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チャンピオンズリーグ予選最終日・・重厚なディフェンスブロックを基盤にした蜂の一刺し・・まさにブレーメンのツボにはまったゲームでした・・(バレンシア対ブレーメン、0-2)・・(2004年12月8日、水曜日)

素晴らしくクリエイティブな緊張感におおわれた、一点を争うエキサイティングゲームになりました。チャンピオンズリーグ予選G組の最終日。バレンシア対ブレーメン。このグループでは、既にインテルが決勝トーナメント進出を決めていますから、この勝負マッチは、残りの一枠をめぐる骨肉の争いというわけです。

 ブレーメンで行われた第一戦は「2-1」でブレーメンが勝利をおさめましたから(アウェーゴールは二倍に換算)、まず大前提としてバレンシアが勝つこと、そして勝ち方が「1-0」か「2点差以上」で決勝トーナメント進出ということになります。表面的には「静」だけれど、内なるテンションが最高潮に達しているのが画面を通じてビンビン伝わってきます。観ている方が最後まで手に汗握りつづけるのも道理・・。

 それにしてもブレーメンは、バレンシアの仕掛けリズムを、組み立て段階から効果的に抑制してしまうようなクレバーなサッカーを魅せました。それこそ、ブレーメンのツボと呼ぶにふさわしいゲーム展開。

 決してブレーメンは、最終ラインを引き「過ぎ」たり、受け身に守るようなプレー姿勢ではありません。最後の最後まで全体的なポジショニングバランスを崩すことなく、常に前での勝負を仕掛けつづけたのです。受け身ではなく、あくまでも積極的にラインをコントロールする攻撃的なディフェンス姿勢。最後の時間帯では、何度も、抜け出そうとするディ・ヴァイオをオフサイドに陥れたりもします。そんな忠実&ダイナミックな守備ブロックをベースに、チャンスを見計らったカウンター気味の「蜂の一刺し」見舞うという、チーム全体に深く浸透した勝負イメージ(パサーとレシーバーの瞬間的なイメージシンクロ!)。それが、ゲーム終盤のバルテスの2ゴールとなって実を結んだというわけです。

 バレンシアは、そんなブレーメンの術中にはまってしまった・・。確実なマークの受けわたしから早めにマンマークへ移行するというブレーメンの忠実マーキングは定評のあるところですが、その術中はまったバレンシアの才能たちは、いくら走ってもフリーになれないということで徐々に足が止まり気味になっていったのです。

 パス&ムーブという仕掛けアクションを積み重ねながらしっかりと人とボールを動かしつづけなければ、堅牢なブレーメンの守備ブロックが描く「ディフェンスイメージを超える」ことなど出来るはずがありません。たしかに二度ほど、アイマールがコアになった「ワン・ツー・スリー」というコンビネーションから、最後はミスタがシュートまでいくというチャンスは作り出したけれど、どうしても単発という印象は拭えない・・。全体的には、アウェーを戦うブレーメンの方がチャンス内容でも上回っていました。

 何とかコンビネーションでブレーメン守備を切り崩していこうとするバレンシア。でも結局、監督のラニエリは、もっとシンプルな仕掛けイメージに切り替えるという決断をします。アイマールとディ・ヴァイオを交代させたのです(同時に、シスコをヴィセンテに交代)。その采配は、内容からすれば正解だったと思います。たしかにゲームには負けちゃったけれど、カウンター気味の素早い仕掛けイメージの徹底と、ディ・ヴァイオが忠実にくり返す決定的な「抜け出しフリーランニング」によって、バレンシアのチャンスの芽は確実に広がりましたからネ。

 一度などは、完璧なカウンター攻撃から抜け出したディ・ヴァイオのシュートが、ブレーメンゴールのバーを叩くというシーンもあったし、それ以外にも、ディ・ヴァイオの抜け出しとスルーパスがピタリとシンクロしそうになったシーンもありました(前述したようにギリギリでオフサイドになってしまったけれど・・)。

 とにかく、ラニエリが繰り出した「仕掛けイメージの変更」という采配は、興味深いことこの上ありませんでした。

 最後に、新生クリンズマン・ドイツ代表でも存在感を高めているミロスラフ・クローゼについて。たしかにボール絡みプレーは上手くないけれど、決定的抜け出しフリーランニングとか、ヘディング勝負スポットへの飛び込みとか、勝負所に対する「ボールなしプレー感覚」には、ものすごく鋭いモノがあります。カイザースラウテルンから、シャルケへ移籍したアイウトンの後釜として移籍してきたクローゼ。大正解でした。何せブレーメンには、クローゼの「ボールなしの勝負の動き」を活かし切ることができる「勝負イメージ」が浸透していますからネ。

 後半11分のコーナーキックシーン。そこでクローゼが、ニアポストスペースへ飛び出し、まったくフリーで決定的なヘディングシュートを放ったのですが(スリップヘッドでシュートミス!)、そのシーンを見ていて、やはりセットプレーでは、狙ったスポットに対し、キッカーもレシーバーも「意識を集中する」というのが基本だと再認識した次第。決定的ボールを「呼び込む」人の動きが主体というのもあるけれど、やはり「勝負スポット」に対して、全員の意識を「集中」させるという方向性の方が可能性が大きいということです。まあ、もちろんケースバイケースだけれど・・。難しいね・・。やっぱりサッカーでの絶対的なキーワードは「バランス感覚」なんですよ・・。

 また、このシーンでのクローゼの動きを観て、すぐに、2004サントリーチャンピオンシップ第一戦での、マリノス河合のヘディングシュートシーンが思い浮かびましたよ。最初から勝負スポットを意識して爆発スタートした河合。だから、マークしていた長谷部も追いつけなかった(長谷部は、二度も味方選手とクラッシュしそうになった!!)。このシーンで、マリノス選手全員の意識が集中していたニアポスト・スポット(マリノス選手全員が明確にイメージしていた勝負スポット)へ抜け出すべき選手は、中澤だったのですが、彼がアルパイに完璧にマークされていたことで、中澤自身が、河合に対して、目で「オマエが行け!」と合図を送ったということです。フムフム・・。

 2004サントリーチャンピオンシップ第二戦については、サッカー専門紙「エル・ゴラッソ」でも西部さんと対談しました(今日か、金曜日版?)し、時間をみて、もう少し書くかもしれません。あっと・・これはチャンピオンズリーグのレポートだった・・。

 さて今日は、勝負の「グループB」の最終節があります。カードは「レーバークーゼン対ディナモ」「ローマ対レアル」。ローマを除いた3チームが決勝トーナメントへの可能性を残しているという血わき肉おどる状況。ポイント状況については情報サイトをご覧アレ。では・・

 



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