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ヨーロッパの日本人・・中田英寿・・プレーイメージ(意志)は相変わらず高質だったけれど・・(2004年11月11日、木曜日)

まず、ユーヴェントス対フィオレンチーナから。

 個のチカラだけではなく、組織プレーの発想(戦術的なイメージレベル)でも上回るホームのユーヴェントスがゲームをコントロールするという展開。とはいってもフィオレンチーナ守備ブロックは、ユーヴェに押し込まれているというわけではない。フィオ守備ブロックも、非常にクレバーで集中力のあるディフェンスを魅せつづけるのです。忠実なチェイス&チェックを守備の起点とし、次のボール奪取プレーが有機的に連鎖する。そこでのマークの受けわたし、インターセプト狙いの「ぼかし」ポジショニング、一瞬の「集中」を狙うクレバーなバランスポジショニング等々、見所満点じゃありませんか。

 そんな集中したフィオレンチーナ守備に対し、うまくウラスペースを突いていけないユーヴェ。ちょっとフラストレーションがたまってきたかな・・なんて思っていた前半の26分。ユーヴェが、まさに唐突にチャンスを作り出してしまうのですよ。この唐突さこそ、イタリアサッカーを代表するクラブの一つであるユーヴェントスの真骨頂。確実なパスをつなぎながら一瞬の「爆発勝負」を狙いつづけるというわけです。

 そのシーン。右サイドで、ボールをタテに動かしていたユーヴェ・・最後にボールを持ったカモラネージが、まさに唐突というタイミングで、ラスト・サイドチェンジクロスを送り込む・・その左サイドスペースに入り込んでいたのは、相手マークから「ほんのちょっと」フリーになっていたデル・ピエーロ・・そしてラストサイドチェンジクロスが、ピタリとデル・ピエーロの右足に合う・・サイドキック気味のボレーシュートは、正確にゴールを捉えていた・・最後は、フィオレンチーナGKルパテッリがギリギリのセービングで存在感を発揮した・・ってな具合。

 それ以外にも、試合を全体的にコントロールできているからこその、効果的な「最終ラインでのパス回し」も魅せるユーヴェントス。何が効果的かって? 相手のマインドを、一度ホッ!と落ち着かせることで「一瞬の気抜け状態」を演出してしまうのですよ。そして次の瞬間には、強烈な一発ラストロングパスが最前線へ飛ぶというわけです。この試合でも数回ありました。その最初のシーンで後方から抜け出してシュートまで行ったのはカモラネージ。相手にとって、決して気を抜くことができないチームです。こんなヤツらを相手にしたら、90分も戦った後には、神経がボロボロになっているに違いない。それにしても、あれほどの才能を有したユーヴェ選手たちが、最後の最後まで戦術サッカーに集中しつづける姿を見て、強いはずだ・・なんて再認識していた湯浅でした。

 さて、そんな強いユーヴェントスを相手に先発出場した中田英寿。結局は、シュートを打つという攻撃の目的を達成するために、ボール絡みで目立つシーンを多く演出することは叶いませんでした。

 ただそれは、ボール絡みということで目立つ現象面(結果)のこと。彼の攻守にわたる意志(プレーイメージ)は、相変わらずハイレベルでしたよ。まず何といっても、クリエイティブで忠実な守備意識が素晴らしい。中田の場合、無為な様子見というシーンは本当に少なく、常にボール奪取を狙って連続的に行動に出るのです。チェイス&チェックアクションだけではなく、次のボール奪取勝負アクションも鋭い。実際、何度も高い位置でボールを奪い返したシーンを目撃しました。でもそれが、次の効果的な仕掛けにうまくつながらないのです。

 相手が強いユーヴェということで、チームメイトたちも積極的に上がってこられない。だから仕掛けにかかわってくるチームメイトの人数が足りないということになってしまう。いつも書いているように、中田はマラドーナじゃないから、止まった状態から個の勝負(ドリブルなど)で局面を打開していくというプレーには明らかな限界があるのです。複数の組織コンビネーションアクションが流れつづけているなかでパスを受け、そのまま高速ドリブルで突破して最終勝負の可能性を広げるといった仕掛け状況では素晴らしく実効のあるクリエイティブプレーを披露しますが、孤立した状況でボールを持ち、そこから相手を抜き去ってチャンスを作り出すというプレーには限界があるということです。だから、相手が強いユーヴェということで前線が孤立することの多いこのゲームは難しかった・・。

 私は、ボールがないところでの中田英寿のアクションにも目を凝らしていました。そこでの彼の意志(プレーイメージ)のコンテンツは素晴らしかったですよ。20-30メートルの全力ダッシュからチェイス&チェックアクションに入ることで、周りの味方が次のボール奪取イメージを描写するための起点になる・・ボールを奪い返したら、タテや斜めへの全力フリーランニングをくり返すことで攻撃の起点にもなろうとする・・等々。でも、出されたパスが悪かったり、ミエミエのパスにユーヴェ守備に集中されてボールを奪い返されてしまったり(このシーンでの中田は味方にスペースを作ったつもりだった?!)・・。そして後半15分での、ヨルゲンセンとの交代・・。まあ、仕方ない。

 



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