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オリンピック代表・・本当によかった、最終戦が、「引き分けでも・・」なんていう、ぬるま湯の状況にならなくて本当によかった・・(日本対レバノン、2対1)・・(2004年3月16日、火曜日)

あ〜あっ、これでアテネ当確の勝ち点が「13」にまで伸びてしまった・・。この日の第一試合目で、バーレーンが、まったく気合が乗らないUAEに対し(まあ最後の15分くらいですかね、人数をかけた仕掛けが機能したのは・・)非常にクレバーな試合展開から「2-0」の勝利をおさめてしまったのですよ。

 たしかに日本は、アテネへのチケットを自力で決めることもできるけれど、それも、最終的にライバルとなったバーレーンの結果次第。要は、日本にとっては、アンコントローラブルなところで勝負が決まってしまうという可能性も大きいということです(もちろん日本が、UAEを相手に二桁ゴールを挙げれば別だろうけれど・・)。

 バーレーン対UAEでのMVPは、何といっても、バーレーン最終ラインでリベロを務めた背番号「10」の選手でした(どうも名前が似ているから背番号で表現した方がいい・・彼は赤のユニフォームに青色のスパイクを履いていたことで目立っていたから覚えている方も多いでしょう・・)。記者席の隣で見ていた後藤健生さんによれば、「彼は、UAEラウンドでは中盤を務めた・・でも日本ラウンドでは、最初から最終ラインに入った・・それでバーレーンの最終ラインが安定した・・」ということでした。ナルホド。この試合では、守備でのリーダーシップを発揮するだけではなく、攻撃でも、タイミングのよいオーバーラップを魅せつづけるなど、本物のリベロ・・といった大活躍でした(二点目のゴールは、ここしかないというタイミングでオーバーラップした彼のスーパーミドルシュートが決まった!)。とにかく彼は良い選手です。

 ということで、(これから日本代表と戦う)レバノンは完全にアウトだし、UAEにしても理論的な可能性が残るだけになってしまった。彼らに残されたモティベーションは、アラブ同胞のバックアップということになるのかな?? いや、たしかにバーレーンとUAEは助け合うだろうけれど、レバノンはちょっと違う・・というのが一般的な見方のようです(後藤健生さん談)。さて・・。

 とにかくこの時点では、レバノンが、日本戦でどのようなモティベーション状態でプレーするのかというポイントに興味がつのります。日本にとって不利なのは、最終戦がバーレーン対レバノンということ。たぶん(いや、確実に!)バーレーンが大勝をおさめるに違いありませんからね(外れていたら笑ってください・・もし私の予想が違っていたら、それは日本代表にとって大いなるプラスですしね・・)。ということで日本代表は、残り二試合に連勝するだけではなく、できる限り多くゴールも奪わなければならない(少なくともその意気込みでゲームに臨まなければならない!)。さて、そんな現実を目の前に突きつけられた日本代表の若武者たちの反応は??

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 日本対レバノンのゲームがはじまってすぐ、こんなことを感じていました。コイツら(日本の若武者たち)は、やっとのことで吹っ切れた・・。

 もう残りの二試合に勝つしかない。バーレーンのクレバーな頑張りによって、日本代表が、二日前に私が望んでいた状況に追い込まれたということです。もう引き分けでもオーケーなんてこと言ってられない・・とにかく勝つしかない・・それこそ、日本の若武者たちが、(深層心理にあるに違いない)甘えの構造から脱却し、自分主体でチャレンジしていくチャンスだ・・そしてそれこそ、世界へ向けて大きく脱皮するチャンスでもあるのだ・・。

 彼らは、自分主体でリスクへチャレンジしていくという意志の強さ(自信&確信レベル)に問題を抱えています。彼らは、周りの雰囲気に呑まれしまうという傾向が殊のほか強いと思うのです。沈滞するチームの雰囲気を活性化させるために必要なのは、唯一、ネガティブ・ポジティブ混在の強烈な刺激。でも誰も、その刺激を与えることにチャレンジしようとせず、ネガティブな雰囲気に呑み込まれてしまうのです。

