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ゼロックススーパーカップ・・藤田俊哉がもどり2002年シーズンの輝きを取り戻しつつあるジュビロは、再び我々を楽しませてくれる?!・・ジュビロ対マリノス(1-1、PK戦でジュビロが勝利!)・・(2004年3月6日、土曜日)

結果としては、内容的に優っていたジュビロがフェアな勝利をおさめたといっても支障ないでしょう。私は、そんな勝負的には膠着したゲームを観ながらちょいと考え込んでいました。魅力的なサッカーって・・??

 私にとっては、やはりジュビロが展開する、素早く広くボールを動かすサッカーが魅力的。活発にボールを動かすことで、相手ディフェンスとの肉弾戦が少なくなるし(相手ディフェンスもアタックターゲットを絞り込み難い!)、相手守備ブロックを、ボールを動かすことで振り回すことで、そこで出来た「守備ブロックの薄い部分」を突いていける。また彼らのサッカーでは、最終勝負シーンも、パスと、ボールのないところでの忠実&爆発的な動きがシンクロするところから演出される。それこそまさに理想的なロジックサッカーというわけです。とにかくジュビロサッカーは、スマートこの上ないから好きなのですよ。

 もちろんその背景に、選手全員に深く浸透した「守備意識」という絶対的ベースがあるのは言うまでもありません。だからこそ変幻自在のボールなしの動き(=リスクチャレンジ)がどんどんと出てくるだけではなく、次の守備でのバランスの崩れを最小限にとどめることができる・・というわけです。グラウンド全体に繰りひろげられる「組織プレーによる変化の演出」というジュビロシアターにはゾクゾクさせられます。

 私は、ジュビロが展開しているサッカーは、誰にとっても魅力のある普遍的価値を秘めていると思っています。魅惑的な組織パスサッカーという基盤に、仕掛けシーン等では、「個の才能」も程良くミックスされてくる。そんな基本的な発想(プレーイメージ)は、レアル・マドリーが目指すベクトルに通じているというわけです。

 あれだけボールが動いたら、やはり観ている方も「ダマされて」しまうでしょう。要は、目でボールを追うことに四苦八苦し、次の勝負シーンを思い描く心の余裕がなくなってしまうということです。そして自分たちの予測や予想を超越した素晴らしい組織プレーに舌鼓(したつづみ)を打つ。やはり観客は、自分たちのイメージを超越したサッカーに感動するものなのです。

 それにしてもジュビロがたたき込んだ、胸がすくような同点ゴールは見事の一言でした。ハーフウェイあたりで鈴木秀人が魅せた、見事なインターセプトと間髪を入れないスペースをつなぐドリブル・・。そこからパスを受けたグラウの、落ち着きはらったキープと、中への切れ込み・・。そして、ニアポストスペースへ動きつづけた福西への見事なラストパス・・。この三人のイメージが見事にシンクロした素晴らしいゴールでした。

 鈴木秀人が、ボールをインターセプトし(相手のバックパスをかっさらい)、そのまま直線的なドリブルにうつったとき、私の視線は、グラウと福西を捉えていました。グラウは右サイドのスペースでパスを待ち、福西は、逆の左サイドスペースへ開いていく・・。結局鈴木秀人は、右のグラウへボールをあずけ、自身はセンターゾーン(マリノスゴール前スペース!)へ入っていくというプレーを選択したわけですが、そのプロセスで福西が魅せたクレバーな動きは特筆モノでしたよ。福西が一度「開いた」から、ファーサイドにいたマリノスディフェンダーが福西のマークを担当することになる・・でも彼は、次の瞬間には、再び右サイドへ方向転換して(ボールがある側の)ニアポストスペースを狙う動きに移ったのです。これで彼をマークすべきマリノス選手は、福西の背後から「追いかける」というカタチになってしまったというわけです。これでは、グラウの正確なラストパスを防げるはずがない。

 とにかく、二度もつづけてボールがないところで勝負が決まるという、ジュビロが標榜する素晴らしく美しい同点ゴールだったということが言いたかった湯浅なのです。試合全体として、マリノス守備ブロックの「ウラ」を突くようなクリエイティブなコンビネーション勝負を再三繰り出していたジュビロですから、この同点ゴールは、まさに正当な報酬だったのです。ちなみに、絶対的なシュート数だけではなく、枠へ飛んだ(本物のゴールチャンスとしての)シュート数でも、ジュビロが圧倒していました(絶対的シュート数ではジュビロがマリノスの二倍・・枠へ飛んだシュートの数は、マリノスの2本に対し、ジュビロは8本!!)。だから、ジュビロの順当なPK勝利と表現したわけです。

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 とはいっても、さすがに岡田マリノスも勝負所を心得ています。昨シーズンから培ってきた「彼らのやり方」がより深く浸透していると感じます。しっかりとした守備ブロックをベースに(前で勝負するのではなく、かなり深く相手攻撃を呼び込む傾向が強い・・だから中盤の高い位置でのボール奪取頻度はそんなに高くない・・)、ボールを奪い返したら、ドリブル(&ラン)と、アーリーなタイミングも含むクロスを忠実に送り込むことで仕掛けていくのですよ。もちろんその主役は、佐藤由紀彦やドゥトラといったサイドからの仕掛け人たち。周りの味方も、彼らが良いカタチでクロスをイメージしたドリブル突破にチャレンジできるようサポートするというわけです。

 マリノスのボールの動きは、「この仕掛けイメージ」をサポートすることを唯一の目的にしていると言っても過言ではない?! その発想(戦術イメージ)が、ジュビロが演出するボールの動きとは根本的に違う。もちろん以前のような無為な横パスは減り、岡田監督のイメージ通りに、どんどんタテパスにもボールが動くようになりました。それでも、仕掛けプロセス(仕掛けイメージ)自体には大きな変化はない・・ということか。

 とはいっても、徹底しているから、かなり勝負強いサッカーであることも確かな事実。そのことは先シーズンのマリノスが如実に証明したとおりです。でも、どうも「仕掛けの変化」という視点で魅力に欠けるキライが・・。

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 膠着したなかでも、堅牢なマリノス守備ブロックを何度も振り回してウラを突き、藤田の抜け出しなど、魅惑的なシュートチャンスを作り出しつづけたジュビロ磐田。出戻りの藤田が調子を上げてくれば、2002年シーズンのような圧倒的存在感を発揮するかもしれません。たしかに高原はいないし、ケガが癒えた中山にしても年齢的な限界が見え隠れてしています。そんなネガティブ要素は否めないモノの、代わりにグラウや前田が伸びていますからネ。とにかく彼らの場合は、中盤がすべて。そこに、2002年当時のメンバーが揃ったのですからネ・・。ジェフのオシム監督が、「ジュビロは、Jリーグのなかでは唯一、8人で攻め、10人で守れるスーパーチーム・・」と称賛を惜しまないジュビロ磐田。今シーズンの彼らも、リーグをリードしながら我々を楽しませてくれるに違いない・・。




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