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2004サントリーチャンピオンシップ第一戦・・フォックス(したたかな勝負師)岡田武史の面目躍如・・また、第二戦に臨むレッズの課題は?・・(マリノス対レッズ、1-0)(2004年12月5日、日曜日)

「それは、この試合に臨む我々の姿勢の表明とでもいうのかな・・レッズに対して初めから守りに入るのではなく、逆に積極的に前へ出ていくことでチームのマインドを活性化する・・それが大事だと思った・・」。試合後の監督会見で、岡田武史が、そんな意味のことを言っていました。

 リーグ最終のヴェルディー戦、そしてこの試合でも、マリノスは、大方の予想のウラを突くように立ち上がりからガンガン前へ攻め上がりました。もちろんそれは、高い位置からディフェンス勝負を仕掛けていったとも表現できるけれど、とにかくボールを奪い返した後の仕掛け姿勢は、奇異に感じられるほど積極的だったのです。

 2000年ヨーロッパ選手権の決勝で、イタリアが、立ち上がり15分の間フランスをガンガン押し込んで(イタリアがガンガン攻め上がって)いきました。たしかにそれは相手にとって予想外の出来事(世界中が、最初からフランスが攻め上がりイタリアが守ってカウンターを狙うという展開を予想していた!)。それ以降、押し込まれたことで前へのエネルギーを殺がれた(攻めにおける組織的なイメージ連鎖を断ち切られた)フランスが自分たちのペースを取り戻すまでに長い時間がかかったモノでした。それこそがイタリアの狡猾なゲームプラン(意図)だった・・。

 岡田武史はフォックス(したたかな勝負師)だからネ、イタリアと同じようにレッズのゲームイメージを攪乱してプレー(仕掛けの)ペースを乱してしまおうという意図もあったに違いないと思っていた湯浅だったのですよ。とはいってもネ・・まあ、最初から注意深くプレーするのでは(要は、慎重に守備を固めてゲームに入っていくのでは)、チームのマインドが落ち込んでしまう危険性の方が大きくなってしまうかもしれないということが、そんなゲームの入り方のバックボーンにあったということでしょう。

 フォックス岡田は、こんなことも言っていました。「このチームは、後ろ向きになったら崩れていく・・」。ナルホドね、立ち上がりの「攻勢」は、自分たちの確信レベルを高揚させるためのモノだったということか。まさにセルフモティベーションの活性化・・。

 私は、マリノスのサッカーコンテンツを観ながら、「オレは考え違いをしていた・・」と反省しきりでしたよ。岡田武史は、決してガチガチの戦術サッカーを意図していたわけじゃなかった・・いや逆に、選手たちを自己主張方向へ解放した(攻守にわたる主体的な積極プレーを要求した)・・そのための意識の高揚をメインテーマとして良い仕事をしていたということだ(優れた心理マネージメント!)・・だからこそ選手たちのなかから「マリノスでは、誰が出ても同じレベルのサッカーができる・・」という高い意識ベースの発言も出てくるというワケか・・。

 この試合でのマリノス守備は、ギリギリの主体性など、まさに完璧でした。まさにそれは、戦術的プランではなく、主体的な守備意識のみが為せるワザだったのです。尋常ではない勢いが乗った戻りアクション・・その素早さと、戻りの「質」はハイレベルそのもの・・そこでは、前の選手が戻りながらチェイス&チェックに入るというシーンがてんこ盛り・・局面での「1対1」に強いだけではなく、勝負所での集中カバーリング(数的優位シーンの演出)も素晴らしい・・(ボールなしでは)決してウラに走り込まれることがない・・ポール絡みでも決して安易にアタックを仕掛けずに、味方の集中を待てる・・またレッズの仕掛けの流れを断ち切らなければならない状況ではファールでも止める・・等々。いや素晴らしい。

