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05_コンフェデ_3・・ジーコジャパン(61)・・ジーコジャパンの変化の胎動について考える・・(2005年6月17日、金曜日)

昨夜は、コラムをアップした後、ハノーファーを後にし、一路ケルンへ向かいました。時間は既に真夜中。疲れ切っているし危険だから、そのままケルンの常宿まで行き着けるはずがない。ということで、どこか途中でアウトバーン・レストエリア内にあるホテルで寝ることにしようと思った次第。小一時間ほど走ったところで良い施設がみつかり、すぐにチェックインしてベッドへもぐり込みました。そして6時間くらい爆睡。目覚めは久しぶりにスッキリしたものでした。朝風呂に入ってリラックスした後、「5min.エッグ」やハム&チーズなど、ドイツ風の朝食に舌鼓を打ってから再びケルンへ向けてスタートです。

 ケルンとブレーメン&ハンブルクを結ぶ「アウトバーン一号線」では、ケルンの手前50キロは、三車線で速度制限もなく、とにかく気持ちよく(冷や汗をかかずに)ブッ飛ばせるルートになっています。今日一日のエネルギーを生み出すというニュアンスも込めてアクセルを踏み込んだ湯浅でした。そのときの最高速度は「240キロ超」ってなところかな。もちろん、交通量が少なく、クルマの総合性能を深く信頼しているからこそ出せるスピード領域というわけです。今回借りたのはBMWの5シリーズですからね。安定していること、この上ありませんでした。普段はエコロジー志向もつよく意識している(実際には十分なエコロジー生活ができていないことをしっかりと意識している!)湯浅なのですが、たまにはいいでしょ・・なんてネ。

 そして到着したケルンのメディアセンター。そこで、昨日の試合について、しっかりと考えをまとめようとイメージを巡らせていた湯浅なのです。それには、昨日のゲームの後に話したドイツの友人たちの日本代表に対するコメントが、総じてネガティブだったこともありました。たしかに現象面と結果ではそうだけれど・・表面的な現象の背景は深いんだぞ・・なんてことを思いながらも、昨日のゲームでの現象コノテーション(言外に含蓄される意味)について考えをまとめようと思考回路をいろいろと調整していたというわけです。

 精神的にもっと強くならなければならない・・とにかく、すべてが足りない・・。昨日の試合後に中田ヒデがそんなことを語っていたとか。彼が描くサッカーの質に関するイメージターゲットは非常に高いレベルにあるから、もちろん昨日の試合内容には不満だったことはよくわかる・・。もちろんその背景に、世界にアピールできる良いサッカーを志向するという、W杯のアジア予選を勝ち抜いた後の、それまでとは違うミッションがあるのは言うまでもありません。

 とはいってもネ、あれだけ「ソリッド」にまとまったサッカーを展開し、大きな成果を為したのだから、急にその「フレームを大きく変える」というわけにもいかないだろう・・。

 試合後にアップした私のコラムのニュアンスは「総体ポジティブ」でした。もちろん私も、日本代表の攻撃におけるチャンスメイク・コンテンツ(仕掛けプロセスまではスムーズだけれど、最終勝負では危険なニオイを放てないという事実!)には、ちょっと閉口気味だったけれど、勝負を第一義的なターゲットにするジーコジャパンとしては、なかなかステディー(安定した)試合はこびだったと思っていたのですよ。要は、全体的なゲームの流れは確実に日本にあったと確信していたから、そのようなポジティブニュアンスになったというわけです。

 でも試合後に話した友人たちの評価は、総じてネガティブなものでした。「本当にガッカリさせられた・・」「運動量が足りないし、1対1での闘う姿勢も十分じゃない・・」「もっと積極的に仕掛けていかなければ、あの試合のようにゲームを相手に掌握されてしまうのも道理・・」「高さに問題があるけれど、対策が十分に取られていたとは考えにくい・・」「とにかく最後まで闘う意志の高揚が感じられなかったことは残念・・」「疲れている? 予選を突破したことでモティベーションがダウンしていたのか?」「最終勝負の内容が、まったく危険ではなかった・・あれでは、メキシコ守備ブロックが余裕をもって対処できるのも道理・・」等々。まあ、彼らの言うこともよく分かる。たしかに表面的な現象では、メキシコにゲームを支配され、逆転ゴールで敗北を喫したのですからネ。でも、その背景には・・。

 難しいニュアンスなのですが、私は、いまの日本代表が展開しているサッカーベクトル方向の舵を切るのには、まだちょっと時間が必要だと思っているのです。要は、勝負優先のガチガチ戦術サッカーから、「内容優先の解放サッカー」へと舵を切っていくことです。

 たぶん、メキシコ戦の結果を受けて日本のメディアが伝えているニュアンスはネガティブ方向へ振れているんでしょうね。まあ「結果ベースで書けば」そうならざるを得ないし、既に最終予選でのエキサイトメント(ジーコジャパンが為した成果)は過去のモノですからね。そして、これからは・・という大いなる期待がかかった「世界サッカーにおける位置を知る」ためのコンフェデレーションズカップだったのに、その初戦で見事に裏切られた・・ってな具合なのでしょう。

