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オリンピック代表・・最後の20分間に魅せた仕掛けコンテンツには、ギリシャへ向けた期待を高揚させるだけのパワーが秘められていた・・(日本対チュニジア、0-1)・・(2004年7月14日、水曜日)

「サバイバル」を懸けた最終マッチ?! もちろん、アテネへ行くメンバーに残れるかどうかというサバイバル。相手は、なかなかチカラのあるチュニジアだから、まさに舞台は整ったといったところです。

 立ち上がりの時間帯は積極的な攻撃サッカーを展開する日本代表。この積極性のベースは、もちろん選手個々のディフェンス姿勢。選手たち個々の守備意識が高くなければ、積極的な攻撃サッカーなど望むべくもないということです。

 そんな若武者達の積極プレーを観ていて、たしかに「チカラの差」はあるけれど、攻守にわたる積極的なプレー姿勢という視点じゃ、昨日の日本フル代表よりもいい・・なんてことを思っていました。先ほど、「日本対セルビア・モンテネグロ戦」のビデオをもう一度確認していたのですが、そこで「流れのなかでチャンスを演出する」という視点で不満がつのっていたのです。必要なところで人数をかけられていない・・もちろんそれは、ボールがないところでのプレー(リスクチャレンジ)に対する意識が高揚していないことの証明・・。まあ、カウンター気味の状況では、両サイドや守備的ハーフもスピーディーに飛び出してはいきますが、「組み立てから仕掛けへ・・」という展開(遅攻)になったら、とたんに足が止まり気味になってしまう。ポゼッションという「縛り」と、それに基づいた仕掛けリズムをリードするチャンスメイカー・・。爆発的な「ボールなしのリスクチャレンジプレー」に対する強い意識がないからサッカーのダイナミズムの高揚が感じられない。そのことが、ジーコジャパンに対する「漠然とした不満・不安」の根拠にあるんだろうな・・そして選手たちは、そんな「爆発のないプレーリズム」に乗ってしまう・・だから停滞したサッカーリズムを自分たちで打破することができない・・だから守備を固める相手を崩していけない・・。

 そんなことを考えていたら、そのテーマに思いを馳せるモティベーションを与えてくれたはずの若武者たちが、立ち上がりの積極サッカーから、急に勢いがしぼみはじめてしまうのですよ。積極的な仕掛け姿勢のほとんどを簡単に跳ね返されつづけたことで、また雰囲気に慣れたチュニジアが攻め上がってきたことで、日本選手たちの積極プレのー姿勢が急に暗転していく・・守備でも、立ち上がりにはうまく有機的に連鎖していた個々のプレーが、局面プレーのブツ切り守備に落ち込んでしまって・・やはり、沈滞した雰囲気をブチ破れるだけのリーダーシップが足りないということか・・。それだけではなく、前半ロスタイムには、曽ヶ端のキャッチングミスでこぼれたボールをゴールへ蹴り込まれてしまって・・。

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 ただ後半は、選手交代と守備ブロックシステムの変更(フォーバックへの変更)が功を奏し、少しずつ積極性が高揚していきます。特に右サイドの石川が魅せる積極的な勝負プレーは仲間に勇気を与えたことでしょう。石川に触発された(?!)菊地と石川とのコンビプレーは見応えありましたよ。

 また高松と交代した平山も、徐々に存在感をアップさせていきました。まあそれは、仲間が、彼のアタマを意識して活用しはじめたことによるのですが・・。以前わたしは「平山は、能力があるのにそれを使い切れていない・・特にヘディングが下手だ・・」なんて書きつづけたことがありました。彼ほどの上背とジャンプ力があったら、どんなボールでも、「確実にパスにつなげられるくらい余裕をもってヘディングに競り勝てるべき!」というのが私の主張だったのです。

 そして久しぶりに見た平山。そこでの彼は、期待通りの発展を魅せてくれました。山本監督からも、「平山のアタマを狙って、意図を込めたロングボールをうまく使っていけ・・」なんていう指示もあったに違いない?! とにかく選手たちが、平山のアタマを狙ったロビングを多用するようになったのです。もちろん平山も、「それ」にイメージをシンクロさせたポジショニングプレーをするし、周りの味方も、平山の周辺スペースへ入り込んで次の「落としパス」を狙う。そんな、平山のヘディング能力を明確な武器としてしっかり活用しようとする意図を確認して(攻撃の変化を演出するオプションの拡大!!)、ちょっと胸をなで下ろしていた湯浅です。

 後半残り20分間は、日本の仕掛けパワーが何倍にもふくれ上がりました。そこでは、平山のアタマだけではなく、田中の「個の仕掛け」や、交代出場した山瀬がコアになった素早いコンビネーション、はたまた後方から押し上げた選手のロングシュートトライや阿部のフリーキックなど、とにかく変化満載の仕掛けを披露してくれました。

 もちろん、負けているホームチームがシャカリキに攻め上がるのは当然だし、リードしているアウェーチームが守りを固めるのも自然な流れ。それが、日本が攻め込みつづけたという現象の背景にあるわけですが、でもこの20分間の攻めは、ちょっと違っていた。そこには、上記したように、明確な「ゴールの可能性」を感じさせてくれるだけの高質なコンテンツが詰め込まれていたのです。決してそれは、相手守備ブロックにコントロールされるような「無害な押し込み」ではなかったということです。だからこそ、見終わった後にも、このチームはギリシャで何かをやってくれるかもしれないというポジティブな印象が残ったのだと思います。

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 小野伸二と高原直泰がオーバーエイジで参加することが決まっているオリンピック代表。この試合の後に、18名までチームを絞り込まなければなりません。GK二人にオーバーエイジが二人だから、フィールドプレイヤーは「わずかに14の枠」ということになります。さて、山本監督は、どのような決断をするのだろうか・・。

 「サバイバル」を心理環境にチーム内のテンション(緊張感)を高めてきた山本監督。ギリシャ行きのメンバーを決めた後には、今度は、ポジション争いなど、違ったモティベーションでチーム内テンションのアップを図らなければなりません。まあ、全体的に大きく「底上げ」した日本選手たちのことだから、勝てるぞ・・メダルも夢じゃないんだぞ!!という現実的な希望が最大のモティベーションになるはずです。とにかく、山本監督の「心理マネージメント」に期待しましょう。

 



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