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ヨーロッパの日本人・・フィオレンチーナの好調サッカーをリードしはじめた中田英寿・・高原直泰は、勝負プレーに対するイメージ描写を鋭く、広くしなければ・・(2004年11月8日、月曜日)

フィオレンチーナの調子がどんどん上向き加減です。それも、中田英寿のリーダーシップがポジティブに発揮されていることも大きく貢献しているようで、本当に喜ばしい限りじゃありませんか。

 やはり中田英寿は復活してくれた。HPで中田が、「なんだかんだいっても、オレの生活は結局、サッカーの出来に大きく左右されるんだな、と最近つくづく思う・・」なんてことを書いていたけれど、やはり彼もサッカーが大好きだし、それが秘める社会的価値についても理解しているということなんでしょう。不確実ファクターてんこ盛りということで、最終的には自由にプレーせざるを得ないインテリジェンスボールゲーム、サッカー。私は、21世紀のイメージリーダーにさえなり得る社会的存在だと思っています。だからこそ中田も、自身のアイデンティティー(誇り)の基盤としても認知している?! とにかくサッカーは、日常生活にとって健康的な価値(エネルギー)を生み出せるのです。

 フィオレンチーナがチームとして機能していることは、守備での有機連鎖シーンを観ていれば一目瞭然。何せ、チェイス&チェックをベースに、次のボール奪取イメージがどんどんと効果的にリンクしつづけるのですからネ。特に、チェイス&チェックの勢いが素晴らしい。もちろん中田英寿も含めてネ。そんなプレーを観ていて、「やっぱりチームのダイナミズムを高揚させるための絶対的なスタートラインは、労を惜しまない汗かきディフェンスだ・・」なんてことを反芻していました。ちょっとハナシが逸れるけれど、そのことは、格段にサッカーの質が向上したヴェルディーにも言えることです。

 まあとにかく、復活した中田英寿をコアに、攻守にわたるダイナミックな積極サッカーという発展ベクトル上に乗りつづけるフィオレンチーナのこれからが楽しみになってきたじゃありませんか。オボド、アリアッティ、ヨルゲンセン、中田英寿、そしてミッコリたちが有機的に絡みつづける仕掛けプロセスも魅力的ですしネ。もちろん総合力では「二番手グループ」だけれど、とにかく発展プロセスにあるチームは、観ていて楽しいし、学習機会にもなります。

 この試合でも中田は、攻守にわたり、実効ある積極シンプルプレーを展開しました。シュートを打つという攻撃の目的と、スペースである程度フリーでボールを持つ選手を演出するという当面の目標を達成するための、あくまでもロジック追求のシンプルプレー。そして、そこにミックスされる、タメやドリブルなどの個のエスプリプレー。なかなか美しくダイナミックなハーモニーを奏でていました。

 ところで日本代表。12月におこなわれるドイツ代表との親善試合では、中田英寿の復帰を願って止みません。スリーバックのフォーメーションを基調に、タッチラインゾーンを攻守にわたって大きくカバーする両サイドバック。中盤の底を担当するコンビに、セカンドストライカータスクとチャンスメイカータスクを交代にこなしつづける(互いに使い使われるというメカニズムを深く理解する)攻撃的ハーフのコンビ。そして、マルチタスクをこなすワントップ。中田が復帰したら、そんな布陣も試して欲しいと思っている湯浅です。

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 さて、ものすごくエキサイティングなハードゲームになったハンブルガーSV対FCシャルケ04。互いに、中盤ディフェンスが「命!」という、ダイナミック&忠実サッカーを繰りひろげました。とにかく攻守が激しく入れ替わるというゲーム展開は、早い、早い。

 両チームともに、今シーズンがはじまってから監督が交代しました。高原のハンブルクは、トップメラーからトーマス・ドルへ。シャルケは、ユップ・ハインケスから、ラルフ・ラングニックへ。ラルフ・ラングニックについては、以前に何度もスポナビで紹介したから、そちらも参照してください。プロ選手の経験はないけれど、とにかく優秀なサッカーコーチです。ハノーファー96と袂を分かったラングニックに白羽の矢を立てたシャルケは良い選択をしました。

 また、若いトーマス・ドルに監督が交代したハンブルクも、攻守にわたるサッカー内容が大きく好転しました。最前線から、攻守にわたって抜群のダイナミズムで全力プレーを繰りひろげる高原も、そのダイナミズムの一端を担っているというわけです。とはいっても、どうも実効レベルが上がってこない。高い位置でのボール奪取にはかなり貢献できているけれど、シュートを打つという攻撃の目的を達成するための貢献度が、どうもうまく上がってこないのです。もちろんそれは「結果」ではなく、プロセス(プレー内容)において・・です。ボールがないところでのフリーランニングは良いし、味方もパスを出すけれど、どうもボール絡みのプレーに迫力が欠ける・・。

 相手ディフェンスが忠実で早いから、前を向いた状態やフリーな状態でパスを受けられない・・どうも、ドリブルやタメといったリスクチャレンジプレーに対する自信レベルが低下しているようで、チャンスを発芽させられるような状況でボールを持っても、まずパスをイメージしていることが周りに分かってしまうようなプレー姿勢・・もっとリスクにチャレンジしなければ、相手にとって怖いプレーはできない・・それがないから、ハンブルク攻撃に変化という危険因子を負荷することに貢献できず、どうも仕掛けの流れのなかに埋没してしまっているという印象の方が強く残る・・。

 前半だけで交代した高原直泰。ちょいと、組織プレーに逃げ込んでいる(組織プレーに偏り過ぎている?!)という傾向が感じられます。もっと「個」を前面に出さなければ、ゲームの流れに埋没しっぱなしということになってしまう・・。もちろん「個を前面に押し出す」ためには、その前段階での準備をもっとしっかりとやらなければなりません。そう、決定的パスを受けるための爆発レシーブアクションや、シンプルパスプレーをキッカケにした、次の爆発パス&ムーブ(高原がコアになったコンビネーション)などなど、良いカタチでボールを持ったためのパスレシーブアクションをもっと工夫しなければならないということです。そのためにも、自分のプレーを記録したビデオを見直すことで、イメージトレーニングを積み重ねることが肝心。「あっ・・あそこじゃ、すぐに次のアクションに移らなければならなかった・・」等々、とにかく工夫するための「アイデア・ソース」をアタマにたたき込むことで、同じような場面に遭遇したときの「次のプレーイメージ描写」のスピードと広がりを目指す・・。頑張れ、高原!

 



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