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欧州&アジアのチャンピオンズリーグ・・(チェルシー対バルセロナ、4-2でチェルシーが準々決勝へ!)(ミラン対マンU、1-0でミランが進出!)(そしてマリノス対山東、0-1で山東がアウェー勝利!)・・(2005年3月9日、水曜日)

まず欧州の「ACミラン対マンチェスター・ユナイテッド」から。この試合を観はじめてすぐにこんなことを思ったものです。「やっぱり両チームともに世界の超一流だ・・攻守にわたるツボを心得えているからゲームの流れが安定している・・」。何故そんなテーマがまずアタマをよぎったかって?? それは、数日前の「J」を観ながら思っていたことと正反対だったからですよ。

 「何故もっと落ち着いたサッカーにならないのだろうか・・要は、両チームともに(攻めでの)個のチカラが十分ではないから、相手のコンパクトなブレッシング守備を上手くかわせない・・だからボールをしっかりと保持できず、攻守があまりにも落ち着きなく入れ替わりつづけてしまう・・ということで、グラウンド上ではアクティブな守備ばかりが目立ってしまう・・コンパクトな守備ブロックを基盤にしたチェイス&チェックからの協力ブレッシング守備・・たしかに素晴らしいプレー連鎖だけれど、それが次の効果的な攻撃につながればネ・・ボールを奪い返しそうになったら(そのブレッシングに参加するのではなく)周りがすぐにバックパスや横パスを受けられる位置に着くなど、とにかく(その後の!)具体的な組み立てパス回しのイメージまでもしっかりと選手たちのアタマに組み込んでおくとかネ・・」。そして、観戦で疲れ切ってしまったことで、結局レポートを書く元気も許容範囲外にまで減退してしまったという体たらく。面目ない。

 さてミラン対マンU。テーマはこんな感じでしたかネ・・第一戦をホームで「0-1」と落としたマンUが攻め上がっていかざるを得ないという状況・・ということで、ボールキープ率では、攻め上がりつづけるマンUの方がミランを上回っているけれど、終わってみれば、シュート数でも枠内シュート数でもミランがマンUを凌駕していた・・百戦錬磨の世界選抜、ミラン・・それこそイタリアのツボ・・とにかく、相手ホームで最小点差で勝ち切ってホームゲームを迎え、そこで相手に攻めさせて蜂の一刺しを見舞うという、まさにイタリアのツボ・・

 ・・マンUの前への勢いをしっかりと受け止めてボールを奪い返し、例によって、最後の瞬間まで互いのポジショニングバランスを崩さない統制のとれた「組み立て攻撃(遅攻)」を展開するミラン・・もちろんカウンターでは、個の才能が大爆発・・対するマンUは、どうしても(人数バランスと相互ポジショニングバランスが統率された)ミラン守備ブロックの穴を突いていけない・・マンU選手たちがアタマに描写する、人とボールを素早く広く動かしながらスペースを突いていこうとするイメージはよく分かるけれど、人数的にも、相互のカバーリングポジショニング組織プレーでも素晴らしく老練なミラン守備ブロックに、マンUの攻撃の勢いが完全に抑制されてしまっている・・結局マンUが作り出したチャンスは、前半20分あたりの、相手タテパスをカットして作り出した「カウンターチャンス」くらい(ファン・ニステルローイのパスからギグスがシュート・・ジーダは諦めた・・でもシュートは右ポストを直撃!)・・とにかくミラン守備の、スペースをイメージするチカラ(ボールがないところで勝負が決まるという原則に対する深い理解!)は素晴らしい・・また、ミランが抱える個の才能たちがキッチリとチーム戦術という規律を守りつづけてプレーする姿勢にも感嘆・・とはいっても、それでサッカーの質が発展するわけではないけれど・・今年も、世界の憎まれ役は健在じゃありませんか・・

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 次は、チェルシー対バルセロナ。前半19分の時点で、既に、カウンターなどの素早い攻めからガンガンと3ゴールを先取されて(3-0とリードされて)後がなくなったバルセロナ。こんな展開だったら、とにかくしっかりと守りながら得意のカウンターを狙えばオッケーというチェルシーが絶対的に有利・・だと(私も含めて)誰もが考えたに違いない?! でも実際には・・。

 ちなみに、このまま3-0でチェルシーが勝てば、第一戦はバルセロナが2-1で先勝しているから一勝一敗の五分になるけれど得失点差でチェルシーが上回って準々決勝進出ということになります。でもね、そこは屈指の好カード。これから素晴らしいドラマが展開されるのですよ。