 チームの雰囲気が落ち込んできても、誰も、攻守にわたる爆発的なダイナミックプレーにトライしたり、中盤で仲間を叱咤激励するなど、雰囲気を活性化させるための唯一の方法である「刺激プレー」にトライしようとしない。これでは、チームの消極ムードが、本物の悪魔のサイクルへと悪化してしまうのも道理。何度そんなネガティブプロセスを目撃し、舌打ちしたことか。もちろんここにきて、メンバーの「融合」によって、全体的な闘う雰囲気は高揚しているとは感じてはいるのも確かなことなのですが・・。

 そんなオリンピック日本代表が、誰もが望んでいた、もう何が何でもやるっきゃないという状況に追い込まれたことで、何かが「はじけ」、そして吹っ切れたのです。前半立ち上がりの勢いには、(山本監督も、最初の20分で何としてもワンゴールもぎ取ってこいと檄を飛ばしたとか・・)ホンモノ感が溢れかえっていましたよ。それは、期待が高まりつづけた時間帯でした。

 それでも、前への勢いは素晴らしいのに、どうも、レバノン守備ブロックのウラを突いていけない・・またクロスにしても、状況的に放り込みという印象だから、チャンスらしいチャンスを演出することがままならない。まだまだ、ボールがないところでのダイナミズムが不十分だと感じていた湯浅です。「何だ! そこで足を止めるな! 最後まで走り抜けろよ!!」。自然とそんな声が出たものです。この「最後まで走り抜ける勢いのある決定的シーンでのフリーランニング」については、前回のレポートで書いたとおりです。そんなボールがないところでの吹っ切れたエネルギーの爆発がないから、全体的な前へのエネルギーが、仕掛けシーンでの実効プレーに変換されない。どんどんボールは動くし、ボールのないところでのアクションの頻度も高いけれど、それらがうまく連鎖しないし、そこに最後まで・・という勢いを感じない・・。

 それでも日本は先制ゴールを挙げます。阿部のフリーキック。見事な、本当に鳥肌が立つくらいに見事なフリーキックゴールではありました。前半14分のことです。でもこの後の日本チームのサッカーから、徐々に「吹っ切れた心理パワー」が薄らいでいってしまうのです。「これで最終戦に勝てば大丈夫だ・・」なんていう、イージーなネガティブ心理がアタマをもたげてきたということなのかもしれない・・。

 私は、UAEラウンド最終戦レポートの最後に、こんなことを書きました。

 『日本ラウンドでは、これ以上ないという厳しいディフェンスを基調に、泥臭いダーティーゴールも含め、容赦のないプレーで相手をコテンパンにやっつけてしまうという「非情な闘い」をする必要がある・・このオリンピックチームは、まだまだ心理的に甘い、甘い・・だからこそ、「慈悲のカケラも感じない非情な闘い」をすることでチーム内にギリギリの闘う雰囲気を醸成させておくことが大事だ・・』。

 この日本代表チームは、チカラは十二分に備えてはいるけれど、結局ひ弱なグループで終わってしまうのかもしれないな・・。そんなことを思っていた矢先の前半20分すぎあたりでしたかね、驚いたことに、そんなひ弱なグループのプレーペースが再びアップしていったのですよ。そして立ち上がりの積極プレーが蘇ってくる。そんな「再生プロセス」は、このチームに関しては、とんと経験したことがなかったから、ちょっとビックリし、再び期待が高まりはじめたものです。こいつ等は、本当の意味で脱皮しようとしているのかもしれない・・もちろん、甘えの構造から・・。

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 後半の日本の仕掛けは、効果的に変身したと感じました。そのもっとも大きな要因は、彼らの仕掛けプロセスに、平山のアタマを狙うというイメージも明確に「ミックス」しはじめたこと。選手たちが、明確に平山のアタマを意識していると感じさせてくれるようになったのです。そして実際に、平山のアタマからチャンスが生まれはじめる。だからこそ逆に、それまでの素早いコンビネーションでの崩しにも実効が伴うようになっていく。それだ、それだよ・・。思わず声が出ていました。

