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05_コンフェデ_9・・ドイツ的な素晴らしいゲーム内容に勝利を確信していたけれど・・(ドイツ対ブラジル、2-3)・・(2005年6月25日、土曜日)

フ〜〜ッ。これで、「マイチーム」が両方とも片づいてしまった(ドイツは三位決定戦があるけれど・・)。

 ドイツは、持てるチカラを120パーセント発揮する素晴らしい闘いを展開しました。だから、この敗戦が残念で仕方ありません。何せブラジルが流れのなかでドイツ守備ブロックのウラを突いて作り出したチャンスは数えるほどしかありませんでしたからネ。要は、ドイツが、ブラジルの武器をほぼ押さえ込み、逆にドイツ的な組織プレーでブラジル守備ブロックを振り回すなど、ロジカルなチャンスを作り出したということです。

 昨日オランダで行われた「U20世界選手権」でも、準々決勝でドイツがブラジルと対戦しました。とにかくブラジルに余裕を持たせないくらいに前からプレッシャーを掛けつづける・・。そのコンセプトに基づき、前半は、完璧にブラジルにサッカーをやらせなかっただけではなく、例によっての、タテのポジションチェンジを最大限に活用する直線的な迫力攻撃で何度もブラジルゴールを脅かしたドイツの若武者たち。テレビ観戦するコチラも勇気をもらったように感じたモノです。

 でも後半に入ってからは、徐々にブラジルにチャンスを作り出されはじめてしまうドイツU20代表。要は、ブラジルのボールの動きが、ドイツのプレッシャーをうまくかわせるほどに活性化したということです。そして逆にドイツ守備の足が止まり気味になるだけではなく、視線と意識がブラジル人が扱うボールばかりに集中しはじめてしまう(ボールウォッチャー)。それこそ、ブラジルの「オハコ」なのですよ。

 今日のゲーム開始前、急に創作意欲が出て「爆発タイプ」したコラムでも書いたのですが、そこでこんなことを書きました。『ブラジルの攻撃でのキーワードは、相手守備ブロックをボールウォッチャーにしてしまうこと・・そのベースになるのが、突っかけるドリブルやギリギリのタメなどに代表される個の仕掛けプレー・・そこで相手ディフェンスの視線と意識を引き寄せた次の瞬間に、スッとボールを動かされ、そのバイタルゾーンとはまったく違う場所で勝負を決められてしまう・・ノールックの斜めラストパスや、抜くぞ!抜くぞ!という突っかけから放たれるギリギリのスルーパス等々・・だからこそ、1974年アメリカワールドカップでの展開された、イタリア守備の天才バレージによるカバーリングが、伝説的なスーパー守備プレーとして今でも語り継がれている・・』なんてネ。

 ドイツの若武者たちは、たしかにブラジルのツボにはめられてしまいましたが(最後まで立派に闘った!・・たしかに内容では圧倒された時間帯もあったけれど、勝つチャンスも十二分にあった!・・でも結局、延長で決勝ゴールを奪われて惜敗!)、それに対して、ユルゲン・クリンズマン率いるフル代表の方は、まさに内容でも、自分たちの戦術イメージそのままに、ブラジルを自らの術中にはめ込んでしまうのですよ。個のステーションをことごとくチェックすることで、次、その次までのボールの動きをコントロールししてしまうドイツ守備ブロック。そんな寸詰まりの流れでは、ブラジルが最後の仕掛けに入っていけないのも道理です。

 最初のゴールは、アドリアーノのフリーキックが選手に当たってコースが変わったというもの。ドイツの同点ゴールはコーナーキックにピタリと合わせたポドルスキーの一発ヘディングシュート(戻りながらのヘディング・・よくあれだけ強く正確なヘディングシュートが出来た!)。ブラジルの勝ち越しゴールとドイツの同点ゴールは、ともにPK。それで前半だけで「2-2」ですからね。実際のゲームの流れとは別に、ゴールだけはたくさん入るエキサイティングな展開ですよ。とはいっても、ゲームの流れの「実際コンテンツ」自体は確実にドイツのモノだったから、ハーフタイムでのドイツ人ジャーナリストたちの顔も明るかったですよ。