 まず、「3-1」という追いかけゴール(前半27分)になったロナウジーニョのPKについて。そこでの特筆は、何といっても、チェルシーGKチェフ(チェコ代表)のスーパーセーブ。まさに指先をかすめてロウなジーニョのシュートがかろうじて決まったわけですが、そのシーンでチェフが魅せた素晴らしい読みと、素晴らしい反応。彼もまた、堅牢なチェルシー守備ブロックの支柱の一つであるという事実を反芻していた湯浅でした。それ以外でも、何度も決定的ピンチを防ぎましたしネ。でも次のバルセロナの二点目は、今度は完全にロナウジーニョが主役になります(前半38分)。そこで魅せたロナウジーニョのノーステップシュートは、まさに天才の為せるワザといったファンタジアだったのです。トーキックだったようですね。チェルシー最終ラインはスルーパスをイメージしていた・・だからロナウジーニョは、勝負のスルーパスを出せなかった・・そして、追い詰められたからこそ、とっさに天賦の才が閃いた・・っちゅうことなんでしょう。とにかくそのシュートを見せつけられたとき鳥肌が立ちました。スゲ〜〜ッ!!

 ゲームは全体的にバルセロナが牛耳りつづけていました。素晴らしい主体的な守備意識に支えられた、どちらかといえば選手たちの創造性を全面に押し出すダイナミックディフェンス。そして、人とボールが夢のように素早く、広く動きつづける攻撃と仕掛け。・・という具合に、サッカーの内容では確実にバルセロナに軍配が上がるけれど、やっぱり「勝負」という視点ではチェルシー(モウリーニョ)に一日の長があった?! もっとバルサが観たい湯浅は残念に思ったけれど、試合後にはすぐに気持ちを入れ替えていましたよ。イタリアとは違ったタイプの勝負強さと、シンプルで爆発的な仕掛けパワーを備えたチェルシーにも見所が満載だ・・これは楽しむしかない・・もちろん欧州プロサッカーに経済主導のイメージを定着させた張本人、油を操るアブラモビッチにはシンパシーを感じないけれどネ・・。

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 そして最後が、アジアン・チャンピオンズリーグ。マリノス対山東です。

 「我々は良いサッカーをやった・・私は選手たちを誇りに思う・・前半だけでも3本のチャンスを作り出した・・今日のゲームは、そのチャンスを決めきれなかったことに尽きる・・」。そんなポジティブシンキングの(?!)岡田監督。「ゲームをうまくコントロールできなかったが・・」という質問に対しては、「相手をチンチンに圧倒してシュートチャンスを作りつづけるというレベルの試合ではない・・これからも厳しいゲームがつづくだろうが、とにかく常に全力を尽くすだけだ・・」。真摯にサッカーに取り組みつづける姿勢。なかなか良いじゃありませんか。

 私は、彼の発言に対し、多くの部分でアグリーでした。たしかにマリノスは、全体としては良いサッカーをやりました(少なくとも山東よりも優れていた!)。とはいっても、たしかにその差はわずか。フィジカルでも技術的にも。一つだけ、戦術的なところに、もっとも明確に「僅差」が現れていたと思っている湯浅です。

 例えばこんなシーン・・。中盤で上野と奥がパスを回している・・その状況で、脇目もふらずに左サイドを駆け上がっていく漆黒のプレイヤー・・ドゥトラ・・彼は、まだ上野と奥がパスを回しているタイミングで、マークする相手の視線を「盗んで」スタートを切り、その後は、まったくスピードを落とすことなく決定的スペースへ走り抜けていった・・そして実際に、ドゥトラがイメージするスペースへ向けて上野(?!)からパスが出る・・残念ながらパスが短すぎたために相手と交錯してしまったけれど・・。言いたいことは、そんなボールがないところでの決定的なフリーランニングの量と質にこそ、マリノスが誇示した相手との「僅差」の本質が隠されているというわけです。とはいっても、あくまでもそれは僅差だから、そんなに頻繁に相手守備ブロックのウラを突けるわけがありません。だからこそ、チャンスを実際のゴールに結び付けるという「現象」が大事な意味をもってくるというわけです。決定力・・。この試合でも、前半や後半の絶対的ヘディングチャンス(大島と田中隼磨)、セットプレーからのチャンス、試合終了直前に作りつづけた何本かのチャンス(奥が得たチャンスも含めて!)等々がありました。これでは観ている方が「タラレバ心理」になつてしまうのも仕方ないよな・・。まあ次だ、次だ・・。

 この決定力については、数日前の「Jリーグ・レポート」でも軽く触れましたので、そちらもご参照アレ。今日はこれから、ユーヴェントス対レアル・マドリー、アーセナル対バイエルン・ミュンヘン、レーバークーゼン対リバプールなど注目のチャンピオンズリーグマッチがありますが、ビデオで観戦できるのは、明日の午後か夜になってから。テーマがあったらレポートしますので。

 



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