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ジーコジャパン(41)アジアカップ・・気候条件にフィットしたスマートなサッカーを展開し、グループトップを決めた日本代表・・(日本vsイラン、0-0)・・(2004年7月28日、水曜日)

本当に日本代表のディフェンスブロックは素晴らしかった。宮本、中澤、田中で組むスリーバック(もちろん加地とフレックスの両サイドも・・)。そして遠藤と福西で組む守備的ハーフコンビ。たしかに、カリミやマハダビキアなど、イランには個の突破力を備えた選手はいるけれど、それに対し、ボールホルダー(パスの出所)の抑制をベースに、次、その次とボール奪取の網を組織するなど、忠実でクレバーな組織ディフェンスを展開する日本代表の守備ブロックが、イランの危険な個の勝負プレーを連鎖させず、局面プレーのブツ切り攻撃に陥れていたのです。

 もちろん何度かは、強引な中距離シュートやクロス攻撃からピンチを迎えたけれど、全体としては、素晴らしくスマートなサッカーを展開した日本代表。この試合に限っては、まさに「余裕をもって」引き分けに持ち込んだとすることができます。だから、予選グループをトップで抜け出したのも順当な結果だった。

 この試合でのテーマは、もちろん、厳しい気候条件をいかにうまくコントロールし、それを実効あるサッカー展開に結びつけていくのかというモノ。まあ、徐々に日本選手たちもチョンチン(重慶)の気候条件に慣れ、チームとしてまとまっていったという背景もあるのでしょう(トーナメントを通したチームの成長!?)、そのプレーイメージが、うまく実の効果に結びつきはじめていると感じました。たしかにそんなに人は動かないけれど、しっかりとボールを動かし、相手守備の「薄いゾーン」へボールを運んで最終勝負を仕掛けていくという仕掛けプロセスには、殊の外クレバーな雰囲気が伴っていました。

 あくまでもポゼッションを志向する組織パスプレーを基本に、チャンスを見計らったボールなしアクションを効果的に活用してシュートまで持っていく・・。殺人的な蒸し暑さという気候条件では、まさにツボにはまったチーム戦術(プレーイメージ)というわけです。それがうまく回転していた背景には、日本選手たちの個のチカラが、以前と比べて格段に発展していることもあります。特にディフェンスでの競り合いに、格段の力強さを感じ、頼もしく思ったものです。そんな効果的ディフェンスが機能していたからこそ(サッカーの基盤に対する確信レベルが高揚したからこそ!)、次の攻撃でも、自分たちのイメージを自信をもって体現できた・・。少しでも不安ファクターが確信ファクターを上回ったら、すぐにでも足が止まったり、パスが「逃げ」になってしまうものですからネ。

 とにかくこのゲームでの両チームは、緊迫した好ゲームを展開しましたよ。選手たちがクレバーに互いのポジションをバランスさせているなかで、しっかりとボールを動かしながら、あくまでも組織パスプレーで仕掛けていく日本代表。それに対し、カリミとマハダビキアを中心に、中盤からの積極的ドリブル突破チャレンジを基盤に、中距離シュートやクロス攻撃を仕掛けていくイラン。最後までテンションが落ちない素晴らしいゲームでした。

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 それでも、日本代表のサッカーに対して不安をぬぐい去ることができない・・。

 この試合での日本代表のプレーペースは、たしにかチョンチンの厳しい気候条件にうまくハマってたけれど、それって、「いつものペース(ジーコジャパンの基本的なプレーペース)」だったに過ぎないとも言えるかも・・。例えば相手に押し込まれている状態で、自分たちが主体になって、ボールなしの選手たちの動きとボールの動きを活性化できるか・・選手たちのリスクチャレンジ姿勢を活性化させられるか・・そしてそれらを有機的に連鎖させられるか・・等という、「セルフモティベーション能力」というポイントで、まだまだ不安が残るのですよ。もちろん、そんな主体的ペースアップの基盤は積極的ディフェンスだから、その視点で、(このゲームにおいて)少しは光明が見えたと言えないこともないけれど・・。

 とにかく勝負は10月13日のオマーン戦です。それに向けてギリギリの緊張感を高揚させていって欲しい・・チーム内の消極ビールス(安全プレーに逃げ込んでしまうような消極マインドなど)を敏感に感じ取れるだけの、また消極ビールスの広がりを感じた瞬間に、全員が、それをブチ破れるだけの刺激プレー(攻守にわたって全力ダッシュプレーを連続させるようなリスクチャレンジプレー!)を、(アナタ任せではなく!)自分が主体になってリードできるだけのイメージトレーニングを積み重ねていって欲しい・・。

 



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