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ナビスコカップ・・簡単にまとめるつもりが、またまた長くなってしまった・・なかなか面白いテーマがありました・・(マリノス対ヴェルディー、1-2)&(レッズ対エスパルス、3-0)・・(2004年6月5日、土曜日)

ちょっと滅入った気分で、レッズ対エスパルス戦がおこなわれる駒場競技場までオートバイを飛ばした湯浅でした。

 本当に気分がスッキリしない・・いや、気分が悪いといっても過言じゃない・・。この日のナビスコカップ、マリノス対ヴェルディー戦を見終わったときの素直な感想です。何せ、何度も何度もヴェルディー守備ブロックを切り裂いて決定的チャンスを作り出しながら、毎回、何故ゴールが決まらないの??という疑問符のオンパレードという仕掛けをくり返すマリノスに対し、ワンチャンスとも言えるコーナーキックからのこぼれ球をしぶとくゴールへたたき込み、その6分後には、交代出場したエムボマが、夢のようなロングシュートを決めちゃうという「これぞサッカー!」という展開だったのですからね。マリノスも、ドゥトラのフリーキックで一点は返したけれど、そのまま「1-2」で試合終了というわけです。

 ちょっとウラ話ですが、5月29日のレポートでは、ヴェルディー対サンフレッチェ戦についても書く予定でした。そのレポートをご覧になった方はご存じかと思いますが、その日は、まず「J2」のフロンターレ対ヴェガルタ戦へ馳せ参じました(川崎の等々力競技場)。でも、ヴェルディー対サンフレッチェが気になったので、試合終了15分前に等々力をスタートして国立へ向かったのですよ。そして後半だけはフルで観戦したという次第。でも、内容があまりにもフラストレーションがたまるものだったから、完全にレポートモティベーションを失ってしまったというわけです。結局その日のレポートは、フロンターレ対ヴェガルタ戦と、テレビ観戦したトリニータ対レッズ戦だけということになってしまいました。

 一体何に対してフラストレーションをためていたかって? もちろんヴェルディーの「ぬるま湯サッカー」に対してですよ。ボールのないところでしっかりと動かず、パス&ムーブも、決定的シーンにしか繰り出さず、足許パスをつなぎながら、相手のミスを待ったり、スピードアップからのコンビネーションチャンスを狙うばかり・・ヤツらは、それを高質なサッカーだと勘違いしている・・こんなだから、相手守備ラインのウラを突いていけるなんていう雰囲気は皆無・・これでは、パスはうまいけれどネ、なんて揶揄されるのも当たり前・・。

 いつも書いているように、才能に恵まれた者が、全力を尽くして発展しようとせず、周りのレベルに合わせて発揮するチカラを調整しようとするなんて、プロにあるまじき姿勢の選手たちだと思うのですよ。これでは、一生懸命に頑張ることをカッコ悪いと思っている低次元の輩とナジられても仕方ない。期待していたオジー・アルディレスも、結局は、そんな選手たちの低次元マインド(低次元体質)を改善することはできなかった・・?! まあたしかに、就任当時は、新しい風という刺激があったために、少しは彼らのサッカーがダイナミックになりかけましたけれどネ。でもその後は、元の木阿弥に・・。

 この試合も、まさにそんな倦怠サッカーでした。試合全体を通して、まさに緩慢プレーに終始するヴェルディー選手たち。でも結局は、ラッキーにも、少ないチャンスをゴールに結びつけて勝利を収めてしまう・・。ヴェルディー選手たちは、「こんな内容」で本当に満足しているのでしょうか・・本当に楽しめているのでしょうか・・。ちょっと辛辣に書きすぎだとは思うけれど、とにかく彼らの才能が惜しくてたまらないから書かずにはいられない。

 しっかりと「クリエイティブなムダ走り」を積み重ねていけば、確実にいまの何倍もサッカーのクオリティーを高めることができる「個の能力」が備わったチームなのに・・。もう何度も書いているように、彼らの上手さは両刃の剣。上手い選手と、良い選手とは、根本的に意味が違います。「今の」彼らは、単に上手いというだけの選手たちに成り下がっているというわけです。

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 たしかに前半は、両チームともにカッタるかったですよね。何かが起きるなんていう感じはまったくしませんでした。何せ、ボールなしの動きやパス&ムーブが消極的で、足許パスをつなぐばかりでしたからね・・両チームともに・・。だからエキサイティングなシュートシーンはほとんど出てこない。でも後半は、両チームのプレー姿勢の差が、如実にグラウンド上に現れてきました。マリノスが、ヴェルディーを完全に凌駕しはじめたのです。

 本当に何でゴールが決まらないの?という決定機がつづく・・でもまあ、これだけヴェルディー守備ブロックを振り回しているんだから、そのうち一点くらいは決まるだろう・・なんて思っていた矢先に、ヴェルディーの先制ゴールが決まってしまう・・もう何をか言わんやなんて思っていたら、その数分後にはエムボマの「爆発キャノンシュート」が追い打ちをかける・・だからこちらは開いた口がふさがらない・・ってな具合でした。