 とにかく、フォックス岡田の優れた仕事に対し、心からの称賛を込めた拍手を惜しまない湯浅でした。

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 対するレッズのサッカーですが、決して悪くはありませんでしたよ。前の三人(エメルソン、田中、永井)が明確な「最前線のフタ」になってしまうようなこともなかったし、よく動きまわってボールにさわり、後方からの押し上げをベースにした組織パスプレーも出ていました。でもいかんせん、前述した「あの」マリノス守備ですからネ。そう簡単にチャンスを作り出せないのも道理です。

 この試合では、右サイドに入った山田は、ドゥトラの仕掛けを、ほぼ完璧に抑え込んでいました。それもあってマリノスは、チャンスらしいチャンスを作り出せなかった。マリノスの決勝ゴールが入るまで、こんなことを思っていました。『お互い、カッチリと強固な守備ブロックをベースにイーブンに攻め合うなど全体的なゲームの流れでは互角だけれど、やはり実質的なチャンスの量と質という視点では、個のチカラで優るレッズに軍配が上がる・・マリノスでは、久保やアン・ジョンファン、ユー・サンチョルの穴を感じる・・』。

 チーム戦術的な(攻守わたる組織プレーの)レベルが拮抗しているケースでは、特別な「個の才能」によって勝負が決まってくる・・。それは、現代サッカーのセオリー。その視点でレッズに一日以上の長はあったけれど、最後はマリノスに粘り勝たれてしまった。まあこの試合に限っては、見事な粘勝だったとマリノスに敬意を表するのが妥当な線でしょう。

 ということで第二戦。そこでもマリノスは、(自分たちの前向きサッカーに対する確信レベルの高揚という意味も含めた?!)攪乱戦法に出てくるに違いありません。まず「それ」をしっかりと受け止め、決して自分たちのサッカーペースを乱さないことが最初のテーマになります。そして次に大事になってくるのが、個の才能をいかに効果的に活かし切るのかというテーマ。第二戦では、このテーマが全てに優先されるべきです。

 第一戦では、全体的には抑えられ気味だったとはいえ、「あの」マリノス守備ブロックを相手に、流れのなかから何度か決定機を作り出しました。ということで、第二戦の全体的なゲームの流れも我慢比べだろうから、この試合のようにスリートップ(ワントップ&ツーシャドー!)で臨み、粘りながらワンチャンスをモノにするという発想も正攻法だろうけれど、そこでは、レッズが有する個の才能をより効果的に活かし切るための発想を広げていくという積極的なチャレンジも必要だと思います。例えば、相手が意識を集中させる「個の才能」を、オトリとして逆用するとかネ。もちろん「やり過ぎ」は混乱を招くだけだから、ギド・ブッフヴァルトのバランス感覚が重要な意味をもってくるけれど・・。

 攻撃のもっとも大事なコンセプトは、何といっても「変化」。第一戦のように、個の才能たちが正面から勝負していくだけではなく、味方の押し上げをイメージした「オトリ」になって決定的パサーとして機能したり、もっと早いタイミングで、ニアサイドスペースを意図したシンプルな「クロス」を入れたり、はたまた、トップ選手からの「置くようなバックパス」から中距離シュートを打ったりする。要は、優れた個の才能を有しているからこそ、変化を演出するオプションも広くすることができるということです。何せ、エメルソンにしても永井にしても、しっかりと前線でキープできるのだから、相手を抜き去らなくても、ちょっと外してクロスを上げたり中距離シュートを放ったりできるハズ。もちろん、何度も書くけれど、「仕掛けイメージの広げ過ぎ」は逆効果になってしまうけれどネ・・。

 とにかくレッズは、この「攻撃の変化の演出」だけではなく、最後は、トゥーリオ、ネネ、アルパイを最前線へ上げ、エメルソンと山田たちが、どんどんとクロスを放り込んで直接シュートやこぼれ球を狙ったりするエマージェンシーオプションまでも視野に入れて第二戦に臨まなければなりません。

 このようなハイレベル&ダイナミックなサッカーをもう一ゲーム観られる・・。とにかくお互い、とことんサッカーを楽しむしかありません。

 



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