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オリンピック代表・・世界の壁を体感させられた日本代表・・(日本対オーストラリア、0-1)・・(2004年7月25日、日曜日)

やはりオーストラリアのオリンピックチームは強い。ベースは、1999年のアンダー17世界選手権で準優勝したチームですからね。自信レベルも並大抵じゃない。彼らにとってこのゲームは、暑い日本でのフレンドリーマッチは、本番を見据えた大事な準備マッチです。だからこそ日本の若武者にとって願ってもない学習機会(自信発展機会)というわけです。

 立ち上がり、ホームの日本オリンピック代表は、ダイナミックな中盤ディフェンスを基盤にガンガンと押し上げていきます。その勢いは、韓国戦から継続している。でもオーストラリアの守備ブロックは、強い、強い。余裕をもって、日本の前への勢いを抑制してしまいます。そして立ち上がりの10分を過ぎたあたりから徐々に押し返していくのです。それは、まさに大きく深いウェーブのように日本代表の守備ブロックを侵食していきます。

 個人的なテクニックレベルで日本が見劣りしているとは思いませんが、個の突破力という視点では、確実にオーストラリアに一日の長があると感じます。まあドリブル突破力は、個のチカラの代表格だから、個人的なチカラではオーストラリアに軍配が上がるということになるでしょう。またそれだけではなく、組織的な仕掛けでも高質なコンテンツを魅せつづけます。人とボールが、クリエイティブによく動くサッカー。とにかく見事なまでにスムーズに、ボールを「相手守備の薄いゾーン」へ運んでしまうのです。そんな見事なコンビネーションプレーに、この豪州オリンピック代表チームは、長く一緒にやってきたことで確固たるユニットになっていると感じさせられる。また、プロリーグがないオーストラリアだから、代表選手たちのほとんどは欧米のプロクラブに所属しているわけですが、その経験の積み重ねもバックボーンにあると感じさせられる。フムフム・・。

 組織パスプレーの内容(人とボールの動き)でも、個のドリブル勝負の内容でも、日本を上回るオーストラリア。それに対し日本代表は、あくまでも組織パスプレーを基調に、最終勝負を仕掛けていきます。もちろん大久保のドリブル突破力に、仕掛けのアクセントを期待したいのですが、やはりオーストラリアという「世界」が相手では厳しい。たしかにボールキープは確実だし、スペースをつなぐドリブルも鋭いのですが、相手を抜き去ってしまうような突破力では、やはり見劣ってしまう。だから日本の仕掛けが組織に偏ってしまうのも仕方ないというわけです。腰の勝負能力に「も」長けたオーストラリアが羨ましい・・。

 組織での仕掛けでは、もちろん、ボールのないところで勝負が決まる・・というのが基本コンセプト。ただ、オーストラリア選手たちは「読み」がいいから、ウラスペースを突いていくイメージシンクロプレーがままならない日本代表なのです。ただ、トゥーリオ等の後方選手たちがタイミング良くオーバーラップしていけば、高い確率でチャンスが生まれることも事実。前半には、左サイドで駒野が「タメ」ているところを背後か那須がオーバーラップし、そこへ駒野から上手いロビングパスが通されるといった決定的チャンスもありました。でもそれ以外では、強力なオーストラリア種皮ブロックに対して、チャンスらしいカタチの演出はままならない。

 後半は、平山が登場したことで、攻め手イメージが広がりました(攻撃に変化ファクターが出てきた!)。進化した「平山のアタマ」。なかなか効果的です。でも、やはりオーストラリア守備ブロックの高さも「世界」ですから・・そうそう簡単には・・。それでも、田中達也も入ってきたことで、最終勝負シーンでの平均人数が増え、そのことで日本の「組織的な仕掛け」にも勢いが乗るようになっていったことも確かでした。でも、押し込んではいくけれど、最後のところでどうしても良いカタチでシュートできない・・。

 そんな、フラストレーションが溜まる日本の仕掛けを見ながら、「もっと思い切りシュートを打たなければ・・もっと早いタイミングで放り込むなんていう仕掛けもアリだぞ・・」なんて心のなかで檄を飛ばしていた湯浅でした。要は、中距離シュートを打ったり、早いタイミングで平山のアタマをイメージした決定的スペースへのロビングボールを供給するなどの攻撃の変化を演出することで、オーストラリア守備ブロックのディフェンスイメージを攪乱するということです。たしかに田中達也が入ったことで、ドリブル突破や、吹っ切れた中距離シュートは出てきましたが、まだまだ十分じゃない・・。

 平山や田中達也が入ってきたら、それなりの「仕掛けのカタチ」を全員がイメージできるように準備しておくのも、大事なチーム戦術的準備です。例えば、中盤で、阿部へバックパスを出した瞬間が、平山がタテの決定的スペースへ抜け出すスタートサインとか(もちろん次の瞬間には、阿部からのダイレクトロビングパスが供給される!)・・田中達也がボールを持ったら、周りが、彼にドリブル突破のコースを空けるように動くとか・・。まだまだ、仕掛けプロセスに対する「イメージシンクロレベル」に課題を見ていた湯浅でした。

 それにしてもオーストラリアチームには、本場プロのしたたかさがありました。決めなければならないところはキッチリと決められるという雰囲気があるし、実際にゴールを決め、その後もキッチリと勝ち切りましたからね。まあ、大したものだ。本番では、そんな本格的なチームが日本代表の相手になります。パラグアイ・・イタリア・・ガーナ・・。

 今回のギリシャオリンピックは、これまでにないほどサッカーの重要度が高まっています。ヨーロッパのエキスパート連中は、今回のギリシャ大会を、まったく新しいオリンピックサッカーの元年になると意義づけているのですよ。だから日本のプロ選手たちにとっても大いなる機会になるというわけです。

 



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