 昨日までのメディアニュアンスは、世界一のブラジルに、タイトルがかかった勝負の大会でどこまでドイツ代表のサッカーが通用するだろうか・・といった懐疑的なものがほとんどでしたからネ。でもフタを開けてみたら、立派な、まさに互角以上のサッカーじゃないですか。見ている方が嬉しくなるのも道理ってなものです。アドリアーノの決勝ゴールが決まるまで、「このままの展開で、最後はドイツが、一発セットプレーで決勝ゴールだ!」なんて確信していた湯浅だったのです。でも結局は・・。だから、ちょっと落胆の幅も大きい・・。

 ここで、ドイツ代表が展開したサッカーのコンテンツに、ちょっと入りましょうか。ドイツ代表は、例によっての縦横無尽のポジションチェンジをどんどんと繰り出すといった吹っ切れた勝負を仕掛けていきます。チャンスがある者は、誰でも仕掛けの最終シーンへ絡んでいっていい・・。そんなダイナミックなコンセプトに基づき、どんどんとタテのポジションチェンジを繰り出していくドイツ代表。

 まずドイツの最初のシュートを放ったのは、この日は左サイドバックを務めたベルント・シュナイダーですからネ。いや、素晴らしい「組織力」じゃありませんか。この日ドイツ代表が魅せつづけた「ミッドフィールドでの機能美」は格別。ベルント・シュナイダーとフリードリッヒの両サイドバック、守備的ハーフの一翼を担うエルンスト、そしてミヒャエル・バラック、ダイスラー、二列目のポドルスキーが、本当に縦横無尽にポジションチェンジをくり返すのですよ。

 このポジションチェンジだけれど、大雑把に分けたら、チャンスを見つけてタテへ飛び出していった味方を、その流れに乗り遅れた者がカバーするというタイプと、「行け! 行け〜〜っ!!」と、戻った前線の選手が、後方の選手をタテへ送り出すといったタイプがあります。ドイツの場合は、それらが半々といったところ。でもまあ自己主張の強いドイツ人だから、選手たちは、一人ひとりが常に仕掛けのチャンスを狙いつづけているに違いありませんがネ・・。

 そして、そんな「縦横無尽のポジションチェンジ」を支える、個々の優れた守備意識。それには気候条件をベースにした生活文化的な背景もあるでしょう。寒い国のドイツ・・働かなければ行き倒れになってしまう・・基本的には「個」だけれど、他のヨーロッパ諸国から比べれば互いに助け合う共同体の意識も強い・・たしかに(自由に対する限りない欲求も含めた)自己主張も強いけれど、責任を果たす意識も徹底的にたたき込まれている・・。ということで、やはりドイツ的な質実剛健なプレー姿勢には、気候的な条件がもっとも大きく影響しているということなんでしょうね。

 とにかくドイツ代表は、若手の台頭も含め、積極的なリスクチャレンジ姿勢と、前へ向かう攻撃的姿勢がベースになったバランス感覚(仕掛けの流れに乗り遅れた選手の次の守備に備えるバランス感覚)がうまくつり合いがとれていると思います。これからの彼らの発展が楽しみて仕方ありません。それにしてもアドリアーノは凄いね、ホント。この試合では、最初のPKになったシーンと、最後の決勝ゴールのシーンでは、ドイツ代表のフートがやられてしまいました。たしかに、全盛期のヴェルンスやリンケのような勝負強さにはまだまだだけれど、確かなキャパはあると期待している湯浅なのですが・・。

 さて湯浅は、これから(現地2300時)、明日のアルゼンチン対メキシコ戦が行われるハノーファー方向へ(北へ)200キロほど移動します。そこで寝てから、ゆっくりとハノーファー入りの予定。こうなったら、決勝でブラジルとアルゼンチンの対決が見たい。メキシコには悪いけれど・・。ではまた明日。例によって、乱筆・乱文・誤字・脱字・・・失礼。

 



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