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ヨーロッパの日本人・・今週も中田英寿だけということになりました・・(2004年1月25日、日曜日)

やっぱり思った通り、中田は(二列目ではなく)もっともチカラを発揮できるホンモノのボランチの機能ポジションに収まったじゃありませんか。二列目でも三列目でも、彼の攻守にわたる積極的な絡みイメージ(実効レベル)は変わらないということです。だから中田には、中盤センターでの、攻守にわたる限りない自由度を与えるのが理想的だ・・。そのことを、もっとも深く理解しているマッツォーネ翁(ボローニャの大ベテラン監督のことですよ)ですからね。もちろんその信頼の絶対的なベースは、中田のスーパーな(実効ある)守備意識というわけです。

 試合がはじまりました。前半は、両チームともに落ち着いたディフェンスから入っていこうというプレー姿勢。ということで互いに攻めあぐむという展開がつづきます。そんな膠着した展開のなかでも、やはり中田の存在感は突出している。とにかく彼が攻めのリズムをリードしているということを明確に感じるのです。素早く、広い活発なボールの動きと個の勝負のバランスをリードしながら危険な最終勝負を仕掛けていく中田英寿。

 そこでは、ドリブル勝負や、タメからのスルーパス、クロス攻撃やコンビネーション等々、効果的な変化を織り交ぜた仕掛けが繰り出されていきます。その中心に君臨するのが中田英寿。そして中田が、ネルヴォへのスルーパスを決めたり(決定的スペースへ通ったけれど、ネルヴォが切り返してしまった・・)、ロカテッリへのスルーバスを通したり(最後は、パルマのフェラーリの必殺アタックに潰されてしまった)、はたまた、左サイドでのキープドリブルから、逆サイドで待ち構えるターレへの見事なラスト・サイドチェンジパスを決めたり(完璧にフリーのターレへのピンポイントクロス・・そこからの折り返しヘディングが、ギリギリのところでネルヴォへ合わなかった)。

 対するパルマの立ち上がりは、どうもプレーの勢いがない。仕掛けの実効レベルで、完全にアウェーのボローニャに凌駕されているのですよ。とはいっても、前半も押し詰まった時間帯では、単発ではありましたが、モルフェオが演出した仕掛けが決まりそうになったりという場面もありましたがね・・。でも全体的には、どうも元気がない。まあ、親会社のスキャンダル(=パルマラートという経済ベースの弱体化?!)や主力の移籍など、選手たちをモティベートする材料に乏しいパルマだから仕方ないか・・。

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 ボローニャの中盤は、最終ラインの直前にポジショニングする守備的ハーフ専業のコルッチ、その前に、右のネルヴォ、中央の中田英寿とロカテッリ、そして左のメグニと並びます。そのなかでは、やはり中田とロカテッリの前後左右のポジションチェンジ(タスク・チェンジ)が活発。まだまだコンビネーション(互いのイメージシンクロレベル)には課題がありますが、両者とも、互いに信頼し合っていることだけは感じます。

 この二人の基本的なプレーイメージですが、やはり、どちらかといったら中田が後ろ気味。要は、中田がセンター・ゲームメイカーということです。その基本タスクをベースに、ここぞの仕掛けシーンで、素早くロカテッリとポジションチェンジして最前線の決定的スペースへ入り込んでいく。ロカテッリは、そんな中田の「消えるプレー」をサポートするように次の守備ポジションに入るというわけです。

 そんなボローニャの攻守にわたる中盤コンビネーションは、後半もうまく機能しつづけます。パルマのホームゲームであるにもかかわらず、ボローニャが、内容的にゲームペースを握りつづけるのですよ。ボローニャは立派なチームゲームを展開していると感じます。そんなことを書いている眼前で、ロカテッリが決定機を迎えたり、中田のフリーキックからボローニャがチャンスを作り出したりする。フムフム・・。

 でも後半20分過ぎからは、やっとホームのパルマがペースアップしてきます。押され気味になるボローニャ。とはいっても、仕掛けのリズムがスムーズにテンポアップさせなれないことで、どうしてもボローニャの守備ブロックを崩しきれないパルマなのですよ。私はその現象を、これまでの「個の才能に頼り過ぎの仕掛けイメージ」にもありそうだと感じていました。アドリアーノ、ムトゥー、そして今シーズンからはモルフェオなど、仕掛けプロセスで個人プレーが前面に押し出される傾向が強かったパルマですから、そんな才能がいなくなったとき(モルフェオも後半20分あたりでベンチに下がった!)、どうもパルマの攻めに、選手たちに共通する仕掛けイメージの幹が通っていないと感じられるのですよ。行き当たりばったりの攻めに終始するパルマっていう感じ・・。

 その後は、両チームともに攻めあぐむ展開がつづきます。そんな倦怠ムードのなか、パルマが、偶発的な決定機を作り出してしまうのです。ボローニャにとっては、まさに絶体絶命のピンチでした。

 タテパスを粘ってマイボールにしたジラルディーノ(パルマのワントップ)から、ここだ!と、逆サイドからタテの決定的スペースへ全力ダッシュしたブレシアーノへのラストパスが決まったのです。誰もが「あっ、パルマの決勝ゴールだ・・」と思った次の瞬間、赤い壁が立ちはだかり、ブレシアーノのシュートをはじき出すのです。一世を風靡した元イタリア代表GK、パリュウカ。それは、それは見事な飛び出しとセービングでした。彼は、ブレシアーノが「ボールを浮かせたシュートを放つ」のを完璧にイメージしたアクションで(要は、身体を寝かせるのではなく、上半身と腕を思い切り前後左右に広げるようなアクションで!)飛び込んでいきました。いや、素晴らしい目の保養をさせてもらいましたよ。あれほど優秀なゴールキーパーがいるのだから、ボローニャの守備ブロックも(心理・精神的に)安定するはずだ・・。

 結局ゲームは、そのまま無得点ドローということになりました。まあ、妥当な結果。

 ボローニャでは、中田の「仕掛けパートナー」であるシニョーリの復帰が待たれます。やはり、仕掛けプロセスでのシニョーリの存在感は欠かせない。とにかく、前節で中田とシニョーリが魅せつづけた素晴らしいコンビネーション(素早く広いボールの動きの演出!)には酔わせられましたからネ。たしかにロカテッリもいいですが、やはりシニョーリの比ではない。あっと・・ボローニャには、もう一人「攻撃の才能」がいたはずです。そう、8番のダッラ・ボーナ。イタリアサッカーに詳しい知人が、「彼はいいですよ・・ホンモノの攻撃の才能です・・中田と彼のコンビネーションが楽しみ・・」と言っていました。とにかくこれからのボローニャ中田が楽しみです。

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 さて、湯浅は、明後日から一週間ほど、海外での「ブレイク」を取ります(来月のフレンドリーマッチ四連戦の直前に帰国)。

 その出発前・・たぶん明日にはレアル・マドリーをテーマにしたコラムを一本アップする予定です。またその後の水曜日か木曜日には(行く先の国でのインターネット事情にもよりますが・・)、「The 対談」の二段目を現地からアップする予定。今回のテーマは高校(学校)サッカー。対談はすでに完了しています。そのテーマにした背景モティベーションは、もちろん今回の高校サッカーです。ご期待アレ。




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