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ヨーロッパの日本人・・今週は小野と中田を簡単に・・(2004年3月22日、月曜日)

最初は小野伸二から。

 全体的な印象は、どうも冴えない・・守備でも、攻撃でも、決定的なコンテンツも含む実効プレーが少なすぎる・・というものです。まだまだ完調ではない?!

 特に攻撃では、彼が中心になった仕掛けの流れは皆無に近い。まあ、仕掛けの流れに絡むことは出来ていますが、ボール絡みで決定的な仕事ができるわけでもなく(タイミングとコースがいいクロスは何本かあったけれど・・)、ボールなしのアクションも、どうもうまく周りと連鎖しない(決定的フリーランニングもあったけれど、単発という印象をぬぐえない)。まあ、後方からのボールのディヴァイダー(=Divider=分配プレーヤー、仕切人=確実な中継プレーヤー)としての役目に徹しているということでしょうか。もちろん、何本かは、素晴らしいタテパスやロングパス、スルーパストライもありましたが・・。

 また守備でも、例によって、彼のところでボールを奪い返せたというシーンはほとんどなく(二度ほど、相手とラップの瞬間を狙ったアタックで混戦に持ち込めたシーンはあったけれど・・)、基本的なバランシング目的の(スペースを埋める)ポジショニングに徹するといった具合。やはり彼のプレーには、ホンモノの守備的ハーフといった趣はありません。決定的な勝負場面に絡めていないのですからネ。またボールがないところでのマーキングにしても、(まあ相手があまり強くないことで、ボールがないところで勝負を決めてしまうというシーン自体を演出できなかったから、ボールなしの決定的マーキングシーンはほとんどなかったけれど・・)そこで首尾一貫したプレーが点火できていたとは言いがたい内容でした。

 まだまだ本調子ではない小野伸二。まだ何か身体的に問題を抱えているから思い切ったプレーができないのかもしれません。特にプロの場合、焦りは禁物なのですが・・。

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 さて中田英寿。

 前節までのボローニャは、中田のパフォーマンスは悪くないけれど、チームは三連敗という悪い流れに陥っていました。でも逆にこの試合では、彼自身の出来はそこそこだけれど、チームは完勝をおさめてしまう。まあ、そんなものさ・・サッカーだからね・・。

 この試合(ホームでも対ブレシア戦)での中田は、出来が悪いというわけでは決してないけれど、どうも良いタイミングで彼にボールが集まらないから、相手マーカーとのガチャガチャの潰し合いになるシーンが多く、彼を中心にした仕掛けがままならないという印象でした。

 中田によいタイミングでボールが入らないのは、後方から直接的に前線へパスが送り込まれるというシーンが多いから。マッツォーネ監督も、中田も、もっと中盤でボールを動かしたいのでしょうが(中田のシンプルプレーイメージを中心にしたショート&ショート&ロングというリズムのボールの動きの演出!)、どうもそれがうまく回らない。

 そこには、負けている(連敗している)からという側面もあります。要は、このままだと降格ゾーンが近づいてくる・・何とか地獄の降格リーグから脱却したい・・だからボールを奪い返したら、なるべく早いタイミングで、相手ゴール近くのゾーンへボールを回そう・・その方が、ゴールにつながる可能性が高くなる・・。そんな意識が働いてもおかしくないというわけです。それに前線にはシニョーリもいる。彼をターゲットにタテパスを出しておけば、そこでの確実なキープから次の仕掛けの展開がスタートできるに違いないという期待もある。まあその視点からすれば、素晴らしい才能を有する必殺仕掛け人シニョーリは、チームのなかでプレーイメージを徹底させるというプロセスにとっては諸刃の剣というわけです。ホント、サッカーは難しい。

 ということで、中田も、自分のイメージでプレーがやり難いという状況に陥っている。それでも彼は、耐えて、耐えて、ディフェンスにも精を出しながらボールがないところでの積極アクションをつづけるのです。

 テレビ画面上での中田を追いながら、彼が描写するプレーイメージに思いを馳せていたのですが、例えばそれはこんな具合。「そうだよな・・そのスペースに走って、そこにパスがくればチャンスになる・・あっ、パスはきたけれどタイミングが遅すぎる・・あっ、思ったとおり相手に潰されてしまった・・」とか、「素晴らしいトラップからのタメキープだ・・あっ、中田がワンのパスを出してタテスペースへ走った・・でもこれはオトリの動きだ・・横にいるネルヴォが走り込めるスペースを作ったんだ・・あっ、でも中田の意図とは逆に、彼へツーのパスが返されてしまった・・そこは相手に狙われているのに・・あっ、案の定、相手二人が集中プレスをかけてきた・・これじゃ潰されるのも道理だ・・」。もっとシンプルに中盤でボールを動かせれば、中田の能力も、もっともっと実効あるカタチで発揮されるのに・・。彼がボローニャに参加した当時は、そんな人とボールを活発に動かすサッカーがうまく機能していたのにね・・。

 シニョーリ・シアターとも呼べるくらい彼の活躍が目立ったこの試合(ホームのボローニャが、3-0で、ブレシアに完勝!・・そこでシニョーリは、カウンターの二点目をヒールキックで演出し、三点目は、タテパスを見事にトラップし、夢のようなドリブルで相手アタックを外して彼自身が決めた!)。途中から中田は、目立たないバランシング的なプレーに徹するようになりました。まあ、勝ちの流れを補強するような、攻守にわたるクレバーで忠実なバックアッププレーってな具合。局面では、玄人好みの実効プレーをつづけていましたよ。私は満足だったけれど、まあ一般メディア向きの活躍コンテンツじゃありませんでしたネ。




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