 でもネ、急にサッカー内容のニュアンスを大きく変えられるわけがないというのは事実ですよ。私は、自分自身の体感からもよく分かっているつもりです。とにかく、日本の実力が、個のチカラが世界トップと比べて明らかに劣っているという事実など、まだまだ世界の二流なのは厳然たる事実なのです。だから、もっと余裕をもって評価していかなければならないと思っているわけです。それが、昨日の総体ポジティブ評価のバックグラウンドにありました。

 ここからは、箇条書きのキーファクターを羅列することで、ジーコジャパンのサッカー内容ニュアンスの変化を探ることにします。もちろんそれらすべては、湯浅が設定したアサンプション(仮説)に基づいたモノです。

 ジーコジャパンは、W杯の地域予選を勝ち抜くという最大のミッションと、常に「海外組」が揃わないという現実をベースに、徐々に「現実路線」へと舵を切っていった・・要は、ジーコが描く理想イメージではなく、結果を重視するサッカーへ向かったということ・・そしてアジアカップを制し、W杯本大会へ駒を進めた・・

 ・・誰もが、最終予選を勝ち抜くためにジーコがイメージした、守備ブロックをソリッドにする結果重視のサッカーを高く評価しているだろう・・でも逆に、あまりにも戦術的な(計画的な・・規制イメージの多い)サッカーには、常に違和感を抱いていた・・その背景に、常にダイナミックな成長を魅せていたフィリップトルシエ時代との比較があるかもしれない・・確かにフィリップは、フラットスリーという守備戦術を徹底したけれど、その規制が、攻撃に悪影響を及ぼすことはなかった・・逆にフィリップは、選手たちをガンガンとリスクにチャレンジさせた・・フラットスリーも、見方によればリスキーな守備戦術だった・・そんなリスクチャレンジ姿勢があったからこそ、闘う姿勢が全面に押し出されたダイナミックなサッカーになったし、日本代表が目に見えて発展した・・それに比べてジーコのサッカーは、あまりにも計画的・戦術的で、静的な印象が強い・・そこでよくつかわれた表現が「闘う意志の欠如」?!・・

 ・・日本の実力がまだまだ世界の二流の領域にあることは厳然たる事実・・そのなかで、どのように組織的に守り、組織的に仕掛けていくのかというのが日本のテーマ・・要は、いかに攻守にわたる勝負所に「人数」を掛けられるか・・いかに正確に「次の展開を予測」し、実効あるカタチで、ボールなしのプレーを展開できるか・・そして突き詰めたら、いかにボールがないところでリスクにチャレンジしていくのかというテーマに行き当たる・・

 ・・この「リスクチャレンジ」というテーマは、もちろん「バランス」という錯綜したテーマと同義・・私は、サッカーでは常に(選手たちの人数とポジショニングの)バランスが崩れるもの、だからこそ、崩れたバランスを素早く効率的に取り戻すためのバランス感覚を養うことが重要な意味を持つと考えているのだけれど、ジーコは、あくまでも、最後の最後までバランスを崩さずに仕掛けていくというフィロソフィーを貫いている・・それは、最後の最後に、ボールホルダーとパスレシーバーが爆発する・・要は、ブラジル的な緩急ということ・・バランスを保ちながら確実に展開していれば、相手守備ブロックの対処イメージも確実に単一的になり、急な変化に対処できなくなる・・それこそが、ブラジル的な「緩急」のターゲットイメージ・・

 ・・たしかに「最後の爆発」もリスクチャレンジだけれど、もっとその頻度を増やさなければ、サッカーそのもののダイナミズムも高揚しない・・とにかく、リスクチャレンジこそが、発展にとっての唯一のリソースという事実は変えられない・・

 ・・要は、これからのジーコジャパンにとっては「より積極的にリスクへチャレンジしていく」というのがテーマということ・・もっと言えば、「バランスのニュアンス(イメージ)」を、より積極的&攻撃的なモノへと発展させることがテーマとも言えるかも・・

 ・・それ以外にも、ボールポゼッションのコノテーション・・最終勝負をイメージした攻撃的なボールキープと、安全策だけの逃げのボールキープとは、基本的な意味がまったく違う・・とかいったテーマもありそう・・

 ・・ジーコジャパンの変化の胎動・・そんなテーマで、雑誌ナンバーで記事を発表する予定・・でもテーマがあまりにも錯綜しているから、簡潔・シンプルに書けるかどうか自信がない・・

 まあ今日のところは、こんなところですかネ。分かりにくい文章を最後まで読んでいただいて感謝します。これから友人のサッカーマンと夕食をとりながらのサッカー談義。日本代表の話題が中心です。たぶん彼も、日本代表のパフォーマンスをネガティブに捉えているはず・・。ちょっとここで視点を変え、日本に対する期待が大きいから(テクニックでは非常に高いモノがあるのに!・・等々)、アウトプットが足りない(もっと出来るハズだ!)という不満がつのるということなのかもしれない・・という質問ニュアンスに変えてみようと思っています。

 



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