トピックス


2004ヨーロッパ選手権(9)・・地元のポルトガルが決勝トーナメントに進出できて本当によかった・・(スペイン対ポルトガル、0-1)(ロシア対ギリシャ、2-1)・・(2004年6月20日、日曜日)

さて勝負の「リーグ最終日」がやってきました。まずAグループ。皆さんご存じのように、トップをいくギリシャ(勝ち点4)、二位のスペイン(勝ち点4)、そして三位のポルトガル(勝ち点3)が決勝トーナメントのイスを争うという、かなり緊迫し錯綜した状況です。上位二チームは負けるわけにはいかないという状況。それに対して三位のポルトガルは勝つしかない・・。

 最終日の対戦ペアは、スペイン対ポルトガル、ロシア対ギリシャ。まあ、ポルトガルとの「直接対決」に臨むスペインと、別会場でロシアと対戦するギリシャの両チームは、引き分けでもオーケーなのですが、そんな守りの心理状態でゲームに入ったら、それこそ自殺行為ですからね。だから面白い。

 エキサイティングな勝負マッチになること請け合いのA組最終日というわけです。そして、ゲームがはじまってすぐに、ロシア対ギリシャ戦で、ロシアが先制ゴールを入れたという知らせが入り、画面が「あちらの試合」に切り替わります。また同時に、「その時点で」どのチームが準々決勝に進出するのかも表示される・・。ということで私は、「こちら」のスペイン対ポルトガル戦をメインに観ているというわけです。

 「こちらの試合」ですが、全体的にはポルトガルがペースを握っているという立ち上がりの展開です。どうも、引き分けでもオーケーという意識が、まず守備をしっかりと落ち着かせようというスペイン選手たちのプレー姿勢を引っ張っているという印象です。とはいっても徐々にスペインも、攻撃に人数をかけるようになってくる・・さてこれからだな・・なんて思っていた前半17分のこと、画面の奥の方から「ロシアが二点目を入れた!!」なんていう叫びが聞こえてきたのですよ。要は、ロシア対ギリシャ戦を実況しているコメンテーターの声が(こちらではアナウンサーがコメンテーターも兼ねるのが普通)、スペイン対ポルトガル戦に「重なって」流されたというわけです。そしてすぐに、別会場のゲームに画面が切り替わる・・。そこに、コーナーキックからヘディングシュートを決めるロシアチームが映し出されていたというわけです。フムフム・・。これでギリシャは厳しい状況に陥ってしまった・・スペイン対ポルトガルが引き分けたら、得失点差でポルトガルに抑えられて三位に落ちてしまう・・。

 スペインやポルトガルの選手たちは、別会場のゲーム展開を知らされているのだろうか・・。ガップリ四つという展開になっていくゲームを観ながら、そんな興味がアタマをもたげてきたものです。両チームが演出する最終勝負のコンテンツからすれば、どちらにゴールが入ってもおかしくないというエキサイティングな流れ。とはいっても、まあ、勝つしかないポルトガルの方が、クリスティアーノ・ロナウドの高質なドリブル勝負に代表されるように、仕掛けの勢いで、スペインよりも少しは上かもしれませんけれどね・・。

 そんな若武者にくらべて、どうもフィーゴが冴えない。たしかにボールにはたくさん触ってはいるのですが、決定的な仕事につながらないのですよ。以前だったら、仕掛けに入れば、高い確率でクロスやシュートなどの決定的シーンを演出したものでしたが・・。

 そして、「こちらのゲーム」の前半終了のホイッスルが吹かれたのと同時に、「あちらのゲーム」から「ゴ〜〜ル!」という雄叫びが聞こえてくる・・。ロシアに2点先行されていたギリシャが、「2-1」となる追いかけゴールを決めたのですよ。これで状況は、ますます錯綜してきた。さて後半は・・

------------------

 様々な観戦コンテンツをアタマのなかで整理していた後半11分、それまでまったく目立っていなかったヌーノ・ゴメスにスポットライトが当たります。フィーゴからのタテパスを受けたヌーノが、パス&ムーブで上がってくるフィーゴへリターンパスを返すという振りから右サイドへボールを押し出し、振り向きざまに「エイヤッ!」というシュートを放ったのです。そしてボールは、スペインゴール左隅に吸いこまれていく。スペインGKカシージャスも含む相手守備ブロックの虚を突くタイミングの先制ゴールでした。

 その後は、もちろんスペインが押し上げていく・・後半16分には、ビセンテ(?!)のタテパスから、素晴らしいタイミングで決定的スペースへフリーで抜け出したフェルナンド・トーレスがダイレクトシュートを放つ・・ドカン!とポルトガルゴール左ポストを直撃するボール・・そしてこちらは「フ〜〜ッ」とため息を吐く・・。

 この決定的シュートシーンは、フェルナンド・トーレスが繰り出した「パスを呼び込むフリーランニング」によって演出されました。エネルギーを放散するような決定的動きが、ビセンテ(?!)にパスを出させたというわけです。やはり最終勝負のコンビネーションは、パスレシーバーのアクションが主導した方がうまく機能するということです。勝負はボールのないところで決まる・・ということです。

 その後も何本かスペインがチャンスを作り出したのですが、それを観ながら、誰もが「さてスペインが来たな・・」と感じていたはずです。もちろん私も、このグループではもっとも高い実力を誇るスペインだから、少なくとも同点にはするだろう・・なんて半ば確信していたものです。でも結局は・・。

 そこでは、ポルトガル監督ルイス・フェリペ・スコラーリの采配が効いたと思っている湯浅です。まずフィーゴを交代させることで中盤守備を活性化し、次にフェルナンド・コートをグラウンドへ送り出してスリーバックにすることで守備ブロック全体を堅くまとめた・・。

 先制ゴールの後ちょっと受け身になっていた守備ブロックが、フィーゴに代わった選手によって活性化した中盤守備と、フェルナンド・コートが加入したスリーバックによってより強固にまとまったということです。もちろん守備が活性化しはじめたことで、ポルトガルの次の攻撃にも勢いが乗るようになった。スコラーリが演出した「効果的な刺激」?! まあ、そういうことでしょう。

 スペインの攻撃を効果的に抑え込み、逆に組織と個がハイレベルにバランスしたサッカーで何本も決定的チャンスを作り出した最後の15分間のサッカー内容で、ポルトガルに対する評価は大きく高まったに違いありません。もちろんそれは、ポルトガル選手たちの自信レベルも深化させたことでしょう。終わりよければ全て良し・・ってなところでした。

-----------------

 後半は、他会場からの「雄叫び」はありませんでした。ロシア対ギリシャが、前半のスコアのまま「2-1」で終了したのです。その結果、地元のポルトガルがAグループトップに輝き、二位は、粘りのギリシャが占めることになりました。

 内容的に非常に質の高いサッカーを展開していたスペインが帰国しなければならなくなったのは残念で仕方ありませんが、ホストカントリーのポルトガルが決勝トーナメントに駒を進められて本当によかった、よかった・・。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]