 まあこの試合では、坂田をはじめとした活きのいいマリノス若手の積極プレーに舌鼓を打つことができたのが、せめてもの救いでしたかね。そう、マリノス「でも」、若手やサブ選手たちが虎視眈々と下克上を狙っているという健康的な緊張感や競争環境を感じることができたのですよ。

 ここで「マリノスでも・・」と書いたのは、同じことが浦和レッズにも当てはまると思ったからです。優れたダイナミックサッカーを展開するエスパルスを、浦和レッズが、今シーズン最高とまで言える(ギド監督の談)スーパーサッカーでねじ伏せてしまう・・それも、多くの主力が欠けていると考えられるチーム構成で・・。書き方が、ちょいと意味深でしょ。

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 さて、ということでレッズ対エスパルス。

 とにかくエキサイティングなサッカーでした。昼間に見せられたサッカー内容が「あれ」でしたからね(後半のマリノスは良かったですが・・)、まさに、これ以上ないほどの口直しになりました。結局レッズが、「3-0」という完勝をおさめるのですが、内容は、本当にハイレベルでエキサイティングなものでした。それは、エスパルスもまた高質なサッカーを展開していたからに他なりません。

 両チームともに、継続的に発展していると感じます。攻守にわたってリスクチャレンジをくり返すことで、着実な発展を遂げているレッズとエスパルス。とにかく両チームともに、継続的に追いかける価値がある観察対象ということです。

 観ていて楽しいエキサイティングサッカー。両チームともに、忠実&ダイナミックにパス&ムーブをこなしているし、攻守にわたるボールがないところでのアクションの実効レベルも高い。昼間のゲームとは段違いのエキサイティング度といったところでした。

 とはいっても、この試合では、レッズのサッカー内容に一日の長がありました。彼らは、互角の競り合いがつづくなかで着実に成長していったのです。

 高い守備意識をベースにした例外のない積極ディフェンス参加・・ディフェンスの起点プレー(チェイス&チェック)と周りのディフェンス勝負プレーが、まさに有機的に連鎖しつづける・・また攻撃では、前後左右のポジションチェンジをベースにした攻撃の変化も十分・・人とボールがしっかりと動きつづける着実な組織プレーに、タイミング良くドリブル突破チャレンジがミックスしていく・・まさに組織と個がハイレベルにバランスした仕掛け・・もちろん、前半ロスタイムにスルーパスを決められてフリーシュートを打たれた場面や(明確なボールウォッチャー)危険すぎるディフェンス勝負など課題も見え隠れしてはいたけれど、全体的な出来があまりにも良すぎたから、課題ファクターに対する印象がどんどんと薄れてしまう・・ってな具合でした。

 この試合で浦和レッズが展開した高質サッカーの背景は、もちろん選手たちの自覚・意識レベルの高さです。ポジティブな競争環境の整備を背景にした健全な緊張感の高揚?! まあ、そういうことでしょう。

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 私は、監督会見でギド・ブッフヴァルト監督にこんな質問をぶつけてみました。「これで、アレックスやエメルソンも含め、全ポジションにライバル関係が出来上がりつつあると思うのですが、これからのチーム発展プロセスを踏まえて、そこのところをどのように考えていますか?」。

 この質問の背景に、選手たちが魅せたスーパーパフォーマンスがあったことは言うまでもありません。実は、アルパイが見に来ていることを意識した(?!)内舘の素晴らしいパフォーマンスを掘り下げようと思っていたのですが、とにかく全員が素晴らしくダイナミックな積極プレーを展開したから、一人の選手だけをクローズアップするのはやめにすることにしました(とかいって、しっかり内舘にスポットを当てている・・)。とにかく、前述の私の質問に対し、ブッフヴァルト監督が、こんなふうに答えました。

 「難しいテーマだよね・・でもレギュラーがいないなかで、これだけ素晴らしいサッカーが展開できたことは大きな成果だし、大変重要な意味があった・・私は、選手たちを誇りに思うよ・・これで、リザーブだった選手たちもレギュラーポジションを奪い取れることを明確に証明した・・これからは、選手たちの競争を糧に、チーム内のバランスを取りながらチームをより大きく発展させていきたい・・もちろん、そこでの選手たちのマネージメントこそが、オレの仕事というわけだけれどね・・」

 この答弁でギドは、「まだ」レギュラーとサブという表現を使っていたけれど、まあそれは、擬似サブ選手たちへのエール(巧みなモティベーション)と捉えることにしましょう。もちろんギド・ブッフヴァルト&ゲルト・エンゲルスのコンビだから、マジョリティーが納得する評価基準をもってチームをマネージメントしていくに違いありません。そんなポイントにも、魅力的なストーリー性が秘められていますよね。

 とにかく、健全に発展をつづけるグループを観察し、そこでの様々なプロセスを学習することほど楽しい作業はないということです。 

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 蛇足ですが、またまた、私の代表作の一つである『サッカー監督という仕事』が新潮文庫に収録されたことの報告をします。文庫化にあたり、3万ワード以上(本文で60ページ以上)を加筆しました。要は、いくつかの項目を書き加えたということです。レッズの話題も採り上げた項もあります。それについては「ここ」を参照してください。




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