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2004ヨーロッパ選手権(3)・・例によってステディーなデンマークと、自らが主体で仕掛けていかなければならなくなったときの課題をクリアできていないイタリア・・といった構図・・(イタリアvsデンマーク、0-0)・・(2004年6月14日、月曜日)

さて、どのようにコメントしたものか・・。もちろん、イタリアの出来が悪いのは疑いようのない事実だけれど、その背景には、デンマークの攻守にわたって忠実でダイナミックな(また運動量豊富な)積極プレーもあったわけだし・・。

 まあ全体的には、イタリアが自分たちのツボ攻撃を仕掛けていけなかったというコメントに落ち着くでしょうかね。自らが主体になって攻撃を仕掛けていかなければならないという状況でのイタリアには、落胆させられることが多いのですよ。逆に、相手に攻め込まれている状況では、まさに「イタリアのツボ」と呼べるような蜂の一刺し攻撃が冴えわたる・・。その典型的なカタチは、ボールを奪い返した次の瞬間に、相手守備ブロックのウラスペースを突いてしまうような決定的ロングパスが飛び、そこにイタリアの最前線選手が確実に走り抜けている・・なんていうことですかね。

 でも、組み立てをベースに仕掛けていかなければならない状況では、どうしても彼らのサッカーが停滞気味になってしまう・・。「個の勝負の可能性を広げる」ために人とボールをうまく動かすという組織的な組み立てイメージがしっかりと浸透していないということなのでしょうね。だから、トッティーやデル・ピエーロ(後半はカッサーノ)、はたまたヴィエリといった才能たちの個人勝負プレーに頼ることになってしまい、そのことで組織プレーが、イメージ的な悪魔のサイクルの深みにはまってしまう・・またデンマークの守備ブロックも次の勝負イメージをより明確に描ける・・。彼らの組み立てプロセスを見ていたら、それをしっかりとトレーニングしているとは、とても思えないですよね。まあたしかに後半は少しは好転したけれど、そこで展開されたサッカーにしても、組織プレーと個人勝負プレーがうまく噛み合ったなんてとても表現できません。とにかく、このパフォーマンスでは、イタリアが頂点を極めるのは難しいでしょう。

 そんなイタリアに対して、素晴らしく実効レベルの高いサッカーを展開したデンマーク。決勝ゴールを挙げるチャンスの数と質では、確実にイタリアを凌駕していました。一つのチームとしての結束の高さを感じる・・。

 ソリッドなチームワークを基盤に、クレバーに計画されたゲーム戦術を、一人の例外もなく忠実に実行するデンマーク選手たち。例えば、イタリアのツボ攻撃に対する意識の高さも特筆モノでした。自分たちの攻撃でイタリアにボールを奪われそうになったときに最終ライン選手たちが見せる「イタリアのツボに対する構え」。彼らは、蜂の一刺しロングラストパスをイメージした守備プレーを(確実なポジショニングやマーキングプレーを)忠実に展開していたのです。それ以外の場面でも、ボールホルダーに対するチェイス&チェックなどの守備の起点プレーと、インターセプト狙いに代表される周りの選手たちの予測勝負プレーが、うまく有機的に連鎖しつづけていました。

 そしてイタリアからボールを奪い返したら、とにかくシンプルに人とボールを動かしながら、手間をかけずに相手ゴールへ迫っていく・・。もちろん個々のテクニックはしっかりしているから、そんな、チーム全体に深く浸透した仕掛けイメージが、最後の瞬間まで「有機的に連鎖」しつづけるというわけです。

 またデンマークの選手たちは、組織パスプレーを基調にしてはいるものの、その中でも、いたるところに「個人のエスプリプレー」をうまくミックスさせていると感じます。例えば、中盤でボールをもった選手が、前線の味方が抑えられていることで、ちょっと横方向へドリブルして「タメ」を演出するとか・・。もちろんそれは、イタリア選手たちを「そこ」へ集中させ、そのことで空いた中盤スペースを味方に使わせるためにネ。とにかく、そんな状況では、見事にボールが動きます・・そして何人ものイタリア中盤選手たちを置き去りにしてしまう・・。

 とにかく、積極的&忠実&ダイナミックな守備を絶対的な基盤にした、ボールホルダーの「シンプルプレーイメージ」と、ボールがないところでの積極的なアクションがうまく噛み合ったデンマークの攻撃は、素晴らしい実効レベルを魅せていたということが言いたかった湯浅なのです。

 そんなシンプル&ダイナミックなデンマークのサッカーを観ながら、「しっかりとボールを止め、しっかりと蹴ることさえできれば、また、チーム戦術的なプレーイメージを選手全員がしっかりとトレースしていれば、必ず力強いサッカーは展開できる・・まあ、そこにドイツの勝負強さのルーツがあるわけだけれど・・」なんてことを考えていましたよ。それにしても、うまくアタマが回転しない。普通だったら、一つのテーマに集中したら、それに絡んでくる多くのファクターが見えてくるのに・・。まあ、もう少ししたら落ち着いてくるでしょう。

 とにかくこの試合では、またまたデンマークが、例によってのステディーなチームを送り込んできたな・・という印象が強く残った次第。まあ、一昔前の「デーニッシュ・ダイナマイト」からはほど遠いですけれどネ・・。それに対してイタリアは課題が山積みです。でも逆に、次の彼らのゲームが、様々な視点で楽しみになってきたことも事実。その課題を、トーナメントが進んでいくなかでどのようにポジティブに転化させていくのか・・とかネ。




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