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チャンピオンズリーグ開幕・・バルセロナが展開した高質バランス・スーパーサッカーに創作意欲を刺激されてしまった・・(セルチック対バルセロナ、1-3)・・(2004年9月17日、金曜日)

「湯浅さん、バルセロナを観ましたか? 今回来日したクラブのなかでは、真剣度がまったく違います。それは、それは素晴らしいサッカーを展開していますよ・・」。あるメディアの方に、そんなことを言われました。バルサが来日して何試合かフレンドリーマッチをこなしていたときのことです。

 こちらは、「例によって観光気分の金儲けだろ・・冗談じゃない、そんな試合に貴重な時間を割いていられるか・・」と、まったく興味が湧かなかった次第。でも後で聞いたところ、たしかに来日した他のヨーロッパクラブのほとんどは「観光」だったけれど、バルサだけは違っていたと聞かされたのですよ。そのメディアの方は信頼に足る「目」を持っているから、ちょっと残念に思ったことを覚えています。

 だから、スペインリーグでの彼らにも注目していました。そして内容と結果がバランスした二連勝。オランダのライカールト監督は、「オランダ」を外し、才能と組織プレーマインドがバランスした選手たちを補強しました。ジュリ・・デコ・・エトー・・等々。そして彼らが、攻守にわたって存分に才能を輝かせつづけられるようなチーム戦術イメージを植え付けました。個人プレーと組織プレー、美しさと勝負強さがハイレベルにバランスした高質サッカー。グラスゴーに乗り込んだ今回のチャンピオンズリーグ開幕戦でも、彼らの見事なサッカーに目を奪われてしまいましたよ。今シーズンの彼らは、「完璧なストーリー」を展開してくれそうだ・・。

 セルチックとのゲームですが、とにかくアウェーなのに、最初から内容で圧倒しちゃうんだからたまらない。最終ラインを統率するプジョルは、とにかくどんどん最終ラインを押し上げさせる・・そんな積極的な意図をしっかりとイメージする(中盤がコンパクトになることを確信している!)中盤選手たちが、それこそ美しい「有機的プレー連鎖の集合体」と呼べるような実効あるディフェンスを展開する・・中盤と最前線プレーヤーたちの守備意識は、まさにレベルを超えている・・それこそライカールト監督の「ウデ」・・ライカールトは、互いの守備意識に対する相互信頼を植え付けたのだ・・それがあるからこそ、例えば右サイドでは、デコとジュリだけではなく、右サイドバックのベレッティーまでが絡んで積極的なポジションチェンジをくり返す・・また逆の左サイドでは、シャビとエトーとファン・ブロンクホルスト・・まさにタテのポジションチェンジのオンパレード・・そしてヤツらは、そのポジションチェンジを「縦横無尽」というレベルまで引き上げる・・湯浅は、基本ポジションなしのサッカーが理想だと様々なメディアで書きつづけているのだけれど、バルセロナのサッカーは、まさに「そのベクトル上」にあることを体感させてくれる・・素晴らしい・・

 でも、守備的ハーフの14番ジェラールだけは「前気味のリベロ」として、中盤スペースの穴埋め作業(フリーになった相手や後方から走り上がる相手を柔軟にチェック!)だけではなく、たまには最終ラインに入ったり、それを「追い越して」決定的スペースをカバーしたりする・・ひょうひょうとしたスーパー汗かきプレイヤー、ジェラール・・彼がいるからこそ周りの才能も存分に活きる・・

 もう一人「限定された張り付き作業」をしているプレイヤーが最前線にいる・・言わずと知れたロナウジーニョ・・見方によっては「邪魔でしかない最前線のフタ」とも言えるけれど、一度ボールを持ったら最高の「実効リスクチャレンジプレー」を披露するから、まあ誰かサンとは大違い・・これなら、守備をしなくても、オレの足許にパスを出せと動かなくても許せるか・・一番大事なことは、レアルのロナウドと同様に、このチームでも、周りの「天才組織プレイヤー」たちが、そんなロナウジーニョのプレーイメージをしっかりと理解し、ヤツの天賦の才を「うまく活用してやろう」とプレーしていること・・だから組み立て段階では、あまりヤツにパスを付けることはない・・ただし、仕掛けの流れになったら積極的にロナウジーニョにパスを出す(ヤツの才能を活用しようとする)・・もちろんロナウジーニョがボールを持ったら、周りの複数の選手たちが最終勝負のフリーランニングをしかけ続けるという次第・・そんな「微妙なプレーイメージ」にも、ライカールト監督のウデを明確に感じる・・天才がチームに入ってきたら、それは監督にとっての大いなるチャレンジである・・それは普遍的なコンセプト・・ライカールト監督は、ヨーロッパサッカーシーンにおいて、着実に「ビッグ・フィギュアー」への階段を上っている・・

 仕事へ行く前のリラックスタイムだったけれど、(ビデオに録っておいた)バルセロナの高質バランス・スーパーサッカーに創作意欲を刺激され、一気にレポートを書いてしまった。彼らの「ストーリー」にはそれだけのパワーがあるということか・・。

 



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