半8分、そんな活性化した守備姿勢が功を奏し、平本の一発カウンタードリブル勝負が決まって追加ゴールを奪い取ってしまう・・これで「2-0」・・とはいってもそれは「もっとも危ないゴール差」でもある・・この試合はもらったという安易なマインド・・

 ・・その後は、案の定ヴェルディの守備ブロックが「消極的で受け身の姿勢」に落ち込んでいく・・中盤ディフェンスが最終ラインに組み込まれたり、守備人数が多すぎることで互いにマークを譲り合ってしまったりボールウォッチャーになってしまったり・・まさにドーハの悲劇を見ているよう・・そこには、率先して汗かきプレーをこなすだけではなく、チームメイトたちを叱咤激励できるだけの確固たるリーダーがいない・・そしてジュビロが「追いかけゴール」を決めてしまう・・これで「2-1」・・さて本物のドラマがはじまった・・

 交代出場した中山ゴン、藤田俊哉が魅せつづけるボールがないところでの刺激プレーの効果レベルが際限なくふくれ上がっていく・・西がワンツーで抜け出してフリーシュートを放ったり、オーバーラップしてきた田中が惜しいシュートを放つなどなど、ジュビロの捨て身の仕掛けがドラマを最高潮へと導いていく・・でも結局は・・

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 「本当に嬉しい・・クリスマスと新年を日本で過ごした甲斐があった・・我々は、このステップがノドから手が出るほど欲しかった・・良いプレーをするだけではなく、それで勝つことがいかに大事なことか・・後半は厳しい状況だったが、最後まで守り切れたことも大きい・・とにかく来シーズンにつながる素晴らしい結果だった・・」

 オジー・アルディレスは手放しで喜んでいました。「You deserved it・・」。会見場を後にするオジーに拍手しながら、そんな言葉もおくっていました。

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 さて私は、これからオフに入ります。もちろんサッカーは観ますがネ。そして8日あたりからはヨーロッパへ。アチラでは、私が卒業したドイツプロコーチ養成コースの開講式に参加したり、ハンブルク監督やその他のサッカー関係者にインタビューしたり、ブンデスリーガを観たり・・。機会を見て簡単にレポートするつもりです。それでは皆さん、明けましておめでとうございました・・

 



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