 日本代表の最終勝負イメージの幅が広がったのです。直接的に平山を狙うクロスを送り込んだり・・そこでのこぼれ球をイメージする味方が、周囲のスペースへ走り込んだり・・はたまた、平山をオトリに、周りの味方がヘディングを狙ったり(後半20分の、フリーキックからの近藤のヘディングシュート場面!)・・。

 それでも、レバノン守備ブロックの集中力は素晴らしく、ギリギリのところで守り切られるというシーンがつづきます。そんな惜しいシーンを見ながらハタと考えたものです。それにしても、このレバノンのやる気パワーの背景は一体何なのだろう?? そのガンバリパワーは、もちろんディフェンスの姿勢に如実に現れてくるというわけです。ヤツらのダイナミックなディフェンスパワーの源は、ホームチームをいたぶってやろうとする心理か・・スタジアムの雰囲気が後押ししたためか・・本当にアラブ同胞のためにという意識なのか・・それとも・・?? さて・・。

 後藤健生さんは、アラブの同胞意識については明確に否定していました。「それはないよね。レバノンの連中は、UAEやバーレーンのことは、アラブの産油国のヤツら・・なんていうふうに捉えているはずだよ・・」。もちろん、「まあ、UAEとバーレーンの間だったら、彼らの歴史的背景からしても、同胞意識が働くかもしれないと容易に想像できるけれどネ」。フムフム・・。

 なんてことを話題にしていた後半22分、レバノンに、まさかの同点ゴールを決められてしまうのです。5番の選手からの一発のロングパスが、ワンバウンドで近藤のアタマを越えてしまい、相手の10番の選手へわたってしまったのです。そのとき10番は、もう一発ロングシュートしか狙っていない。そしてまさかのキャノンシュートが日本ゴールのネットを揺さぶる。同点ゴール!! フ〜〜ッ。

 でも今度はその二分後に、日本が、レバノンを突き放す勝ち越しゴールを挙げるのです。前田のアーリークロスに、飛び込んだ大久保がヘッド一発。それこそ、平山をオトリにしたヘディングゴールだった?! それは、日本の意図した攻めが実を結んだ瞬間でした。

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 でもここから、手に汗握る最後の攻防が繰りひろげられるのです。

 最後の数分間、日本代表は、何本かの決定的チャンスを作り出します。それまでにはなかった、意図した展開からの絶対的チャンスメイク。何度「よし!」とガッツポーズをしかかったことか。でも、それを決めることが出来ない日本代表。そこはもう神様の領域です。だからこそ心配していました。もしかしたら、最後の最後でどんでん返しがあるかも・・なんてネ。何せゲームは、完全に神様の領域に入っちゃったわけだから・・。でも、たしかに攻め込まれはしましたが、結局レバノンにチャンスを作らせることはありませんでした。細かなことですが、そこでの日本選手たちの「能動的なディフェンス姿勢」は見るべきものがあったと思っている湯浅なのです。彼らもまた、ギリギリの勝負マッチであるからこそ、ゲームのなかで大きく成長した?! まあ、そのことは、次のゲームで証明されることでしょう。

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 さて、肉を切らせて骨を断つという最終勝負。二日後のUAE戦です。

 そのメンバー構成ですが、最初、「もちろんウィニングチーム・ネバー・チェンジの原則を踏襲すべき・・」と考えました。でもすぐに、このトーナメントが、世界の常識からすれば異常なものだと考え直しました。5日間で、こんな最高レベルの勝負マッチを3試合もこなさなければならないのですからネ。また、もちろんそこには「外部には絶対に分からない事情」もあるでしょう。だから、山本監督の、「メンバーについてはこれからジックリ考えます・・」という言葉に納得していた次第。

 勝つしかないUAEとの最終勝負。「引き分けでも・・」なんていう、ぬるま湯の状況にならなくて本当によかった。これで選手たちは、結果に関係なく、その90分間という学習機会を通じて、確実に大きく飛翔するに違いない・・自分たちの殻を破り、世界への扉を「自分主体」で開くに違いない・・。本当に、楽しみで仕方ありません。私も、自分自身の学習機会として、存分に「入り込ませて」もらおうと思っています。




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